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封印少女、持ち帰ります。  作者: ぱふぇ
二章-そうだ王都、行こう。
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5話:王との対談

あっぶない!!!!二分前に書き上がった!!!


あ、一週間遅れたことは許してください……

トルフュスの威厳を表すかのように、大きな城を囲う広い堀で囲われているのは、トルフュスの王城。


堀から少し内側には三メートル程の壁があり、その上でたくさんの兵士たちが警備をしている。


城の正面を少し行くと堀をまたぐ架け橋があり、城を訪問する唯一の道であるそこは、多くの兵士によって特に厳重に警備されている。


ワタルたちが王城に着くと、余所者を易々と通すわけにはいかないと言うように、護衛が要件を尋ねてきた。


帝国の兵団長であるブザルが自分たちの身分と事情を話すと、とっくに王城には伝わっていたのか、特に驚かれることも無く門を通された。


そこまで案内してくれた警備員二人は、クラスメイトたちに敬礼をしてから自分たちの持ち場に戻っていった。


その二人と交代し、少し上の身分の者が城の中を先導してくれる。


廊下や広場を通る時に周囲を見てみると、所々で荘厳な装飾の施されているのが伺える。


一体幾らするんだと聞きたくなるような美しい宝石や加工品の数々。


床から天井、稀に遭遇するメイドさんたちの身なり、更には細部の装飾すらも最高級品だということがひと目でわかる程に、城内はキラキラしていた。


勿論、カーペットも最高級品でふっかふかなので、クラスメイトたちは土足で上がることへの躊躇いのせいか、王座の間までの道のりを、そんなに意味の無い忍び足でカーペット上を歩いた。






高級カーペットとの奮闘の末、ようやく王座の間の前に辿り着いた一行は、並んで入ることにした。


尚、王座の間の前まで案内してくれた人は、ここに着くと、「では、ごゆっくり」とにこやかな笑顔で言い残して去っていった。


一度深呼吸をして、勇者である悟が代表してノックする。



「入りなさい」

「し、失礼致します」



王の声だ。


静かな声にすらも僅かに覇気を感じる。


恐る恐る大扉を開け、全員が王座の間に入る。そのことを確認すると、部屋にいたメイドがパタンと静かに扉を閉めた。


クラスメイトみんなが、緊張のためビクッと震える。


サツキとエリアス、ブザルは大丈夫なようだ。



「よくぞ参った、勇者一行よ」



扉の先には、王座に座る老人の姿があった。その人が王なのだろう。


立派な白ひげを生やし、顔にはこれまでの苦労を表すかのように、いくつもの皺が刻まれている。



「早速この先のことについて話し合いたい所存であるが──」



一体何を言われるのか。


クラスメイトたちは、自然と身構えた。



「──そこまで堅くならずとも良いではないか。話し合いとはいえ、ただの談笑。柔らかくしようぞ」



だが王は、クラスメイトたちの緊張をほぐそうとしたのか、それとも素の性格が出たのか、柔らかく笑ってそう言った。


メイドに長テーブルと椅子を持ってこさせると、「まあ、一度座りなさい」と椅子を指す。


断るわけにもいかないので、予め並んでいた順で奥から座った。


ふっかふかだぁ。



「さて。これからについてだが、勇者一行には早速、私からの依頼を進めて欲しいのだ」



全員が席に着くと、王はゆっくりと話し始めた。


ワタルと暴龍天凱が、何やら小声で「テンプレだね」などと話している。


二人は、隣にいたサツキに小突かれて静かになった。



「だが、直ぐに依頼に移ってくれ、と言うつもりは無い。聞くところによると、そなた等は異世界より転移されてきた者たちだと聞いている。この世界の生活を把握してもらうために、まずは三日ほど自由な期間を設けようと思う」



三日間が、自由に行動できる期間。


逆に考えると、三日を過ぎれば、自由時間は無くなってしまうのか?


そこから先は、底なしのブラック企業が待っているのか?


それが気になり、あかりが質問をする。



「すみません、質問よろしいでしょうか?」

「何かな?」

「三日経ったら、もう自由時間はないのでしょうか?」



あかりの質問に対し、王は笑いながら返す。



「お嬢さん、面白い質問だね。何も、自由時間がそこだけしかないという訳では無い。むしろ、任務に費やしてくれる時間よりも自由時間の方がもっと多くなると思うぞ」

「分かりました、ありがとうございます」



自由時間の方が多くなるような任務とは、一体どのようなものなのか。


クラスメイトたちに期待が広がる。


皆、できるだけ短い時間で終わる、簡単な任務を望んでいることは一目瞭然だ。


それを察して、王が任務の内容をクラスメイトたちに告げる。



「そなた等に受けて欲しい依頼というのは、ギルドの上位クエスト処理。最近、強力な魔物が出没する事例が増えていてな。それらを解消して欲しいのだ」



大半の生徒が"ギルド"と"クエスト"、そして"魔物"という単語に反応した。


それはまるで、ロールプレイングゲームの世界ではないか。


クラスメイトたちが、この街、否、この世界がゲームのような世界なのだと再確認する。


この様子だと、王都での生活に順応するのに三日もかからないだろう。


笹野先生は、あまりそういった類の物に興味がないのか、反応が薄いようだ。



「引き受けてくれるかな?」

「「もちろんです!!」」



当然、即答である。


託された依頼が憧れていたものなら、誰だって喜んで受諾する。



「では、早速依頼に移ってもらいたい……が、まずは戦い方から覚えてもらおう。思わぬ事故を防ぐために必要だ」

「あ、戦い方でしたら、もうほとんど完璧だと思います。この一ヶ月で、基本から応用まで色々教わったので」

「ふむ、なんと!だとすれば、教える手間も省くことができる」



サツキとエリアスという優秀な講師がついていたのだから、もうある程度の戦闘はお手の物だ。


その事を悟が王に伝える。



「でも、トレーニングには参加させてください。自分たちも強くなりたいので」

「素晴らしい心構えだ、勿論だとも!では、三日後に訓練に参加してもらうとしよう」

「ありがとうございます」



自主的に訓練に取り組みたいと言うと、王は大いに喜んだ。


勇者がいるのはいいが、怠けてばかりだと困るので、勇者一行の性格を少し心配していたが、それは杞憂に終わったようだ。



「では次に、これからの王都での生活についてなのだが、勇者一行には王城で生活してもらうことにする。話し合いが終わった(のち)、メイド達に案内を頼むから、個人で部屋を確認すること」

「質問失礼します。自由時間に外出してもよろしいですか?」

「規模にもよるが、即日で帰ってくることができるならばよいぞ。それと、外出先で悪事を働いた場合は、その者をしばらくの間外出禁止にしようと思っておるので注意すること」

「ありがとうございます」



外出はしてもいいらしい。


ワタルと暴龍天凱は、早速レベル上げをする約束をこっそり立てた。


それから十分ほど経ち、マナーや危険な場所など、ひととおり王都で生活する上での注意を告げられ、いよいよ話し合いが終わろうとしている。


話が最後の締めに差し掛かる。



「では、最後に。明日の夜、勇者たちを迎えるパーティーがここ王城で開かれる。貴族ばかりだが、萎縮することはない。服装も任せる。貴族と仲良くなっても良し、友人と話をするも良し。好きなようにパーティーを楽しもうぞ」



明日はパーティーの予定があることを笑顔でクラスメイトたちに伝えると、「さあ、各部屋に案内してあげてくれ」とメイド達に言う。


メイド達が「どうぞ、こちらです」とクラスメイトたちを案内し始めるので、それに従って王座の間から出ていった。



「いや〜、王様いい人そうだったな!」

「そうね、終始ほぼ笑顔で、質問しやすかったわ」

「作品によっては、だいぶ腐った王もいるみたいだしな。この国の王はめっちゃいい人でよかったぜ!」

「お前はなんの話をしているんだ?」



メイド達に案内してもらっている道中で、悟、優香、佑介が王について話している。


佑介はトルフュスにきてからというもの、ずっとラノベやゲームの知識を爆発させていた。


他のクラスメイトたちも同様に、異世界の街について自分たちの感想を言い合っているようだ。



「明日がパーティーだから、明後日の朝食を食べた後にレベル上げ行かない?」

「いいね!サツキとエリィも誘おうか?」

「そうだね、後で誘いに行こう。まずは部屋割りを覚えないと始まらないよなぁ」



一方、ワタルと暴龍天凱は、レベル上げの日程を決めているようだ。


まだ回復方法などに不安が残っているので、サツキとエリアスも誘うようだが。


だが、ワタルが何かを思いつく。



「あ、そうだ。回復とかバフの方法が不安だったけど、僕の技能(スキル)で補えばいいんだ」

「え、天才なの?」



確かにそうである。


ワタルの天職は"鍛冶師"、技能には"神器創造"がある。要は、それを使って新しい道具を作ればいいだけだ。


材料は王城で取り揃えてある物を借りれば良いので、クラスメイトたちの安全と技能の習熟も考えて、クラス全員分のアーティファクトを作ることもできる。


完璧だ。完璧すぎる。


ワタルは、レベル上げに入る前にそれをやることを決めた。



「さて、まずはみんなで行動かな」

「街の中も見て回りたいね!」

「確かに、絶対楽しい!」



そんな元気な青年たちの声が、王城の廊下に響く。


憧れていた異世界と、見たこともないほど豪華な城に、クラスメイトたちみんな、心を踊らせていた。






王座の間に二人、人影が見える。


一人は王。もう一人は三十代くらいの男だ。



「父上、聞きましたよ。勇者一行がここを訪れたのですね」

「ああ。つい先程、これからのことについて話し合ったところだ。皆元気で、態度も良い。とても話しやすく、雑談もしたかったのだが、ずっとこんな堅苦しい場所に置いておくことなど出来んよ」



会話から察するに、男は王の息子なのだろう。


彼は少し王と雑談したあと、急に本題に入った。



「ところで、父上。その勇者方に依頼を渡したとも聞きました。それは一体、どんなものなのでしょう?」

「……なに、ただのギルドの上位クエスト処理だ」

「そうですか。ということは……まだ現状についてはお話されていない、ということですか」

「うむ……そうだ。いきなりあの件を伝えるには、青年たちには荷が重いと思ってな」



男が質問すると、王は渋い顔になった。



「あれが進んできている今、勇者一行の力が必要になってきます。早めに覚悟を決めさせておくべきではないでしょうか?」

「……そうだな。彼らの心が落ち着いてから、改めて現状を話すことにしよう。助言感謝する」



あれとは一体、なんの事なのか。


クラスメイトたちがいない場所で、限られた者にしか伝えない情報。


魔物の活発化と強化。


それは、とある重要な事件に繋がる可能性があるのだ。


それと勇者との関係について話した後、男は王座の間を後にした。



「魔物が活発化……ふむ、これは、やはり早急な対処が必要か……」



王以外の誰もいなくなった広い王座の間に、そんな声が反響する。


王は仕事を片付けるべく、再び渋い顔をして机に向かったのだった。

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