EPISODE1 紫炎覚醒編 その9
その9です。その9からはこの作品のある意味でラスボス的な奴が現れます。
何か臭いがした!… 、それにつられる様に藍田 縁は目を覚ました… 。
目が覚め上体を起こした瞬間、縁は上半身と右太ももに微かな痛みを感じた!… 。
縁は服を脱がされ上半身は包帯でグルグルに巻にされていた!… 。
縁は台所の方を見た。… 、助が鼻歌を口ずさみながら鍋をかき回していた!… 。
テーブルを見るとアイダ・エンが椅子に腰掛け、タブレット端末の様な機会を触っていた!… 、大きさは丁度A4サイズの用紙ぐらいだった… 。
「起きたか。」アイダ・エンは縁に気づくと声をかけて手招きをした!… 。
縁は立ち上がるも右太ももの痛みで少し足元がふらついたが、それでもテーブルに向かって進んだ。
椅子に座った縁はどっと疲れた感じがした!…
ほんの少し歩いただけなのに右太ももが痛い!… 縁はしきりに右太ももをさすった!… 。
「まだ、痛いか… 。」アイダ・エンはタブレット端末を触りながら縁に尋ねた!… 。
「… 別に大丈夫ですけど… 。」縁はどこか素っ気ない感じて答えた… 。
「… それ何見てるんですか?… 。」アイダ・エンが触っているタブレット端末に興味をしめした縁が椅子から身を乗り出し覗き込んだ!… 。
画面には見た事もない文字が並んでおり、見た感じは漢字とアルファベットをくっ付けた様な形をしていた!… 。
「… 見て分かるのか?… 。」アイダ・エンは縁に何気なく尋ねた… 。
「… いや!、ぜんぜん?… 。」
「… だろうな。」
アイダ・エンはタブレット端末の側面を指でなぞった… 、なぞった瞬間、画面の文字が消え電源がオフになった!… 。
「… 何で消したんですか?。」
「… 飯が出来た、見たいなら食べた後にしてくれ… 。」
縁はテーブルを見た!… 、割烹着を着た助がご飯を三人分配膳していた… 。
小さい身体で台所とテーブルを言ったり来たりと忙しそうに動いていた!… 。
「… 手伝いましょか?… 。」縁は忙しそうに配膳作業をする助を見かねて椅子から立ち上がり尋ねた… 。
「… いや、いい… 自分のペースがあるからその気持ちだけ受け取っとくは… 。」
「… そうですか。」縁は静かに椅子に座り直した… 。
助は無駄に長い尻尾を使い、物を巻き付けてながら取ったり、尻尾の先端に汁物を乗せたお盆をバランスよくテーブルまで運んだりしていた!… 。
三人分全ての配膳が完了すると助は着ていた割烹着を綺麗にたたんで椅子の背もたれにかけ、席に着いた!… 。
しかし、椅子の高さが合っておらず、助の身体はテーブルの下に隠れてしまっている!… 。
「… もう少し足の高い椅子ないんですか?。」
縁はアイダ・エンの方を見て尋ねた!… 、すると、助が座った席から急に機械音がした!… 。
機械音がした瞬間、徐々に助の身体がテーブルの下から上がってきた!… 、何だと思った縁はテーブルの下を覗き込むと、助が座った椅子の足が自動で伸びていた!… 。
助が丁度、縁やアイダ・エンと同じ目線の高さまで上がってくると、アイダ・エンは待っていましたと言わんばかりに手を合わせ、大きい声でいただきますを言って食べ始めた!… 。
助もアイダ・エンが食べ始めると手を合わせいただきますを言ってから器用に箸を使い食べ始めた。
そんな二人にあけっにとられながら縁も出された食事を食べ始めた!… 。
縁が食べ始めるとアイダ・エンは何故か箸を置いて縁を睨みつける様な表情をした!… 。
「… 何ですか?… 。」いきなりアイダ・エンに睨みつけられた縁は不安の表情をした!… 。
「… 藍田君、君… 、ちゃんと手を合わして、いただきますと言ってから食べなかったぞ!… 。」
「… あっ!… すみません、そうでした!… 。」縁はアイダ・エンに指摘されると箸を置き、手を合わせて小さくいただきますを言ってから再度食べ始めた… !。
「… 命をいただいているんだ!、形式的とは言えそう言う事はちゃんとしよう!… 。」
「… はい。」縁は小さくうなずき返事をした… 。
縁はまるでマナーのなっていない子供が父親に叱られる様な、複雑で恥ずかしい気持ちになった!… 。
【1】
青白い光が中央に一本の巨大な柱の様にそびえ立つ、てとてつもなく広い部屋にセレハとヴァイサーチェルはいた!… 。
光の柱はまるで広場にありそうな立派な作りをした噴水状の形をしており、そこから光の筋が一直線に放出されていた!… 。
その光の前に車椅子に固定されたセレハとヴァイサーチェルが立っている!… 。
彼女達がいるこの広い部屋には巨大な光の筋を出す噴水しか設置されておらず、壁にも床にも何か装飾や塗装もなく、無機質な灰色で上下左右覆われた面白味のない部屋だった… 。
!!!、さっきまで青白かった光の柱が急に青紫に変わった!… 。
青紫に変わった光の柱が中央から爆発する瞬間を、スーローモーションで見せられているかの様に徐々に球体に膨らみ、そして、光の玉は炎の様に揺らめき始め完全に火球になる!… 、すると、今度はまるで人の顔の様に変形して行った!… 。
さっきまで巨大な光の柱だったものは完全に、巨大な炎の塊で出来た人の顔になっている!… 。
その顔は目深いフードを被り、素顔はよく確認できなかった!… 。
ヴァイサーチェルは光の柱が巨大な炎で出来た人の顔になるとその場で膝ま付き、こうべを垂れた!… 。
車椅子に乗せられているセレハは、相変わらず死んだ様な顔でうなだれている… 。
炎で出来た巨大顔がセレハの方を見た!… 。
「… 上手く行ったんだな。」
「… はい。」
炎で出来た巨大な顔はヴァイサーチェルに話しかけた!… 、しかし、その声はまるでボイスチェンジャーでも使っているかの様に低く太い声をしていた!… 。
「… まさか本当にするとは思わなかった!… 、バカなのか君は?… 。」
「… 私には必要な事だったんです!。」
「… だからと言って、死ねほど憎い女と身体を入れ替える何て!… 、バカと呼ばずして、何というのだ!… 。」その発言にヴァイサーチェルは口元を歪ませた!… 。
炎の顔はヴァイサーチェルをどこか、からかう様な感じで喋りかけていた!… 。
「… 別に何とも!… 元々の身体も好きではありませんでしたから… 、変わった所でさほど支障はありません… 。」
平然を装い喋るヴァイサーチェルだったが、微かに身体が震えている!… 、その震えは恐怖からくるものより、キレるのを必死で我慢している人の様に見えた!… 。
「… ヴァイサーチェル… 、私の発言に怒ったか?… 、身体が震えているぞ!… 。」
「… いえ!、そんな事はありません… 。」ヴァイサーチェルは下げていた頭を上げると、出来るだけ無表情に近い顔で答えた!… 。
「…私はいつ君に、勝手に表を上げていいと言った!… 。」
炎の顔は、淡々と抑揚のないトーンで声を発したが、ヴァイサーチェルにはこの一言に、とてつもない恐怖と畏怖を感じ取り、すぐさま頭を下げた!… 。
ヴァイサーチェルは冷や汗が止まらず、顔からも汗が床に滴り落ちていた!… 。
「… 本来、私は君の上官でも指導者でもないのだから、君に命令口調で話すのは間違った行為なのかもしれないが、一応… 、君と私の立場はハッキリさせておいた方が良いと思ったんだが?… 、よろしいかな⁈ … 。」
炎で出来た巨大な顔は、まるで叱りつけた子供を叱った後で、優しく諭す様な感じでヴァイサーチェルに問いかけた!… 。
ヴァイサーチェルはこの問いかけに… 《はい》と言う当たり前の返事すら恐怖の為返す事が出来ず、ただ震えながら小さくうなずく事しか出来なかった!… 。
「… ヴァイサーチェル… 、君が震えて声も出ないのならそれでもいいのだが… 、私がする質問だけにはうなずく程度の事はしてくれ!… 、よろしいかな⁈ … 。」
ヴァイサーチェルは顔から滝の様に汗を流しながら、小さくうなずいた!… 。
「… 君が藍田セレハと自分の身体を入れ替えたのは、藍田セレハの力を身体ごと奪い、君達の目的を成就する為だった!… 、間違いないかな?… 。」
ヴァイサーチェルは小さくうなずく!… 。
「… そして君達は藍田セレハの身体を奪う為に私に協力を打診した!… 間違いないかな? … 。」
彼女は再び小さくうなずいた!… 、時間が経つごとにヴァイサーチェルは形容しがたい何かが、身体全体にまとわりつき、自分を絞め殺してしまう様な異様な恐怖を感じた!… 。
「… 私は君達の申し出に共感して協力する事を誓った!… 、誓ったが!!!…… 何故?、君達は私との誓いは反故にするのだ……………… 。」
炎の顔が最後の一文を行った時、凄まじい威圧感と恐怖がこの部屋一面に広がる様な感覚をヴァイサーチェルは感じ取った!!!… 。
「… 私達は貴方様との誓いは!!!!!! 。」
ヴァイサーチェルはあまりの恐怖に炎の顔が許可していないのに勝手に表を上げ、言い訳を言おうとした!… 。
その瞬間!… 、炎の顔は顔の真ん中から二つにぱっくり別れ、中から全身を濃い青紫色をしたローブに全身を包まれた人物が飛び出して来た !!!……… 。
炎の顔から飛び出して着た人物はヴァイサーチェルの目の前に降り立った!… 。
その顔は目深いフードを被っており、素顔を確認する事は出来なかったが、先ほどまでヴァイサーチェルに話しかけていた、あの炎で出来た巨大な顔にどことなく雰囲気が似ている様に感じられた!… 。
この青紫色のローブを着た人物を、ヴァイサーチェルは異様に怯え、尻餅をついて後ろにのけぞった!… 。
「… 私がこの場にいないとでも思ったか?。」
その声はあの炎で出来た巨大な顔同様、ボイスチェンジャーを使った様な声で、感情の起伏が感じられなかった!… 。
ローブを着た人物はヴァイサーチェルに話しかけたが、彼女は恐怖で口も開く事が出来ず、ガタガタ震えるだけだった!… 。
青紫色のローブを着た人物は、ヴァイサーチェルの前で膝をかがめた!… 。
「… 君がその身体を手に入れられたは私の協力もあっての事だと思うんだが?… 、どうかね、ヴァイサーチェル!… 。」
目深いフードを被っている為、今この人物がどう言った表情をしているか、側からは分からない⁈ … 、しかし、ヴァイサーチェルだけには彼の見えない表情や自分に向ける感情が分かっている様に見えた!… 。
そして、見えているからこそヴァイサーチェルはさらに怯え… 、慌てふためいた!… 。
青紫色のローブを着た人物が立ち上がった!… 、立ち上がった瞬間!… 、右袖から金色に光る筒状の物を出して横に振った!… 。
振った瞬間!… 、横に何かが飛んだ!!! 。
「… 一応… 、それでとりあえずは許す。胴体さえ残っていれば私は問題ないから… 。」
青紫色のローブを着た人物は右手に紫色に光る杖の様な物を持っていた!… 。
ローブの人物がヴァイサーチェルに話し終わったと同時に、ヴァイサーチェルの叫び声がこの広く光を出す噴水以外何もない部屋に木霊した!!!… 。
ヴァイサーチェルは左腕を押さえた!… 、彼女の左腕は肘から先がなくなり煙を上げていた!… 。
部屋の少し離れた所を見ると、断面が赤く焼きただれているヴァイサーチェルの左腕が転がっていた!!!… 。
「… ヴァイサーチェル… 、痛がってないでささっと私を“強化”しろ!… 、それでなくてはわざわざその身体になった意味がないだろ!… 。」
ヴァイサーチェルは唇を噛み締め、地べた這う様に、残っている右腕をローブの人物に伸ばし、身体に触れた!… 。
ヴァイサーチェルは青紫色のローブの人物に触れ続けだが、特に目に見えて何かが起こる訳でもなかった!… 。
数秒間ほど触れ続けるとヴァイサーチェルは手を離し、即座に切り落とされた左腕を押さえた!… 。
「… もう少し見た目にも分かりやすい変化かと思ったが、こんなものなのだな…… 。」
ローブの人物は自身の身体を見ながら独り言に近い感想を述べた!… 。
青紫色のローブを着た人物は車椅子に固定されているセレハの方に目をやった!… 。
ローブの人物は右手に持っていた紫色に光る杖を縦に振った!… 、すると、光っていた部分が警棒の様にスライドして、手で握っている柄の部分だけになった!… 。
彼の足元では以前ヴァイサーチェルが左腕を押さえて痛みをこらえていた!… 。
青紫色のローブを着た人物はセレハに近づいた!… 、しかし、当のセレハはこんな事があったのにもかかわらず、未だ死んだ魚の様な目をし、全ての事に関心がないと言った感じだった!… 。
青紫色のローブを着た人物がセレハの目の前に立った!… 。
「… お久しぶりですねセレハさん… 。」
この青紫色のローブを着た人物の声を聞いた瞬間… 、この時まで死んだ表情でうつむいていたセレハが生気を取り戻した様に… 、ハッ!、とした表情でローブの人物を見た‼︎ … 。
彼がセレハに発した声は、今までヴァイサーチェルと話す時に出していた、ボイスチェンジャーを使った様な声ではなくちゃんと人の声をしていた!… 。
セレハはやっと正気に戻った顔をしたが同時に… 、戸惑い、そして… 、恐れている様な表情をこの人物に向けた!… 。
青紫色のローブを着た人物が頭に被っていたフードを脱いだ!… 。
肩までかかる縮毛気味の黒い長髪に角ばった顔、そして… セレハからして見れば今一番会いたくてたまらない人物!… 、しかし、違う!、こいつ違う!、セレハの顔はそう言っている様に見えた!… 。
「… 藍田 縁の方じゃなくてすまないな!。」
ローブを着た人物がセレハに謝罪を述べ、軽く頭を下げた!… 、しかしその表情は笑顔でどこか楽しそうであった!… 。
セレハは、この青紫色のローブに身を包み、ヴァイサーチェルでさえ怯え畏怖する謎の人物の名を静かに発した!… 。
「… 《間 炎》!!!… 。」
セレハの目の前には彼女の息子!… 、藍田 縁と同じ顔をした男が立っていた!… 。
「… マスター 炎!!!… 。」ヴァイサーチェルがいきなり彼の名を叫んだ!… 。
「… 私は今セレハさんと喋っている!… 、割り込むな!!!。」
間 炎はヴァイサーチェルの方を一切振り向かなかった!… 。しかし、その背中からはとても人が人に向けてはいけない殺気を放っていた!!
!… 。
ヴァイサーチェルは間 炎が出す殺気に怖気付きながらも、もう一度話し始めた!… 。
「… マスター 炎、私達は貴方様との誓いは反故にしていません!… 。マスター 炎の言う通り、あの星も破壊しました!。私の身体に入れ替わったセレハも連れて来ました!。貴方との約束は全て守って!!!…… 。」
「… 藍田 縁を取り逃がした!… 。」間 炎はヴァイサーチェルに冷淡な口調で答えた!… 。
「… ア、アイダ エン!!!… あれは私達や貴方様ですら予想し得なかった事で!!!… 。」
「… アイダ エンの方じゃない!… 彼女の“夫”…いや!… 、今は“彼女の息子になったのか”!… 。そちらの方の藍田 縁だ、知らないフリをするなヴァイサーチェル!… 。」
間 炎がそれを言った瞬間… 、ヴァイサーチェルは黙り込み、一筋の涙を流した!… 。
その顔はまるで自分の人生が今まさに終わろうとする様な表情だった!… 。
「… まぁーいい… 、ヴァイサーチェル!… 君が、いや!… 、君達か?、君達が私の事を嫌っているのはよく理解している!。藍田 縁を見つけても私に教えたくないと言う気持ちはよく分かる!… 。どうせ君達の事だ、藍田 縁を使って私への対抗馬にでもと考えたのだろうが!… 少し読みが甘かったな!… 。」
ヴァイサーチェルは何も言い返さなかった… 。彼女はもう… 、右腕を切り落とされた痛みで騒ぐ事は無かった!… 。
彼女は表面的な人体の痛み以上に… 、内面的な精神の痛みの方が勝っていた!… 。
間 炎は最早生きる気力を失いかけているヴァイサーチェルに唐突に近づいた!… 、間 炎はヴァイサーチェルを見るなり呆れた様子を見せた!… 。
「… ヴァイサーチェル… 、君はいつまでそこにいるのだ!… 、様はすんだ!、ささっと自分の持ち場にでも戻ってろ… 。目障りだ!!! 。」
「… 私を処罰しないのですか?…… 。」ヴァイサーチェルは顔を上げずに答えた!… 。
「… 処罰ならもうした… 。私がその気なら君は左腕だけではなく全部無くしていたさ!… 。」
間 炎はヴァイサーチェルを冷淡な瞳で見据えていた!… 。その瞳からは一欠片もヴァイサーチェルに向ける感情が感じられない様に見えた!… 。
「… ヴァイサーチェル… 君達が私の知らないところで何をしようとも構わないし、私にはどちらにしろどうでもいい事なのだが!… 、藍田 縁絡みの事で私に隠したり、嘘をついたりする事はしない方がいい… 。でなければ今度は本気で潰す!!!… 。ちなみだが、何を潰すのかわざわざ言わなくても君にはわかるよな!… ヴァイサーチェル………… 。」
間 炎が最後の一言を発した時!… 、今まで以上の殺気と恐怖を感じ、焦燥感で意識を失いかけていたヴァイサーチェルは、声を上げて後ろにのけぞった!!!!… 。
「… よく、のけぞる女だ。」間 炎はヴァイサーチェルを見ながらバカにした様な言い方をした!… 。
「… あなた達何をしたの!!!… 。」 突然セレハが喋り、その場の空気が固まった!… 。
間 炎はセレハの方を向くとヴァイサーチェルに見せる様な冷淡でいて、そして… 、どこか侮蔑も含んだかの様な表情ではなく… 、穏やかで優しい笑顔を彼女に向けた!… 。
「… 気持ち悪いから止めてその顔!、貴方に笑顔で見られても嬉しくない!… 。」
「… まぁ、君ならそう言うだろうな!… 、しかし、今日ぐらいいじゃないか!、何せ20年ぶりの再会だ… 、私だって気分が高揚するさ‼︎ … 。」
「… 貴方が会いたかった私は今そこで床に這いつくばってるでしょ!!!… 。」セレハは視線をヴァイサーチェルに向けた!… 。
「… 中身が違う!… 。それでは意味がない。私が会いたかったのは、君その者であって、身体の方じゃない!… 。」
「… 私がヴァイサーチェルと身体を入れ替えられたのは、貴方のせいでしょ!!!… 。」セレハは間 炎にまくし立てる様に言い放った!… 。
それを聞いた瞬間… 、間 炎は一瞬呆気に取られた顔をしたが、直ぐにセレハの言った事を理解したのか?、急に口を押さえて笑をこらえる素振りを見せた!… 。
「… 何が可笑しいの⁈ … 。」
「… いや〜だって君は、何か大きな勘違いをしている様だから… 、つい!……… 。」
「… 大きな勘違いって⁈ 、全部貴方が指示した事でしょ?…… 。」
「… 私がヴァイサーチェル達に指示したのは君の確保と後、あれだ!… 、地球の破壊だけだ!… 、ヴァイサーチェルが君の身体を奪ったのは彼女の意思であり、方法を教えたのも私ではない!… 、まぁー 、何をするかは聞かされていたからある程度の援助はしたが…… 。」
「… 方法を教えてないって⁈ … 、貴方以外誰があんな“物”持ってるって言うの?…… 。」
セレハは眉間にシワを寄せ、間 炎の言った事を全く信じていない様子だった!… 。
「… セレハさん、君は地球が破壊されたと聞いてもその事については何も言及しないんだな!… 。」
「… えっ!、それは…… 。」セレハは渋った表情をした!… 。
「… まぁー 別にそれはいいか!… 、セレハさんにとっては藍田 縁の命が優先であり、地球がなくなろうがどうでもいい事なのだろうな!… 無くしたのなら無くしたで、他を見つければいいだけの事なんだから!!!… 。」
「… そんな事!… 、ない。」セレハは否定はしたが、その声からはあまり自信は感じられなかった!… 。
「… 別に否定しなくてもいい!… 、それが君のいい所であり、君の根底にある強さそのものだと私は思っている‼︎ … 。」
セレハは間 炎の発言に黙ってしまった… 。
「… 君もヴァイサーチェルと一緒で、黙りかい⁈ …… 。」
間 炎は、ヴァイサーチェルの方を見た!… 。ヴァイサーチェルは今度は何だと!、視線を向けられた瞬間… 、引きつった顔をした!… 。
「… ヴァイサーチェル… 、お前、セレハさんの身体を奪ったのなら… 、彼女が元々持ってた能力以外も手に入れたよな!!!… 。」
「… は、はい!。」
「… 教えてやるよ、お前に… 。」
「… 何をですか⁈ … 。」
「… 何をって!… 、決まっているだろう…
“紫炎”だ!… 。紫炎の使い方を教えてやる!。だから!、今度は必ず藍田 縁を逃すな!!!… 絶対にだ!… 。」
「… どこにいるか解りませ⁈ … 。」ヴァイサーチェルは震えた声で尋ねた!… 。
「… 心配するな、いずれ早い段階で居場所は分かる。確実にな!… 。あのアイダ エンだってそれは解った上で藍田 縁と一緒に行動している! …… 。」
「… どうして解るのですか?… 。」
「… どうして⁈ … そんなものは決まっている! …… 、紫炎があるからさ‼︎ 。アイダ エンは必ず藍田 縁に紫炎を与える!… 。その時が奴らを見つけ出す最大の好機だ!!!… 。」
今まで感情をどこか押さえながら喋っていた間 炎は、ここに来て感情を爆破させ!… 、声高らかに恍惚な笑みで、ヴァイサーチェルに説明していた!!!… 。
‼︎ …… それは突然だった‼︎ …… 。さっきまで饒舌に話していた間 炎が、胸を押さえ片膝をついた!… 。
「… 長くいすぎた!… 。」彼は他人に聞こえるか聞こえないかほどの独り言をつぶやくと、片膝を上げ、フラついた足取りでセレハの座る車椅子まで駆け寄った‼︎ …… 。
「… セレハさん、残念だが君との会話は今日はここまでの様だ!… 、すまない!… 。」
「… お前となんかこれ以上口何て聞きたくない!… 。」
「… お前か‼︎ … 昔の口調に戻って来たな!… 。」セレハを見る間 炎は何故か?、憂いを帯びた瞳で彼女を見据えていた⁈ … 。
「… ヴァイサーチェル!… 。」間 炎は突然ヴァイサーチェルの名を叫ぶと、彼女の方に振り返った!… 。
「はい…。」ヴァイサーチェルは力無い返事で返した!… 。
「… 私は今日はもう退がる。お前は修行に備えてその取れた腕を何とかしとおけ!… 、解ったな!… 。」
「… あ、あの!…マスター 炎!… 。」ヴァイサーチェルはまるで死を覚悟したかの様な顔で! 、間 炎に話しかけた!… 。
「… 何だ!、ヴァイサーチェル!… 。」
「… 私以外も処罰するなら… 、それだけはご容赦ください!… 。今回の件… 、全て私の独断に近い事!、他の者達には一切関わりの無い事です!!!… 、だから…… 。」
「… その者達はお前の計画を知った上で協力したのなら、それは同罪ではないかね?…… 。」
「そ、それは‼︎ …… 。」ヴァイサーチェルは苦虫を噛んだ様な顔で間 炎を見つめた!… 。すると、間 炎はクスッと彼女の顔を見て笑った!… 。
「… 今のは冗談だ!… 。なぁ、ヴァイサーチェル!、お前は何か誤解している様だが、私は腹が立ったからと言って、手当たり次第に協力者を殺す様な残忍性は持ち合わせていない!… 。私に藍田 縁の事を故意に報告しなかったのは、お前だと解っているなら、処罰するのは当事者であるヴァイサーチェル!、お前一人で十分だろ!… 。それにだ!… 、いくら私でも処罰を下すと言って君達全員の相手をするのは、さすがに骨が折れる!!!… 。」
ヴァイサーチェルはこの発言にホッとした表情で、肩を撫で下ろしたが…「… まぁ、だからと言ってお前ら全員に負ける気は一切しないがな…… 。」
最後に間 炎が放った一言は冷淡な口調ではあったが、とてつも無い殺気を纏い… 、ヴァイサーチェルの中でくすぶっていた間 炎への恐怖心が再び燃え上がった!!!… 。
「… ヴァイサーチェル!… 腕を治したら出来るだけ直ぐに私の元に来い。腕一本ぐらいなら早いだろ。いいな!… 。それと、部隊の編成は変わらずお前がやれ!… 。私はそれには口を出さない!… 。」
「… 良いのですか?… 。」
「… 私は興味があるのは藍田 縁の事だけだ!。それ以外はどうでもよい!… 、それにだ!、私ができる事など、藍田 縁絡み、しいては紫炎に関する事のみだ!… 、部隊の編成や指示など、私には出来ない!… 。」
「… 私は一度、貴方様を裏切りかけたのですよ!… 、それでも引き続き私が………… 」
「… 裏切った??、可笑しな事を言うな⁈ … 。
私はお前が私の事を裏切ったなど微塵も思っていないよ!… 。私はなヴァイサーチェル… 、お前の能力や行動原理は理解しないし、どうでもいいと思っているが、お前の人間性だけは素直に尊敬している!… 。大勢の者を指示し導く事など私には到底でき無い事だからな… 。そう言う意味ではお前は私以上に有能だよ。」
「… 私より優秀な者は沢山います!… 。私はそんな彼らの力を借りてるだけに過ぎません!… 。」
「… そんな優秀な者達がこぞってお前に力を貸すという事は、ヴァイサーチェル… 、お前が有能だからだ!。力や意思でついてくる者などたかが知れている!… 。最後に人を動かすのは人間力!… 、すなわち心だと思うがな… 。
まぁ、恐怖でお前を縛りつけている私が言うなと言う話だかな… 。」
間 炎はヴァイサーチェルの方を見て、クスッと笑った!… 。
間 炎に対し、ずっと怯えていたヴァイサーチェルはここに来て初めて笑顔を見せた!… 。
その顔はまるで、良い事をして親から褒められて喜ぶ、子供の様な無邪気な笑みだった!… 。
ヴァイサーチェルは腕を押さえながら立ち上がった!… 。だが、その顔は最早、痛みなど感じていないと言った表情で… 、この部屋に来る前の自信と決意に満ちたヴァイサーチェルに戻っていた!… 。
「… ヴァイサーチェル!… 、もう傷は痛く無いだろ!… 。」
「… 少し痛いです… 。」
「… お前の中の紫炎を完全に掌握出来れば、傷の痛みなど完全に消える… 。それまでは我慢しろ!… 。」
「… 我慢は得意です。」ヴァイサーチェルは自慢気に答えた… 。
「… そうか。」
「… マスター 炎!… 。」
「… 何だ。」
「… 貴方様に対し、不貞な事を考えてしまって、本当に申し訳ありませんでした… 。」
ヴァイサーチェルは深々と間 炎に頭を下げた… 。
「… 何を持って不貞とするかは解らないが、別に私に対して尊敬や感謝は不要だ!… 。藍田 縁の事さえちゃんとしてくれればそれでいい。………… 、ヴァイサーチェル、その… 、すまなかったな!。お前に偉そうな口を聞いて!… 、私は藍田 縁の事で冷静さをかけていたよ。すまない… 。」
「… そんな事。」ヴァイサーチェルは自分に謝って来た間 炎に、戸惑ってあたふたしてしまった!… 。
「… そんな事はあるさ!… 。私はダメな人間さ… 、腹が立ったぐらいで、君の大事な右腕を切り落とす様なクズだ!。」間 炎は自身が切り落としたヴァイサーチェルの腕を優しく撫でた… 。
‼︎ …… 、間 炎は、突然ヴァイサーチェルに抱きついた!!! 。間 炎は彼女に抱きつくと今までとは違い、どこか甘ったるい声で耳元で囁く様に話しかける!… 。
「… だかなヴァイサーチェル!… 、それでも私には君達が必要なのだ!… 。君達は私の力などなくても成すべき事を成すだけの力があるが、私には無い!… 。無いのだよヴァイサーチェル!… 。だから、私を見捨てないでくれ“ヴァイサーチェルさん”… 。君は私の希望なのだよ!…
。」
間 炎はヴァイサーチェルに抱きつき話している間じゅう…ずっと、彼女の後ろ髪を弄る様にゆっくりとした手つきでかき続けた‼︎ … 。
「… ヴァイサーチェル!… 、話が長くなったね
… 。すまない!… 。早く君の腕を治療しなくてはいけないのに…… 。」
そう言うと、ヴァイサーチェルに抱きついていた間 炎は彼女の身体を離すと… 、そっと、ヴァイサーチェルの右手に手を置き、まるで貴族の令嬢を舞踏会に続く会場までエスコートする紳士の様に、部屋の出口までヴァイサーチェルを誘った!… 。
出口まで近くと独りでにドアが開き、この部屋に来る前に、ヴァイサーチェルとセレハが進んで来た天井が異様に高く、暗い、長い廊下が現れた… 。
間 炎はヴァイサーチェルの手を離すと、優しい顔付きで彼女に微笑みかけだが、直ぐに暗い顔付きになった!… 。
「 … ヴァイサーチェルすまない。私は思い出した事があって、もう少しだけセレハさんと話さなければいけなくなった!… 。すまないがここから先は君一人で帰ってくれないか?… 。嫌なら誰か呼ぶが?…… 。」
「… いえ!… 、そんな事!、一人で平気です。貴方様の手を煩わせる様な事はしません!… 。」
「… そうか。」
「… では、マスター炎… 腕を治療次第!… 、貴方様の元に駆けつけます。私も早くこの力を完全に掌握し、私と私達が成すべき事をいち早く成す為に…… 。」
ヴァイサーチェルは間 炎に話し終わると頭を下げ、後ろを振り返り、廊下に向かって歩き出した… 。
「… ヴァイサーチェル!… 。」突然間 炎がヴァイサーチェルの名を叫び、彼女を呼び止めた‼︎ … 。
ヴァイサーチェルは何事だと思い、間 炎の方を振り返った!!!… 。
「… ヴァイサーチェル!… 。君に絶対に言わなければいけない事が一つあった!… 。私が君の右腕を切り落としたのは何も腹が立っただけが理由では無い!… 。今、君の身体はセレハさんのものだ!、そして元の君の身体は今セレハさんが使っている… 。例え今の君を傷つけても君の本来の身体は傷つかない。セレハさんが使っているからな‼︎ … 。だから私は躊躇なく君の腕を切り落とした!… 。だから‼︎ 、これだけは解って欲しい。もし本来のヴァイサーチェル!、 君の身体だったなら、私は君を絶対に傷つけたりはしない… 。言い訳がましいのは重々解っているが… 、それだけは信じてくれ… 。」
「… 解りました。」ヴァイサーチェルは一声それだけ言うともう一度間 炎に頭を下げ、廊下を歩き出した… 。
ヴァイサーチェルがある程度の距離まで進むとドアが閉まり出し、ヴァイサーチェルの姿は、ドアの隙間分しか見えなくなった… 。
「… 貴方って最低な人ね!… 。」間 炎の後ろで声がした!… 。喋ったのはセレハで、彼女は間 炎に対して、明らさまな嫌悪感を示している様だった!… 。
ガッシャンと!、ドアが完全に閉まる音がした!… 。間 炎はドアが閉まりきったのを確認すと、セレハの方を向いた。
「… 最低と言わず、最良と言って欲しいかな… 。」
「… 最良⁈ … あんな嘘だけ並べて相手を信用させる様な真似が最良だとでも言うの??…… 。」
「… 嘘!… 、私は嘘など一声も吐いていない!。実際ヴァイサーチェルは上に立つ者の資質があり、仲間を思いやる気持ちもある。私やセレハさんとは違ってね! … 。」
「… 皮肉ね。貴方はヴァイサーチェルをそんな風に評価してるけど、当のヴァイサーチェルは貴方に怯え、恐怖で貴方に忠誠を誓う形になっているは!… 。」
「… そうなる様に演技をしたからな!… 。」
「… はっ?。演技⁈ … 。」
「… 最初にこの部屋でヴァイサーチェルに姿を見せた時、私は怒っている風を装い、彼女の腕を切り落として、ヴァイサーチェルにきつく当たった!!!… 。ここまでが演技でその後からは私が彼女に抱いている本当の評価だ!… 。」
「… たかが演技の為に腕を切り落としたの?!!!… 。」セレハは悲痛な顔で叫んだ!… 。
「… ヴァイサーチェルにも言ったが、彼女の今の身体はセレハさん… 、君の身体だ!… 。ヴァイサーチェルのでは無い!… 。だから私も何の罪悪感も無く左腕を切り落とした!… 。まぁ、彼女が痛みで悶えていた時は心が痛んだが、私もそこは自分を押し殺して鬼になったよ!!!… 。」
「… 何でそんな‼︎ … 。」
「… あぁ、それは彼女の中で私への“位”をまだ、維持して置きたいからだ!… 。」
「… 何を言っているの⁈ …… 。」セレハは眉間にシワを寄せ、間 炎を凝視した!… 。
「… 何をか…… 、まぁー そう言う顔になるのも無理は無いか!… 。ヴァイサーチェルは私の持つ力… 、紫炎を恐れ今まで言う事を聞いて来た… !。
しかし、彼女は私と同じ力を手に入れた!。いずれ彼女は私よりも強くなり、私への恐怖や畏怖は消え、私を倒しに来るかも知れない!!! …… 。」
間 炎は腕を後ろに回し、セレハの座る車椅子の周りを、グルグル歩き出した… 。
「だが、私にはまだやるべき事がある! 。それはヴァイサーチェル達の力無くしては出来ない!… 。私はヴァイサーチェルの様に、人の心を惹きつける能力は持ち合わせてはいないからな!… 。だから、彼女がまだ私に恐れを抱いている内に、もう一度私への恐れを植え付け、
恐怖でヴァイサーチェルは支配するしか私の取れる選択肢は無いからな!… 。」
「… だったら、貴方がヴァイサーチェルに見せた態度は何なの?… 。恐怖で相手を支配するなら謝ったり、優しくするのは矛盾した行為じゃない⁈ …… 。」
車椅子の周りをグルグル回っていた間 炎がセレハの目の前で止まり、彼女顔を凝視した!… 。
「… それは違うぞセレハさん!… 。全てを恐怖で支配するのでは無く、ほんの少しだけ恐れを残し、後は優しく接する!… 。自分に対して全くの恐怖が無いのも問題だが、恐怖だけで縛りつければかならずどこかにほころびが生じるからな!… 。適度に怖がらせて置くのが丁度いいのだよ!… 。セレハさん!… 。」
「… ずいぶんベラベラと喋るのね… 。それを私がヴァイサーチェルに言ったらどうなるとか、考え無いのね⁈ …… 。」
「… 話してもらっても別に構わない… 。隠す様な事でも無いからな… 。そもそも、ヴァイサーチェルだって私の真意は気付いている。それでもヴァイサーチェルが私の命令を聞くのは、彼女の中に私に対する潜在的な恐怖がまだ残っているからだ!… 。それが無くなればヴァイサーチェルは私など、どうとでもするさ‼︎ …… 。」
間 炎は腰をかがめ、車椅子に乗るセレハと同じ目線の高さに顔を近づけた! … 。
「… なに!… 。」 顔を近づけられたセレハは、思わず声を上げ、しかめっ面で間 炎から顔をそむけた!… 。
「… いや、もうそろそろ戻ろうと思ってな… 、最後に挨拶でもして置こうと思って!… 。」
「… 貴方はヴァイサーチェルがいた時は、もう戻るって言ったじゃ無い!… 。だったら早く!… 私の前から消えて!!!… 。」セレハは大声で怒鳴った!… 。
セレハに怒鳴られた間 炎は何故か彼女から離れようとはせず… 、まるで水槽の中いる魚を観察する様に、マジマジと彼女を凝視した!… 。
「… だから何なの!… 、貴方がもう、戻るって言ったのよ!… 、これ以上私に何があるの
!!!… 。」セレハは少し涙目で、間 炎に訴えかけた!… 。
「… 君は運が良いと思ってな…… 。」
「… 運?、ふっ…… 、貴方バカなの?。これのどこが運が良いの?!!!… 。私は自分の身体を取られて、住む星も破壊されて、そして…… 一番傷つけたくなかった人を私自身の身体で傷つけたのよ!!!… 、それのどこに運が⁈ … 。」
セレハはとうとう両目から溢れるばかりの涙を流した。しかし、両手が車椅子に固定されている為、涙を拭う事が出来なかった… 。
「… いいや、君はとても運がいい… 。運が良過ぎるぐらいだ!… 。」セレハは間 炎この発言に、目一杯の憎しみを込めて、彼を睨みつけた!… 。
「… セレハさん、そんな顔をするな!… 。君が運がいいのは間違いの無い事実なのだから… 。」
「… どこがよ!!!… 。」セレハはここに来て一番の怒鳴り声を上げた!!!…… 。
セレハの怒鳴り声は部屋全体を震わし、至る所から反響して空間を覆っている様だった!… 。
セレハが怒鳴り声を上げた時、間 炎はかがんでいた腰を上げ、セレハの前に手をかざした!… 。
‼︎ ‼︎ ‼︎ …… セレハは焦った!!!… 。しかし、頭でどうするか考える前に、異変が起きた!… 。
息が出来ない!!!… 。吸っているのに吸えない!!!… 。
人間は空気を吸えないと条件反射的に喉を押さえるが、手を車椅子に固定されているセレハはそれすら出来ず… 、ただただ、歯を食いしばり!… 、息が吸えるのを“待つ”しかなかった!… 。
「… セレハさん!、すまないね!… 。これ以上怒鳴られるのはイヤだから、君の口元周りの空気を少しずつ燃やしている!… 。私の話しが終わるまで少しの間… 、我慢してくれ!… 。」
間 炎はセレハに謝罪の言葉をかけたが、セレハは呼吸をする事で必死で、彼の言葉など耳に届いていない素振りだった‼︎ … 。
「… セレハさん!… 、苦しいと思うが、そのまま聞け!… 。さっきの話しの続きだが、君は運がやっぱりいいよ!… 。良過ぎる!… 。
もし、君がヴァイサーチェルの身体では無く、君の本来の身体のままだったら、私はセレハ!… 、お前を今頃… 、胴体だけ残してバラバラにしていたよ‼︎ … 。私はヴァイサーチェルが今… 、君の身体を使っているから躊躇無く腕を切り落としが、逆に言えばセレハさん… 、私が君を傷つけないのはその身体がヴァイサーチェルの物だからだ!!!… 。だから君は運がいい… 。そのせいで、私は君は傷つけられないのだから!… 。」
「… 何で⁈ …… 。」セレハは息も絶え絶えと言った感じで、間 炎に尋ねた!… 。
「… 何で?… そんなものは決まっている⁈ … 。
私はヴァイサーチェル以上にセレハさん!、君とそして… 、藍田 縁が大嫌いだからだ!!!… 。」
今まではどこか冷淡ではあるが、飄々さも持ち合わせた喋り方でセレハに話しかけていた間 炎だったが… 、ここに来て急に!、明らさまな敵意と憎悪の籠った喋り方に変わった!!! … 。
「… セレハ!、その身体に感謝するんだな。この程度で済んでいるのはその身体のお陰だ!… 。そうじゃなければ今頃… 、私は怒りの全てをお前にぶちまけていた!… 。だから、覚えておけ!セレハ!… 。必ず藍田 縁を見つけ出し、お前が一番望まないものを藍田 縁を使って見せてやる!… 。それまではセレハ!、お前は保護してやる。しかし、その時が来たら藍田 縁共々、ずうずうしく生きていた事を懺悔させてやる!!!… 。」
間 炎はセレハの前で手をかざすのを止めた… 。かざすのを止めた瞬間!、あれ程吸えなかった空気が吸える様になり、セレハの顔にも血の気が戻りつつあった!… 。
それでも数分間… 、低酸素状態にあったセレハは目が虚ろい、今にも意識が飛びそうになっていた!… 。
「… 少し熱くなり過ぎたよ!、セレハさん!… 。すまない!… 。人を今から手配するからそこで待っていてくれ… 、私は君の言う通り、ささっと君の視界から消えるよ!… 。でわ、セレハさん!… 、次は藍田 縁と一緒の時に会おう!… 。」
それはいきなりだった‼︎ … 。セレハに話し終わった間 炎は彼女の見ている前で突然!、姿が消えた!!!… 。
物陰に隠れたなどと言う感じではなく、そこにいた人物が何もない空間に溶ける様に、消え失せた!!!… 。
でも、そんな光景を見てもセレハは驚きはせず、むしろ!… 間 炎が見えなくなってホッとした様な顔つきになり、そのまま首をガクリと下げ、意識が落ちた!… 。
この無駄に広い部屋に、セレハの座る車椅子だけが… 、寂しく残された… 。
ELPISその9読んで頂いた皆様ありがとうございます。
何か分かりにくい設定の敵だなぁ〜と思われた人もいるかとは思いますが、一応この間 炎って言う奴がこのELPISの最終敵なラスボスになります。
補足なのですが、一応私の構想ではこのELPISと言う話しは、EPISODE1〜EPISODE5までが全てで、最終章にあたるEPISODE5の敵が間 炎になるので、このEPISODE1では主人公藍田 縁と間 炎は戦う事はありません。
ネタバレかよ!!!… 。
まぁ〜 しかし、自分で書いておいてなんですが!、主人公もその師匠も敵も同じ名前だと、誰れが誰なのか?… 分かんなくなってきますね!… 。