ユメミスト
夢見がちな、少女のような文章だと言われた。
何故か、その時心の音がした。
私は、夢見がちなのか。この文章は、夢見がちな…存在しないような、文章なのか。きっと傷付けたかった訳じゃないだろう。寧ろ、褒めていたのかもしれない。
実際、私はこの言葉は嬉しかった筈だった。
この前高校生になった、一人の少女。ずっとずっと、待っていた。高校生は、間違いはすれど失敗なんて無くて、どこまでも明るくて暗くて透明な青で、一番綺麗なんだ。本で読むのはいつも綺麗な人ばかりだった。私もそうなりたかった。高校生になるのをずっと。ずっとずっとずっと待っていた。いつか私もなれる。なったらきっと私は変われる。そう思っていた。
周りはどんどん順応していく。周りはどんどん希望を見出す。羽化して、輝いて、綺麗。
一人だけ私はなれなかった。いつまでも幼いままだった。大人になんてなりたくない。そう吐き捨てて、自分の大人らしい醜さに気付いた。周りは皆輝いて、自分を生きていて…私は、一人だった。歪な幼い子供のままだった。そのまま頑固な大人になった。
でも気付いた。皆綺麗。皆進んでく。でも、私の高校生が居ない。私の高校生はどこにも居ない。どこにもどこにもどこにも。私は皆と仲良くなれなくて、一人だけ浮いていて、寂しかった。誰も私なんて気にも留めない。知っていた。でもその高校生が居れば、そんなのどうでもよかった。やらなきゃいけないことがたくさんあって、なりたくないきらいな大人の勉強をした。自由に見えた彼らはルールだらけだった。高校生なんて居なかった。どこにもどこにもどこにもどこにも。涙は出なかった。感情なんて元より消えていた。夢見がちだったのだろう。高校生なんてどこにもいなかった。変われると思っていた。変わると思っていた。このまま大人になると思った。私は夢見がちなのだろう。こんな事さえ夢見がちなのだろう。
泣いてしまいたくなって、下を向いたら自分の汚れた靴が見えた。
こんな事さえ夢見がちだと言われるこの世界に絶望した。それに気付いた私は殺してしまいたかった。ナイフの代わりに手に取ったのはシャーペンだった。明日はテストだから。なんだ、私は明日も生きようとしている。嫌だ、嫌だ。皆が順応していく、大人になる。きっと私は何処にも行けない。子供には嫌われ、大人には疎まれる。私は少女なんだろう。問題の答えを覗き見た。どうして夜を切なくならずに迎えられないんだろう。明日も生きようとしている、ずるをして誤魔化して生きようと。自分がとんでもない化け物なのではないかと思う。夢見がちな少女はきっと、この世界じゃ生きられないんだ。
明日もきっと自分が嫌になる。
あぁ、明日も生きようとしている。
おやすみなさい。