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封印少女、持ち帰ります。  作者: ぱふぇ
二章-そうだ王都、行こう。
17/29

1話:一ヶ月後

二章、開幕です。

「先程調べて参りました、ペシム島に転移してきた少年たちについてですが……約二十人の中で、天職が『勇者』の者が発見されました」



ワタルたちが転移してきた島、ペシム島。

そこで希少な天職を持つ者がいるかの調査に赴いた一人の兵士が、帝国の王座の間でその知らせを報告した翌日から、人間領の各国の王たちの緊急会議が帝国にて行われた。



「では、本会議のまとめに入る」



威厳に満ちた、小さくともよく通るハスキーボイスで他国の王にそう告げたのは、王国『トルフュス』の王だ。



「今回異世界より転移してきた勇者とその仲間達は、我が国──トルフュスの王宮にて保護する。理由は、この大陸の四国の中で最も勇者達を受け入れる体制が整っている為。異論は無いだろうか」



トルフュスの王が他三国の王たちに視線を向けながら問うた。


他の王たちも異論はないようで、三人は頷いて肯定を示す。



「では──ブザル団長」

「ここに」

「勇者一行を王国に移動させておいてくれ。到着し次第、ブザル団長と団員には褒美を授けよう」

「承知しました」



王の命を授かり、四人の王のいる王室を出る。

ブザルは煌びやかな装飾の施された王室のドアを閉めると、これまた塵一つ落ちていない程に整備された王城の廊下を歩いていった。


やがて王城の外に出ると、誰にも気が付かれないように王城の裏へと向かう。

そこには、一ヶ月前にペシム島から兵士たちをまとめて帝国に転送したゲートの姿が。



「……一ヶ月か、随分待たせてしまったな」



そう呟くと、ブザルは静かにゲートを潜った。


今度は初めてワタルたちと対面した時とは違い、必要最低限の軽装でペシム島へと転移したのだった。










帝国兵の襲撃があってから、ちょうど一ヶ月。


精神の安定も取り戻し、クラスメイトたちは今は普通に森で暮らしている。


着る服のなかったサツキとエリアスは、"裁縫師"の天職をもつクラスメイトの手によって、きちんとした服を与えられた。


サツキは狐にも変身できるということで、いくら変身しても、人型の状態の時は服を自動で着用できる便利機能の付いた服。そして、「狐耳の娘といえば、やっぱり巫女とか?」という地球から来たクラスメイトたちの意見により、動きやすく、見た目も良い、巫女風の服に仕立てられた。


エリアスは、「学園の衣装をもう一度着てみたい」とのことだったので、制服にちまちま装飾がついた、オシャレな制服風の服に仕立てられた。


ついでにクラスメイトたちの新たな服も作ろうということになり、元着ていた制服は、きちんと畳んで一箇所にまとめて置いてある。


その服を作るのに使ったミシンや、その他森で生活するうちに増えていった手動の機械は、すべてワタルが"神器創造"で作り出したものだ。


工夫すれば何にだって使える技能。ワタルのお気に入りである。



「おいお前ら、朝食!」

「この練習終わったら行く、ちょっと待っててー!」

「早めに来いよー」



拡張・整備された広場に設置されたワタル製の簡易キッチンに立ってフライパンを操り、二十四人分の朝食を作っているのは、長身で細身のクール系イケメンの新崎(あらさき) 逸郎(はやお)


普段から料理が趣味だということもあり、家庭的男子としてクラスに知られている。

普段はクールなのに、学校に持ち込む弁当がいつも綺麗すぎるところにギャップを感じたりする者が多いのだそう。

男女ともに、逸郎に弁当を作ってもらえる日を夢見ていた。


すると直ぐに、腹を空かせたクラスメイト達が食卓に集まってきた。


この石製の食卓は簡易キッチンと一緒に、ワタルが『鉱物操作』で作成したものだ。

人数分の椅子の他、包丁やフライパンも併せて作ったので、いい練習になったようだ。


全員が食卓につき、いただきますの挨拶をして食べ始める。

サツキとエリアスは、『いただきます』や『箸』という日本の文化を知らなかったので、ワタルと暴龍天凱から教わり、今では箸も難なく使えるようになっている。



「さて、今日で兵士の日から一ヶ月だね。あの兵士の話だと、きっと今ごろ国家間会議が終盤だと思うから、これから最終講義に移ります──ご主人!出番だよ!」

「ふひゃ!?」



ちょうど朝食を食べ終わってご馳走様のポーズをしていたエリアスを視界の端で捕まえて、最後の講義を促す。

エリアスから変な鳴き声が漏れた。

食卓が和んだ。



「あ、うん……じゃあ、みんなが食べ終わったら……でいいよね?」

「ええ。最後の講義、楽しみにしてるわよ、鳴き声先生?」

「なにをっ」



優香が煽る。

エリアスが挑発に乗り、傍らの生肉を優香に向かって投げた。

椅子の裏に用意してあった弓矢を素早く取り出し、弓で迎撃する!

矢と兎肉同士が空中でぶつかり合い、長テーブルの中心で重力に従って落下し始めた。

それを操風師の佐野(さの) 瑛太(えいた)が風を呼んで浮かせると、炎術師である遼馬とのコンビ技で風に炎を纏わせ、できた焼肉を全員の皿に配る。



「……おい、食いもん粗末にすんなよ」

「こらっ、食べもの投げない!」

「「ご、ごめんなさい……」」



まるで親のような言葉に、反射的に謝罪の言葉が出てしまうエリアスと優香。食卓がさらに和んだ。


恥ずかしそうに俯くのを、クラスの女子は微笑ましいとでも言うような顔で、男子は一部ニヤついて見ている。

その一部の男子は女子たちの冷めた眼差しを浴びせられ、ニヤニヤを解いた。



「さ、さて、私達はあらかじめ移動しておきましょう」

「そ、そうだね……」



女子たちの視線に気がつくと、エリアスと優香はどこかへ行ってしまった。

それを見て、女子たちの視線はますます優しくなっていく。


二人が去った広場には、その後もどこか優しい空気が漂っていたのだった。




時は流れて、朝食後。

広場の一部に、人集りがある。エリアスとサツキの最後の講義だ。

クラスメイト達は皆、なんの講義だろうかと話し合っている。



「えーと……はい、いいですか……最後の講義を始めます……と言っても、サツキ、何すればいいの……?」

「いやー、ほらさ、知識はつけたんだからさ。実践しないと」



みんなが頭上にクエスチョンマークを点灯させる。

魔法の実践練習なら、倒木を相手に何度も行ってきた。



「サツキちゃん、実践は何回もやってきたでしょう?」

「まあそうだけど、動く標的はやったことないじゃん?」



あかりがサツキに質問を投げかけると、すぐに返答が返ってきた。

言葉から察するに最後の講義は、魔法のコントロールを身につけるために、動く標的に向かって魔法を当てることなのだろう。


だが、辛うじてついていくことのできるようなスパルタ講義は、まだ終わっていなかった。



「動く標的……そうね、そういえば止まっている倒木でしか魔法を使ってないわね」

「じゃ、最後の講義は『動く倒木に正確にコントロールして魔法を使う』って内容か?」

「なぁに言ってるのさ!」



優香と佑介が推測を話すが、サツキはそれを笑いながらぶった斬る。

更に、笑いながら悪魔のような発言をする。

それすなわち──



「──今からやるのは、模擬戦だよ!」



(訳:君たち自身が標的になるんだよォ!

つまりそういうことだ。


サツキは続けて説明する。



「動く標的を狙うだけだと、身につくのはコントロールだけじゃん?でも模擬戦だと、動く標的へのコントロール、死への緊張感、状況判断力が少なくとも身につけられるのさ」

「「「「うっ……確かにそうだけど……」」」」



自ずから標的にはなりたくない。

でも、言ってることはもっともなので、反論できない!

よって、



「じゃあみんな、やろっか!怪我しないようにみんなに保護かけて、まわりに結界張っとくから、安心して戦ってね〜」

「「「「安心できない」」」」

「終わったら、アタシとご主人のステータス見せてあげるよ?」

「「「「対価少なくないか」」」」

「……死にはしない、戦ってこーい!まずはそこの二人!フィールドにどうぞ!」

「「うわぁぁぁぁあ!!!」」

「「「「鬼か!!」」」」



男子二人が結界の中に放り込まれる!

激しいツッコミをスルーして、サツキはそのまま続ける。



「じゃあ、頑張ってね〜。次の人も決めとこうか!」

「「「「ひぃっ」」」」



唐突に模擬戦が始まった広場に、その後しばらく「こうなったらやってやるよぉぉぉお!」「うおぉぉぉお危ねぇえ!!」などという叫び声や、爆発音などの衝撃が森に響き渡ったという。

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