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【完結済】愛し愛される世界へ ~一目惚れした彼女が、この世界の敵でした~  作者: 冬木アルマ
第一章

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24/112

一旦の別れ、そして次の舞台へ

「もう、行くんだね?」

 

「ああ。いつまでもここにいる理由はないからな」


 世界が朝を迎え、明るくなってきた頃、カルミナとアリシアはオルトスと別れの言葉を交わしていた。


「カルミナ、アリシア。最初はまあ、あんなんだったが……、今日お前たちに出会えて良かった。お前たちに出会わなければ、俺はここで志半ばに朽ち果てていただろう」

 

「それはこっちも同じ気持ち。本当に、ありがとう」


 カルミナとオルトスは互いに拳を突き出して、コツンと軽くぶつける。二人とも、互いに友と出逢えたからか気持ちの良い笑顔だった。


「だが、勝負をなかったことにはできない。次に会った時にはお前に何としても勝つ」

 

「ええ……、それまだやるんだ……」


「当然」

 

「良かったねカルミナ。喧嘩友達ができた」

 

「何を言うんですかアリシア! それじゃまるで私が不良の暴れ馬みたいじゃあないですか!!」

 

 アリシアの言葉を、カルミナは即座に否定する。アリシアはふふっ、と小さく笑ってーー


「分かってるよ。カルミナは不良じゃない」

 

「アリシア…!」(恍惚の表情)

 

「不良じゃなくて()()だもんね」

 

「うわあああああああん!! アリシアが虐めるううう!!!」


 アリシアの言葉のナイフがグサリと刺さり、カルミナは大声を出して泣きわめく。アリシアはカルミナのその反応を見て、さらにクスクス、と愉快そうに笑った。

 オルトスは置いてけぼりの感覚になりながらもーー、


「やっぱ仲良いんだな、お前ら」


 二人のやり取りを見て、生暖かい笑みを浮かべた。カルミナたちはその声に反応して、オルトスの方を向く。


「そうそう! 私たちはこんなにも仲良しなの!! ねっ、アリシア!」

 

「……まあ、ね」

 

「あーん、そうやって顔をそむけるのもかわいいいい♪」

 

「人前で、スリスリしないでよ……。恥ずかしい……」

 

「だってえ~、かわいいんだもん♪」

 

「………もう」

 

「はいはい、夫婦?プレイは二人きりのときにやってくれ」


 オルトスは手をパンパンと叩いて、面倒くさそうに言った。


「そういえば、オルトス」

 

「あん?」


 カルミナが、ふと思い出したようにオルトスに尋ねた。


「あの二人もオルトスと同じ黒豹顔をしていたけど、やっぱり……」

 

「ああ、同郷だよ。俺とあいつら二人だけが生き残った」


 オルトスはカルミナたちに背を向ける。その背中は、かすかに震えていた。


「あいつらは……、生まれた時から一緒にいた幼馴染みなんだ。俺が二つ年上だから、よくあいつらの面倒見ててよ。二人とも、こんな俺に懐いてくれて……」


 オルトスの声が段々と小さくなる。過去を思い出したのか、震えはさらに大きくなる。


「あいつらには、復讐なんてできるほど心が汚れちゃいねえ。良い奴らなんだ……! そんな奴らに、俺は()を背負わせたくない」

 

「オルトス……」

 

「嫌われ者は俺だけでいい。あいつらの両親の仇も、俺が代わりに討つ! だからあいつらにはこの戦いが終わった後、自由に生きさせる」

 

「オルトス、それは! 二人の気持ちは……!」

 

「そんなことも分かってる!! 今は言わないでくれ、カルミナ。俺がいなくなった後、あいつらがどんな顔をするかくらい、俺が一番分かってる」

 

「オルトス……」


 オルトスは、なおもカルミナたちに背を向けたまま、上を見上げる。朝日の光がオルトスの顔にいたく突き刺さった。


「……分かった。今はもう、何も言わない」

 

「カルミナ…」

 

「命を懸けてでも、誰かを守りたい気持ちは私が一番よく分かっているから」

 

「カルミナ……、ありがとう……!」


 ようやくオルトスはカルミナたちの方に顔を向けた。オルトスの目は、朝日に照らされてより黒く、美しい光を帯びていた。


 ~~~~~~~~~~~~


「しっかし、あいつら、いつまで()()()やがる……。お前、本当に何したんだよ……」

 

「い、いや……、頭をガーンと一発……」

 

「ああ、俺にやったヤツか……。はぁ、あいつらもまだまだ軟弱だなあ……」


 オルトスがハァ、と勢いよくため息をつく。頭をポリポリと掻きながらしょうがない、と言ったような顔をしてーー


「そろそろ行く。あいつらも拾わなきゃならないしな」

 

「うん…。私たちも、ハロルドおじさんが探してるだろうし」

 

「それじゃあ、近いうちにまた会えるだろう。その時まで」

 

「うん! またね!!」


 オルトスとカルミナは互いに笑い合う。そして、今度はアリシアに顔を向ける。


「アリシア」

 

「……何?」

 

「死ぬなよ、絶対に」

 

「……うん、あなたもね」

 

「フッ……ああ」


 オルトスは最後にそう笑うと、一瞬にして森の中に消えていった。もう、彼の姿は影も形もない。


「さてと! それじゃあ、ハロルドおじさんのもとに行きますか!」

 

「ハロルドさん、怒ってるかな……」

 

「まあ、仕方ないよそれは……。甘んじて受けよう」

 

「そうだね」

 

「さっ、アリシア」


 カルミナは手を伸ばす。アリシアもそれに応える。

その小さな手は、震えることなくしっかりとカルミナの手を掴んだ。


 ~~~~~~~~~


 ハロルドはある程度こちらまで来ていたらしく、寝ていた場所に戻る前に二人はハロルドと再会した。ハロルドは目に涙を溜めながら、二人を見るなり思い切り抱き寄せた。


「お前らどこに行ってたんだ! 心配させやがって……!」

 

「おじさん、ごめんなさい……」

 

「ごめんなさい……」

 

「とにかく、無事で良かった……! お前らに何かあったら、俺はヘンリー(あいつ)に顔向けできねえ…!」


 ハロルドは二人の頭をわしゃわしゃさせながら、二人が無事であることに安堵した。カルミナたちも、ハロルドが心配してくれたことに申し訳なさを感じながらも、案じてくれたことを嬉しく思った。

 しばらくしてハロルドが落ち着いてから、カルミナは事の次第を彼に説明した。


「なるほど……。神軍(ジーニス)がここまで来ていたか……。となりゃ、一刻も早くサマルカンに向かわないとな」

 

「そうだね、のんびりしている時間はないかな」

 

「そうと決まれば、さっさと行こう。お前らは疲れただろうから、ひとまず馬車の中で休め」

 

「おじさん、ありがとう!」

 

「ありがとう、ハロルドさん…」


 アリシアは申し訳無さそうにハロルドを見つめた。ハロルドは何かを察したのか、アリシアの頭を優しく撫でた。アリシアはハッとなってハロルドを見る。


「アリシア、色々思うことはあるんだろうが俺から言えることは一つだ」

 

「……何?」

 

()()()()()、以上」

 

「……!ハロルドさん…」


 ハロルドはフッ、と軽く笑った後そのまま運転席に向かった。アリシアは今ほどハロルドに撫でられた部分にそっと触れる。

 その場所は、日だまりに照らされた直後のように暖かく、アリシアはこの暖かさにどこか愛おしさを覚えるのだった。


 ~~~~~~~~~


「着いたぞ、起きろお前ら」

 

「ん……、う~ん……」


 ハロルドの声で二人は起こされる。あの後、二人とも馬車の中で気絶するように眠った。もうすでに、日は沈み出していた。


「結構、寝てたんだね……」

 

「うう……、頭が痛い……」

 

「アリシア~、よしよし~」

 

「どさくさに紛れて撫でるなぁ……」


 アリシアは嫌そうに、カルミナの手を振り払う。カルミナは少しショックを受けながらも、馬車から身を乗り出して前方の街を見る。いまだ寝惚け気味のアリシアもカルミナの後に続いた。


「ここが、交易都市サマルカン……」


 前方に見える、巨大な壁に囲まれた街。所々その壁より高い建物が顔を出している。そして、街の入り口である門の外にズラリと並ぶたくさんの人々。その人たちが思い思いにしゃべることで、街の外にも関わらず、お祭り騒ぎのように賑やかだ。


「さあ、お前ら。準備はいいな?」

 

「うん! だよね、アリシア!」

 

「うん…、カルミナ」


 あの出来事を乗り越えられた二人なら、この先もきっと乗り越えられる。

 カルミナとアリシアはその確信を胸に、前方のきらびやかな石造りの街を眺めるのであった。


 ーー第一章 完結ーー


第一章、完結しました!!

この後は閑話を2話挟んだあと、第二章に続きます!

よろしくお願いいたします!

感想・評価、お待ちしております!

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