表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印少女、持ち帰ります。  作者: ぱふぇ
二章-そうだ王都、行こう。
18/29

2話:訪問者

まずい、一週間に一度の投稿が崩れてきた……

私用が忙しいので許して……(´・ω・`)

広い広場の一角で戦い合う少年少女達がいた。

戦い始めの動きはかなりぎこちなかったが、三時間ほどサツキとエリアスの指導を受け続けていると、だんだん精錬された動きになってきているのが傍目にもわかる。


仮にもプロの講義である。通常の訓練をするよりも、習熟速度は何倍にも速かった。


そんな中、彼らの元に一人、来客が訪れる。



「ほう……初めて会ったあの時とは大違いだな。ただ怯えているだけだった少年達はどこに消えたんだ?」



挑発とも呆れとも取れるそんな言葉と共にサツキの隣に現れたのは、ラデア帝国第一兵団団長・ブザルだった。

エリアスの目が細められる。だが、決して声のする方向は見ない。

その代わりに、ピリついた空気が少し、エリアスから発せられた。

ブザルは軽く身構える。



「ま、待て待て。今度はお前たちに害を加えに来たわけじゃないんだ」



『帝国第一兵団団長』は、帝国の中でもトップクラスの実力と実績を持つことを示す、栄誉ある称号。

そんな称号を持つ人物を即座に警戒させるほどの空気を放っていたエリアスは、その空気を霧散させると、冷たい目はそのままでブザルの方を向く。



「なんの用でここに……?」

「その事なんだがな、国家間会議が終わった。結果、勇者たちを王国へ招くという結論になった」



エリアスから質問を受け、会議の結果を丁寧に説明する。そこでサツキも疑問を抱いた。



「何で帝国じゃないの?」

「王国の方が、より適切な対応ができると判断されたからな。往復の時間を考慮して、王から一週間の猶予を貰ったんだが……小さい方、確かワープポイント作れたな。王国まで繋ぐこともできるか?」

「うん、できるよ」

「なら、頼めるか」

「いいけど……誰が小さいって?一応キミより長生きなんだけど?」

「……スマン、失言だった」



小学生ほどの容姿な為、『小さい』という失言をしてしまったことで、ブザルへのプレッシャーがエリアスからサツキのものに切り替わる。

どうしてこんなに流れるように失言を言ってしまうのか。


そして自分より長生きだと言う言葉が引っかかったが、これ以上失言を増やしたくなかったので自重した。

今年で四十七の自分よりも、ちみっこい方が年上だと聞けば、誰だって聞き返したいだろう。

それを我慢したブザルは偉いと思う。



「まあいいよ。で要は、王国に行って、王に会ってこればいいってこと?」

「理解が早くて助かる。私も同行する予定だから、出発する時言ってくれ」

「りょーかい」



クラスメイト達の特訓もそろそろ様になってきた頃合だ。

一旦中断して集合をかけると、ヘトヘトになったクラスメイト達がゆっくりと近づいてくる。

その姿はまるでゾンビのよう。


ゾンビ達は集まって座ると、ブザルの存在に気がついた。

クラスメイト間にざわめきが広がる。



「はーい、落ち着いてね。お知らせがあるよ」



サツキの一言で全員が静まる。

よく訓練された生徒たちだ。



「今回はとある用事のため、帝国の団長が来ました〜。はい、自己紹介!」

「久しいな。ラデア帝国第一兵団団長を務めている、ブザル・シュライザーだ。一ヶ月も放置しておいて、すまなかった」



自己紹介後、サツキがブザルに説明を促すと、簡潔に事の運びを話し始めた。


王国会議とその結果。そして、これからの行動について。


クラスメイト達は真面目に説明を聞き、もう自分たちに敵意はないことを理解すると、ようやく緊迫した空気を緩めた。



「──なので、全員の準備が整ったら知らせてくれ。何時でも出発する時用意は出来ている。やり残したことのないようにするんだ。質問はないか?」



そう説明を締めくくると、クラスメイト達全体に視線を向け、質問を問う。


すると、サツキからとある要望が飛んできた。



「ん〜。じゃあ、アタシから一つお願いを」

「何だ」

「よければ、この子達と一戦どうかな?一対一じゃあ心許ないかもだけど、一対三くらいなら少しは戦えると思うよ」

「ほう。なら、全員とやらせてもらおうか」



クラスメイト達がギョッとする。

一国の兵士、しかも団長格の人物と戦っても、勝てる見込みがないことは明確だ。

一ヶ月前のワタル達は、その天職をフル活用した個性的な戦闘法で撹乱して戦ったから勝てたのであり、平凡な戦い方の自分たちでは歯が立たない。


しかし、サツキはその考えに反論する。



「さっきの通りにやればいいのさ。個人戦、団体戦、一対二、チーム戦。今やっていたことをそのまま発揮するだけだよ」

「いや、そんな簡単に言っても……」



思わず反論する者がいる。心の中で反論する者もいるだろう。

それでもサツキは、ここぞとばかりに念を押す。



「とりあえずやってみなって。文句を言うんだったら、一回本気でやってみてからの方がお得だよ」



サツキがニコッと微笑みながらそう言うので、仕方なく一度戦ってみることに。

エリアスがブザルに保護魔法を施す。


ブザルはその成り行きを静かに見守っていたが、一応の決心ができたのを察し、シールドの中に入ってクラスメイト達を見る。



「さあ、まず最初の組はどの組だ?」



シールドの中心に立つと、エリアスから投げ渡された木刀を地面に突いて不敵に笑った。



「じゃあ、私たちが!!」

「最初に戦うぜー!!」



元気な声とともに飛び出してきた二つの人影。

陽月と星也だ。


二人は勢いよくシールドに飛び込むと、ブザルと対峙した。



「お前たちの天職は何だ?」

「「『双盾士』だぁ!」」

「ほう、珍しい天職だな。私は『剣士』だ。初手は譲る、始めようか」

「それはどうも」

「じゃあ行くよー!」



両者とも身構えている。

短い会話が終わると、天海兄弟は併走してブザルに接近した。


ブザルの轟速の唐竹割りが繰り出される。

それを二手に分かれることで回避し、陽月と星也がブザルを挟み込む配置になった。



「求むは炎──『炎弾』!」

「「この盾は属を持つ万物を返し、主に反する者への裁きと化す──『反盾(はんじゅん)』!」」

「っ、そう使うか。厄介な!」



陽月が詠唱を簡略化した炎弾を放ち、それを星也が魔法攻撃を反射する盾を出して跳ね返し、陽月も反盾で跳ね返す。


まるでエアホッケーのような攻撃は、二人の距離がじりじりと近づくごとに厄介になっていく。


それを突破するために、ブザルは行動に出る。


陽月の後ろにバク宙で回り込むと、上からの剣撃を浴びせる。



「「『機能開始(システムオープン)!!』」」

「『光盾』!」

「『爆盾』、『衝撃波(インパルス)』!」



機能開始。それは、二人の着けているネックレスの隠された機能を発動させる呪文。


二人のネックレスが黄色く光る。


このネックレスは実は、ワタルが作成したアーティファクトであり、『詠唱省略』の効果が付与されている。


よって、これより、陽月と星也は無詠唱での魔法行使が可能となった。


星也が光盾で遠くから剣撃を防ぎ、近距離にいた陽月は合図を送ると起爆する盾を光盾の真下に敷き、後ろに衝撃波を起こして自分を吹っ飛ばす。


ブザルは勢いのままに爆盾の爆発を受け、その衝撃でシールドの間際に吹き飛ばされた。



「『縛鎖盾』!」

「「『処罰の部屋パニッシュメント・ルーム』!!」」

「なっ、ちょ──」



ブザルの両足に鎖のようなものが巻き付く。


そして、およそ十メートル四方の透明な板を貼り合わせたような部屋が完成した。



「「『衝撃盾』!」」



ブザルの足元と真上の天井に、合図を送ると衝撃波を撒き散らす盾を設置する。



「『作動(アクション)!』」

最初に陽月が下の盾を作動させると、ブザルは勢いよく真上に吹き飛ぶ。



「『作動(アクション)!』」

「『爆盾』!」

「『重力盾』!」



陽月が爆盾を、星也が部屋の重力を強くする盾を設置する。



「うおっ──」



衝撃波と重力によって超加速しながら落下してきたブザルは、地面に叩きつけられると同時に爆発をモロに浴びた。


処罰の部屋パニッシュメント・ルームが消滅し、爆煙が晴れ、地面に横たわるブザルの姿が見えた。


保護のおかげで死んではいないとはいえ、発動すれば少しの間動けなくなる。何せ、死を免れるのだ。対価としては安すぎるくらいだろう。


よって──



「はあ……コンビネーションが段違いに上手い。これは──完敗だな」

「「ぃやった〜〜!!」」



ブザルとの初試合は、天海兄妹の勝利で幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ