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封印少女、持ち帰ります。  作者: ぱふぇ
二章-そうだ王都、行こう。
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7話:憧れ

いつもより少ない……

「何か御用でしょうか?」



整った顔に無表情を貼り付けたようなメイド。


先程までは前を歩いていたはずなのに、どうやってかワタルたちの背後に回り込んでいた。


変なことなど何一つなかったかのように、当たり前のように立っている。


ワタルたちの間に、緊張が走った。



「あれ、さっきまで前にいませんでした?」

「はい。ですが、背後から近づいてくる気配を感じましたので」



どうやら、最初の角を曲がったところから気づかれていたらしい。


王城の中でもワタルたち転移者の存在は有名だ。


メイドたちもワタルたちが転移者であることは知っているし、王都のこれからに重要な者たちだということも聞いている。だから、一応背後に回り込むだけに留めておいた。


これが転移者以外の者だったら……脅迫紛いのことくらいはされていたであろう。


今回出番のなかったメイドの腰にしまってあるナイフが、物足りなさそうにギラリと輝いた。



「それはそうと、貴方様方はどうしてこちらに?」



メイドが、ワタルたちが自分にこっそりついてきた理由を訊く。


ここで嘘をつく必要もないので、ワタルは正直に答える。きっと、嘘をついても直ぐに見破られているだろうから。


要らない事はしないほうがいいのだ。



「あー、ついて行った理由なんですがね──」



自分たちが何をしているかを、言葉を必死に選びながら説明するのに、結局要らない労力を使ってしまったワタルであった。






「──なるほど。確かに、自分の知らない場所となれば、探検したくなるのはよく分かりますよ。良ければこちらにおいでなさいますか?」



主にワタルと暴龍天凱の奮闘により、結果はこの通り。


何とかメイドの後について行く許可を得ることができた。



「ありがとうございます!では、ご一緒させていただきます」



もちろんついて行く。そのために事情説明をしたのだから。


ワタルが即答すると、メイドはクスリと笑って再び進み出した。


「もっとフランクに話してもいいですのに」と言われるが、目上の人に対する礼儀だと答える。


すると、メイドよりも転移者の方が上だと返された。



「どんな口調でもいいので、あなた様方の話しやすいように話して下さいね」

「あはは……ありがとうございます」



返す言葉が出てこず、うんうんと唸っていると、声がかかる。


優しい表情でそう告げたメイドを、エリアスはじっと見ていた。


サツキが気が付いた。どうしてそんなに見ているのかをエリアスに小声で聞いている。



「どしたの、ご主人」

「……かっこいいなぁ、と思って」



エリアスは長く封印されていて、他人との交流がずっと絶たれていた故、コミニュケーションが苦手だ。


本当に信用できる人のみしか信用しないので、長い時間をかけて警戒を解いていくという段階を置かなければ、ほぼ話せないほどだ。


ただし、ワタルの友人にあたる人たちは、ある程度大丈夫らしい。オドオドとだが、しっかり話せているのがその証拠。


そんな具合で、以前はどうだったか分からないが、エリアスはかなりのコミュ障になってしまった。


なのでエリアスからすると、凛とし、強く、それでいて優しさも兼ね備えた完璧とも言えるメイドの姿は、憧れの感情を抱くくらいには輝いて見えた。



「ご主人も、いつかはああなれるよ」

「ほんと?……ありがとう」



サツキはエリアスの考えを察すると、優しく微笑んで言葉をかける。


メイドにあってエリアスには無いものが沢山あるなら、それはエリアスがまだまだ成長できる証拠でもある。


エリアスにはこれからも、色んなことを発見し、色んなことを学んでいって欲しい。サツキが伝えたのは、そんな思いの篭った言葉だった。


エリアスは嬉しそうに頷き、はにかみながら皆と歩を進めていく。


まるで、"みんなとずっと一緒にいる"という密かな望みを成就させた、これから先のエリアスを現しているかのように。

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