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耳を凝らすと、『いいんですか藤和さん。センパイはもっと刺激的なものを望んでいるはずです!』とか『え、ちょ、姫宮さん……どうやったらその色になるんですか……』とか不穏なことばかりが聴こえて来た。
「はいセンパイ! お待ちどおさまです♪」
そうして姫宮が差し出したのは、予想通りなんとも禍々しい色をした液体だった。
「ヒナ特製ミックスサイダーです!」
「……俺ふざけるなって言ったよな?」
「分かってますってー。そういうフリだったんですよね?」
「ちげーよ!!」
中身を知るのは恐ろしいので後回しにして、先に藤和が用意したのを見る。
「水……?」
どう見ても無色透明、泡も立っていない水のようだった。
「あ、はい……。姫宮さんの飲んだら絶対にいると思ったので……」
「藤和の圧勝」
「なんでぇ!?」
冗談でなく本気で疑問に思っている姫宮に特製ミックスサイダーは押し付ける。
「むぅ……」
「ちゃんと責任持って飲みなさい」
「……はーい」
しぶしぶながらも、姫宮は捨てようとはせずちゃんと手元に寄せると、恐る恐るストローに口を付けた。
「……あれ? これ意外とイケますよ。え、奇跡……」
「マジ?」
「はい……。自分でもビックリなんですけど……」
「いやいや、あの材料からどうやって」
藤和は製造工程を知るから俺以上に驚いているようだ。
「センパイも飲んでみてくださいよ」
姫宮はゲテモノジュースを差し出してくる。
近くで見るとより一層混沌とした水面が覗き、異臭が鼻腔を刺激した。本当にこれが美味しいのか、一抹どころか五、六抹の不安は残るが、それ以上に好奇心も沸いてくるので、俺はまだ袋から出してなかったストローを差した。
「ほら、一気にずずっと」
そう促されるがまま、俺は勢いよくジュースを啜った。
「おぇぇぇぇぇぇっぇえええ!!!!」
「いやっっふぅぅぅぅ!! 引っ掛かった引っ掛かったー!」
何これ!? 辛い!? 苦い!? 甘い!? え、もう分かんない!! とにかく口の中が得も言われぬ気持ち悪さに包まれる。
吐き出すわけにもいかず気合で飲み込み、口内を洗浄すべく藤和から貰った水を飲…………めなかった。
「ぷはぁぁぁ。……あー、まだ気持ち悪いですね」
「俺の水ぅぅぅ!!」
コップはいつの間にか姫宮の手にあり、既に飲み干されてしまっていた。
俺は慌ててドリンクサーバーに走り、どうにかこうにか平静を取り戻す。




