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封印少女、持ち帰ります。  作者: ぱふぇ
一章-異世界への転送
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10話:エリアスのパーフェクト魔法教室

姉妹喧嘩が終わり、エリアスの口調とオーラが元に戻った後、ワタル達は進んできた道を辿ってクラスメイト達の元へ向かっていた。



「桜井、お前ってそんなにモテるキャラだったか……?」

「だよなぁ。まったく、羨ましい限りだぜ」

「……もういいじゃん、その話」



歩きながら雑談をするワタル達。先程勃発した姉妹喧嘩の部外者が主なメンバーだ。

その中でも今はワタルがイジり倒されているのだが、それはできる限り優香とエリアスのことから意識を遠ざけるための一種の現実逃避だったりする。


それはそうだ。現実逃避だってしたくなる。何せあの脳筋の佑介でさえ、危険を感じて二人から遠ざかったのだ。

本人談だと、「いくら俺が脳筋といえど、わざわざ自分から修羅場に突っ込んでいくほどの悪い頭は持っていない」との事だが……



「……優香は、何でワタルを好きになったの……?」

「ワタルは昔から、色々な場面で助けてくれるのよ。助けて貰ってばっかりで……だからかしらね」

「……そういえば、私もさっき助けてもらったな……」

「それはよかったじゃない。まあ、私は何回も助けられてるのだけれど」

「……優香はそんなに重いものを助けられた訳じゃないんだよね?私は命というとても重いものを助けられたから」

「一回助けられただけで堕ちちゃったのかしら?チョロいわね」

「……助けられることしかできないで、お返しもしないというのはどうなの?人として恥ずかしいね」

「「……アァン?」」



この通り、罵倒に罵倒で返すという修羅場。さりげなく、エリアスのオドオドがなくなっている。姉妹大戦は終われど、紛争は絶えないのだろうか。佑介が遠ざかったのは、脳からの命令ではなく本能で感じたからだったのかもしれない……


そして、修羅場の方に意識が向いて全員気が付かないが、エリアスが優香と話す時にタメ口になっている。恋敵=ライバル=友、と認識したのだろうか。

二人には早く仲良くなってほしいというのがここにいる全員の共通意見なので、これを機に徐々に打ち解けあってもらいたいところである。ぶっちゃけ、喧嘩せずに平和に過ごして欲しい。




さて、更に歩くことしばし。クラスメイト達の元まで残り四分の一程の距離まで来る頃には、夕日が沈み始めていた。

空が橙色に染まり、鳥が寝床に帰るべく群れを作って飛んでいく。


この美しい景色は、どこの世界へ行っても変わらないようだ。



「綺麗だね、日本と変わらない」

「うん、きっとみんなも見てるよね」



ワタルと暴龍天凱の言葉で、悟は思い出す。

そういえば、クラスメイト達は別行動であったな、と。


きっと、忘れていた訳では無いはずだ。濃すぎる出来事と壮絶な姉妹喧嘩のせいで、すっかり頭から抜けてしまっていたのかもしれないが、クラスのリーダーがクラスメイト達のことを忘れてしまうなんてことはないだろう、多分。



「そうだ、先生達を待たせているんだったな。急いだ方がいいんじゃないか?」

「確かに、暗くなったら場所がわかんなくなったりするからね。急ぎ足で行こう」



悟の提案で、六人と一匹は急ぎ足でクラスメイト達の元へと向かう。しかし、雑談は欠かさない。


まだ知らないことが大量にあるので、雑談も兼ねて聞かなければならない。

ワタル達が元いた地球では魔法が使えないので、何としてでも聞いておきたいところだ。


その中で悟が代表して、現地民であるエリアスに質問する。



「エリアスさん。結果報告の時に、魔法が使えるって言ってなかったかな?」

「は、はい……使えますよ。きっと、悟さん達も使えるようになると思います……」



悟と祐介が、ぐっとガッツポーズを作った。

ある種のアニメなどを見ているならば、一度は憧れるもの、魔法。それを使うことを夢見て、頭の中で魔法のシュミレーションをした小学生時代を思い出す。


ワタルは思い出していた。自分で考えた魔法をノートに書き綴り、ノート片手にその呪文を唱えたあの日々を。

それ自体はとても楽しかったのだが、両親に詠唱しているところを見られた挙句、詠唱までも律儀に書き綴ったノートをも見られて、生暖かい目で見られたのを思い出す。

黒歴史に気が付き、今はそのノートは棚の奥に封印されている。


悟も思い出していた。ある日友人に勧められて観たアニメにハマり、学校から帰るのが楽しみになっていたあの日々を。

一時期そのアニメにハマりすぎて、弓道で伸び悩んでいる優香に「この魔法使ったらいいと思う」と言って、命中率を上げる魔法を提案してしまい、正気を疑われたのを思い出す。

そして、優香に「それと、それは『魔法』じゃなくて、どちらかと言うと『スキル』よ」と訂正され、優香が自分よりも上級者だと知り、何故かそれっきりあまり観ることがなくなった。


佑介も思い出していた。とあるアニメを悟に勧め、放課後に悟の家でアニメを見て楽しんだあの日々を。

なれるならば何の職業になりたいかを悟に聞かれ、「俺は賢者かな」と答えた途端、悟に爆笑されたのを思い出す。

その夢はまだ尽きてはいない。この世界に魔法があることを知り、「賢者に俺はなる!」と意気込んでいる。


他の二人と違い、たとえ笑われようと夢を諦めないという点は、強い心の持ち主だと評価するか、脳筋すぎると評価するかは、その人次第である。どちらにしろ、脳筋な賢者が誕生してしまうことはないと信じたい。



「魔法の使い方、俺にも教えてくれ!」

「は、はい……一応皆さんに教えるつもりですよ」



一人はちょっとした黒歴史を思い出しながら。

もう一人は賢者を夢見て。


俺達も魔法が使えるようになるなんて!

二人の心は示し合わせたように一致していた。



「で、では、魔法の使い方を教えますね」

「「はい先生、お願いします!」」

「せ、先生……!?」



早速、エリアスの魔法教室が始まった。

一時限目は、魔法。



「え、えー……では、悟さん、佑介さん、優香には……まずは魔法を使うための下準備をしてもらいます……やり方を説明しますので、出来たら先生に教えてくださいね」

「「は〜い!」」

「え、私も!?」

「……では、助手のサツキさん……例のブロックを持ってきてください」

「!?」(え、アタシも!?)



エリアス先生、ノリノリである。

優香は仕方がないとして、助手として巻き添えをくらったサツキは、突然の振りに困惑している。

「例の」とは何だ。狐のアタシが助手て。

ツッコミどころ満載だ。



「……あ、助手のサツキくん……ブロック、まだ残ってる……かい?」

「!」(大丈夫、確かまだあの商人さんのカバンの中にあったはずだよ)



生徒たちがエリアス先生のことを、目を見開いて見ている。

「何で動物と会話できるの!?」と。



「あれも魔法なのか……?」

「後で聞いてみましょう……」

「頼んだ、悟」

「なんで俺!?」



そんな雑談をしている間も、サツキとエリアスの会話は続く。



「じゃあ……三人分、取ってきてもらえる……かね?」

「……?」(いいけど……そのキャラ、疲れない?)

「……そういうことは言っちゃダメ……だぞ」

「……、!」(はぁ、まあすぐ戻るだろうからいいけど……五秒待っててね)

「……わかった……ぞい」

「?」(それは違うと思うよ)

「そ、そうかな……?まあ、行ってらっしゃい……」



エリアスがそう言うと、サツキは列から飛び出し、くるりと宙返り。綺麗な一回転を決めて……


──ズバッ


そのモフモフの尻尾で空間を切り裂いた。


その裂け目から、暗い洞窟の壁と、そこにもたれ掛かるようにして横たわる人骨と鞄が見える。


サツキは瞬時にその裂け目に飛び込むと、鞄に触れてから帰ってきた。


その間、五秒。

エリアス先生と本人以外の全員が絶句している。

ワタルたちも、サツキがこんなことが出来るとは思っていなかった。

ダンジョン内で五秒だけ消えたことはあったが、このような方法でステータスブロックを取りに行っているとは知らなかったのだ。



「……ありがとう、サツキくん」

「!」(はいはい……あ、血の採取もやってあげた方がいいかな?)

「……あ、本当?じゃあ、お願いし……するよ」

「……」(……もうツッコまないからね)



そして何事も無かったかのように始まる会話。その会話を聞いている途中に、何故か悟達は悪寒を感じ、身震いした。



「では……授業を再開します」

「ちょっと待て!今の技は何だよ!?」

「尻尾で空間断裂なんて、サツキたん、何者よ!」

「あと、エリアスさんは何でサツキたんと会話できるんだ!?」



質問の嵐がエリアスを襲う。

普通ではありえないことが目の前で何回も起きているのだから、普通の反応といえば普通の反応である。



「……はい、お静かに……ついさっきのものは応用編なので……後々習いますよ」

「「「応用編の魔法を易々と使う狐」」」

「とりあえず……授業を再開しますね。今は下準備をして……まずは魔法を使えるようになりましょう」

「「はーい」」

「……サツキくん……さっき取ってきたものをください」

「!」(はいどうぞ)

「あなた達、切り替え早いわね……」



一人だけ切り替えの遅い生徒の言葉をスルーして、授業は進む。

まだ下準備の段階なので、スムーズに進まなければならない。



「……えっと、今サツキくんに取ってきてもらった、このブロックですが……ステータスブロックと呼ばれるものです。……これを見て自分の天職とステータスを知らないと、魔法を使うことができません……なので今から皆さんには、皆さん自身の職業とステータスを調べてもらいます……」

「先生、具体的に何をすればいいんですかー?」

「えっと……ステータスブロックに登録するにはですね……六面ある内の一面に魔法陣があるのは分かりますか……?」

「おう、これだな」

「あったよ」

「こっちも見つけたわ」



エリアス先生は、スムーズに教えていく。



「……その魔法陣の上に、自分の血を一滴垂らすことで登録が完了して、ステータスブロックで自分の情報を見ることができます……」

「え、血を?」



優香が疑問の声を上げる。

血を採取すると言えども、採取する道具がない。そんな中で、どうやって血を採取するのか。



「先生、血はどうやって採取するんですか?」

「確かに、やり方は分かったけどよ。血を採る道具はないぜ?」



悟と佑介の質問に対して、エリアス先生は得意げに解決策を提示する。



「……ふふん。こういう時は、魔法を使えばいいんですよ……」



列の端っこで、ワタルと暴龍天凱の目が遠くを見つめた。

魔法で血を採取すると言ったら、サツキの『風刃』しか思い浮かばない。

それを実際に経験しているワタル達だからこそ、その恐怖がわかるというものだ。


これから体験する悟達の指が吹き飛ぶことが無ければいいが……



「……サツキくん、お願いします……」

「!」(はいはい、出番だね!行くよー)



エリアスの肩に飛び乗るサツキ。

小さな両手を前に突き出すと、手の平付近から風のカッターが三つ飛び出した。


風でできたカッターはそのまま直進し、悟達三人の人差し指を薄く切り裂く。


悟達の人差し指から血が一滴地面に落ちる。

その音が聞こえるのではないかと思うほどに、森がしんと静まり返った。


経験したことのあるワタル達の視点は、遠くを見つめたまま固定されている。



「……はい、では……ステータスブロックに血を垂らしてみて下さい……」

「「「あ、ハイ」」」



全員、ツッコむのはもう諦めた。だって、いちいち反応していたら疲れるから。


悟達は魔法陣に指を触れさせる。

すると、各自のステータスが空中に映し出された。

三人は目を剥き、呆然したままと画面を見つめ続けている。



「……魔法には一人一人に適正があって……適性がある属性はとても効率よく使えるので……一般には、適正のある属性を優先して鍛えていきます……」



エリアスの言葉で、悟達は思考を取り戻した。

全員がエリアスを見て、話を聞いている。



「下準備が終わったので……これからはいよいよ、魔法を教えていきます……」



下準備を終えてやっと、魔法を教わる機会がやってきた。悟達は期待の眼差しでエリアスを見ている。


だが、道具を使う時には、その仕組みや用途などを教わらないといけない。

なのでまずは、魔法を使う前に、魔法の説明をする。



「えっと……魔法を実際に使うのはもう少しだけ後になります……まずは、魔法についての知識を覚えてもらいます……」



悟達から、ちょっと残念な感じの雰囲気が滲み出ている。

早く自分で魔法を使ってみたいのだろう。



「まず……魔法には、火、水、木、光、闇、土、無という七つの属性があって……その中で適性がある魔法を使うことをおすすめします……適性は複数ある場合もあるし……ひとつもない場合もあります……」



尚、複数の適性を持つことが多い職業というものがあるらしく、賢者や魔術師がそれに当てはまるらしい。

属性適性がひとつもないワタルが遠い目をした。



「皆さんのステータスには……なんの属性に適性があると書かれていますか……?」



悟達は自分のステータスを確認する──直前。



「……え?なに……?」

「!!」(もうすぐワタルくんのクラスメイトさん達がいる場所に着くよ。こんなに多いんだね)

「多い……?そうなの……?」



サツキとエリアスが会話を始める。

エリアスの疑問声で、三人はステータスを見る前に、エリアスを振り返った。



「……ねえ、ワタル……クラスメイトさんって、何人いるの……?」

「え?先生含めて二十二人だけど……何で?」

「いや……サツキが、意外と多いねって言うから……」



多い?なぜ多くなるのか?



「……サツキによると……二十七人いるみたい……そのうち六人は大人だって……」

「六人だって?大人は先生一人なはずだろう?なぜ五人増えているんだ?」



悟が反応する。

大人が五人増えるなんてことは、あるわけが無い筈だ。



「!」(何処かの兵が地震の偵察に来たのかもしれないし……もしかすると、山賊かもしれない)

「……山賊……!?」



山の海賊。一般に気性の荒い人が大半で、何をされるか分からない。


エリアスから山賊の説明を聞いて、全員が総毛立つ。それが本当ならば、一刻も早く向かわなければならない。


本当は帝国兵なのだが、帝国兵も気性の荒さでは賊と同等くらいはある。

どちらにしろ、良い未来が待っていないことだけは確かだ。



「エリィ、ワタルくん!早くみんなのところに行かないと!」

「悟君、僕達は先に助けに行ってるから、すぐに後から追いかけてきて!」

「あ、ああ」

「でもよ、三人と一匹だけで大丈夫なのかよ!?」



ワタル達が走り出すと、佑介がストップをかけた。



「心配ないですよ……ワタルと暴龍天凱さんのお友達を傷つけるようなやつらは……私たちが木っ端微塵にしてやりますから……」

「お、おぅ、そうか。な、なら安心だぜ」



四人に何らかの魔法をかけながらそう言ったエリアスは、明らかに怒っていた。優香と喧嘩する時の威圧的なオーラとはまた違う、もっと別の──ドス黒い、禍々しいオーラが出ていた。


どうも、封印を解かれてすぐなのも影響してか、感情の制御が思ったようにできないらしい。



「じゃあ、先に行ってるよ!」

「……野郎共め……全員捻り潰してやる……」



エリアスの怨嗟の言葉を最後に、ワタル達はものすごい速さで森に突っ込んでいった。


身体強化魔法がかけられていたのだろう。常人では有り得ない速さで駆けていったワタル達の後を追いながら、佑介が呟いた。



「俺、一つ分かったことがある。エリアスさんだけは怒らせちゃいけねぇな」



恋敵である優香はともかく、悟は激しく同意したのだった。

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