EPISODE1 紫炎覚醒 編 その8
ELPISその8です。その8ではやっと主人公が修行ぽっい事をやってます。
全身グリスと機械油で汚れた縁とアイダ・エンが、エクス-ガルーダの操縦席に座り放心状態で休息を取っていた!… 。
二人がはめている軍手はグリスでベトベトに汚れ、何かに挟んだのか所々内側から血が滲み出していた!… 。
縁はその汚れた軍手を脱ぐと床に叩きつけ、アイダ・エンの方を睨んだ!… 。
睨まれたアイダ・エンはいつもの飄々とした感じはなく、本当に申し訳なさそうな顔をしている!… 。
「… あんた俺に生きよよとガス漏れ治しに行くとか言っておいて、そのあんたが余計にガス漏れ酷くしてどうすんだよ!… 。」
縁は怒鳴りはしなかったが、その声には静かに燃える怒りの炎が燻っていた!… 。
「… すまん。」謝罪を述べたアイダ・エンだったが、彼は縁の目を見る事が出来ず、引きつった顔で前だけを見ていた!… 。
「… アァァァァァァーーーーーーーーーー 。」
操縦席の向こうから小さく助の怒りにも似た叫び声がした!… 。
「… 助さんめっちゃ怒ってますよ!。」縁は叫び声のした方を振り向きながら、以前として自分の方を見ないアイダ・エンに嫌味も込めて言い放った!… 。
「… 本当にごめんなさい!… 。」アイダ・エンは羽音かと勘違いするほど小さい声で謝った… 。
「… 何で!、穴埋め用のシーリング剤と溶解液間違って持って来るんだよ!… 。」縁は頭を抱えうなだれた!… 。
数時間後、全身真っ黒けに汚れた助が縁とアイダ・エンのいる操縦室に鬼の形相で入って来た!… 。
助は右手にラチェット、左手にスパナを掲げ、今にもその二つを縁とアイダ・エンに投げつけそうな勢いだった!… 。
アイダ・エンはそんな助の姿を見ると静かに席から立ち上がり、彼の前で土下座をした!… 。
助はアイダ・エンの土下座に何を思ったのか?、さらに憤慨し… 持っていた二つの工具を頭に振りかざそうとした!… 。
「… 助さん!… 、怒るのは分かりますが、投げるのはやめましょう!。」
振りかざそうとした瞬間、縁が助の両腕を握りアイダ・エンに叩きつけるのを阻止した!… 。
「… このヤローのせいで!、余計な仕事が増えたんだぞ!… 。しかもこいつ俺を見るなり即、土下座しやがった!… 、このヤロー、土下座をすれば俺が許すとでも思ってる。、その浅はかな根性も気に喰わね!… 。」
「… いや!、助さん… いくら何でもそれはうがった見方すぎです!… 。」
助は次から次へ溢れ出す怒りを止める事が出来ずにいた!… 。
そして、よっぽどアイダ・エンに工具を投げつけたいのか、必死になって縁に掴まれた腕を抜こうと、もがいていた!… 。
そんな怒り心頭の助と、それを止めようと押さえる縁を尻目に、アイダ・エンは、ただ、黙って頭を下げ続けた!… 。
………… 数分後、怒りが何とか治まった助があぐらをかいて座っていた… 。
アイダ・エンはさすがにもう… 、頭は下げてはいなかったが、意気消沈と言った顔で助の前で正座をしていた!… 。
「… お前もう… 当分エクス-ガルーダには触るな!… 。」
「… はい。」
助は頭をボリボリかきながら嘆きを含んだ小言をアイダ・エンに吐き… 、アイダ・エンも助の問いに声は小さいものの、もう二度としませんと言う、決意にも似た返事をした!… 。
そん二人を縁は操縦席に座りながら、大丈夫かこいつら?、と言った表情で眺めていた!… 。
縁はふいに!、後ろを振り返った… 、正面の窓からオレンジ色の光が差し込んでいる!… 。
気づけば窓の外は夕暮れ時だった!… 、辺りの草原は夕日に照らされ黄金色に輝いて見えた… 。
縁は朝からの修行と昼からのメンテ作業で相当疲れていたが、この眩いばかりの光景を見ると溜まったい疲れが少し抜けて行く様な気がした!… 。
しかし、縁が感嘆としてこの風景を眺めている後ろでアイダ・エンは助に未だ小姑の様に小言を吐き続けられていた!……… 。
【1】
長く仄暗い廊下を車椅子に乗ったセレハとそれを押す男性… 、そしてヴァイサーチェルが彼らより一人分早く前を歩いていた!… 。
廊下は天井が異様に高く目視で大体2〜30メートルぐらいはありそうだった!… 。
天井には蛍光灯の様なものは無かったが、床と壁の境に等間隔で足元を照らす長方形のライトだけが備え付けてあった… 。
しかし、ライトの色は白や肌色などの柔らかい光ではなく、血の様の赤色で、この長く暗い廊下と相まって見たものを怖気付かせてしまいそうな雰囲気を醸し出していた!… 。
そんなある種異様な作りの廊下を男女三人が進む、その内セレハだけが車椅子に乗り、後ろから軍服の様な物を来た男性に押されている!… 。
セレハは上下白のTシャツとズボンを履いていた… 、ただ、様子がおかしかったのは!、車椅子に乗るセレハは手足を車椅子に鉄の輪っかで隙間なく固定されており、身動きが取れない状態だった!… 。
しかし、当のセレハは全く動こうとはせず、こうべを垂れ、瞬き一つせず、泣いた後なのか?… 目を大きく腫らして聞こえるか聞こえないかの声でブツブツ何かを言っていた!… 。
前を歩くヴァイサーチェルはくるぶしまでありそうな黒いロングコートを羽織り、左胸辺りには六角形型の装束品を縦に三つ並べていた… 。
ヴァイサーチェルは時折後ろを振り帰りながら車椅子に乗るセレハを逐一見ていた!… 。
そんな事を繰り返しながらしばらくこの長い廊下を進むと、正面に縦横15メートル以上もありそうな巨大な扉が現れた!… 。
扉の前に着くと、セレハの車椅子を押していた軍服の男性は、ヴァイサーチェルに頭を下げ敬礼すると、再び廊下側の方に戻っていった… 。
「… お前のせいで部下に余計な仕事をさせたな… 。」ヴァイサーチェルはセレハの方を向くと、怪訝な顔で嫌味を言った… 。
しかし、ヴァイサーチェルに嫌味を言われてもセレハは何か言い返す訳でもなく、虚ろいだ表情で前だけを見ていた!… 。
そんなセレハをヴァイサーチェルは怪訝を通り越し、侮蔑のこもった表情で睨みつけた!… 。
ヴァイサーチェルがセレハを睨みつけていると、扉の一番上部から赤色の光が放射された… 。
ヴァイサーチェルは放射された光に気づくと、光の筋に向かって歩き出し、その光を自身の眼球に当てた。
彼女の目に数秒間光が当たると光の筋は赤から緑色に変わり、変わった途端光の放射は止まった。
光の放射が止まって数秒後、大きいモーター音の様なものが廊下に響き渡った!… 。
音と共に大きい振動も来ると突如!、ヴァイサーチェルとセレハの正面にある巨大な扉が横に少しずつ開き、扉の奥から光が差し込んだ!… 。
ヴァイサーチェルは扉が開き始めるとセレハの乗る車椅子の後ろに立ち、開き始めた扉に向かって歩き出した… 。
「… これからは私達の為に働いてもらう… 、それがお前の私達に出来る唯一の贖罪だ!… 。」
扉の奥に向かいセレハの車椅子を押すヴァイサーチェルは彼女の耳元で小さく囁いた… 。
【2】
「… うっわー !!!…… 」縁は叫び声を出して大きく尻餅をついた… 、ついたが瞬時に身体を捻り、足元がオボつきながらも上体を起き上がらせた!… 。
縁は剣を構えていた!… 、木刀や模造刀ではなくちゃんと刃が研がれた両刃式の剣だった!… 。
縁の剣を向ける先アイダ・エンがいた!… 、彼も縁と同じ両刃式の剣を持ち、縁に刃先を向けていた!… 。
真剣を持って対峙する彼らはせいぜい150センチぐらいしか離れておらず、一瞬でも先に踏み込めば簡単に懐に入る距離だった!… 。
ただ、アイダ・エンはどこか余裕そうな表情であり、時折剣をバトンの様に回したりして、遊んでいた!… 。
それに対し縁は、ぜぇぜぇ、言いながら息を切らし、両手で握る剣の柄も疲れなのか?… 、離しそうになる時がある!… 。
そんな縁を尻目にアイダ・エンはまた剣をバトンの様に回し遊んでいた!… 。アイダ・エンが剣を回しながら上へ高く上げた… 、アイダ・エンの視線が上を向いた!… 。
その瞬間縁は右足にめーいっぱい力を込めて踏み込み、アイダ・エンにタックルする勢いで突っ込んだ!… 。
縁はアイダ・エンに突っ込みながら考えた!… 、「剣が手元になくてもアイダ・エンの視線がこちらを向いていれば、彼は余裕で攻撃をかわして、殴る蹴るで武器を持っていてもこちらがやられる!… 、だけど視線がわずかでも上を向いている今なら…… !。」
縁は持っていた剣を右方向から左へアイダ・エンの腹めがけて横薙ぎに振った!… 。
しかし、視線が縁の方を向いていないにもかかわらずアイダ・エンは自身から見て左方向から来る剣を左足で高く蹴り上げて左手で縁が持っていた剣を掴んだ!… 。
縁は自分の持っていた剣をアイダ・エンに奪われたが、即座に身体を後ろに引き、右手首辺りから噴霧状にした液体をアイダ・エンの顔にかけた!… 。
顔に液体をかけられたアイダ・エンは苦い顔をして少し後ずさった!… 。
そのわずかな隙に反応した縁は、アイダ・エンが逃げられない様に、彼の左足を思い切り踏みつけ顔面に左ストレートを叩き込もうとした!… 。
しかし、アイダ・エンは縁の左ストレートを難なくかわすと、縁から奪った剣で彼の右太ももを切りつけた… 。
そして、アイダ・エンが最初から手にして、遊びで空中に上げた剣が、丁度縁が右太ももを切りつけられたタイミングでアイダ・エンの手元に戻り、それを右手で掴んだアイダ・エンは縁の身体に縦一直線に刃を降り切りつけた!… 。
身体、右太ももを切りつけた縁は前のめりに地面に倒れ伏し、動かなくなった!… 。
縁は唇を噛み千切る勢いで必死に痛みをこらえていた!…。
身体に切りつけた傷はさほど深くないのかそこまで出血がなかったが、右太ももに切りつけた傷は相当深く、そこから止めどなく血が溢れ出していた!… 。
「… まぁ… 、切られたぐらいで声を上げなくなっただけ少しは進歩したか…… 。」
血を流し、痛みを必死でこらえ倒れ伏す縁を介抱する事もせず、アイダ・エンは淡々とした口調で感想を述べ、見据えた!… 。
アイダ・エンが両手に持つ剣には縁の血が滴り落ちていた… 。
アイダ・エンは手にしていた剣を地面に両方刺すと縁の前にしゃがみ込み彼の耳元で囁く様に話しかけた… 。
「… 藍田君、損傷部分の酷い所に意識を集中しろ!、そうすれば菌糸虫は優先的にその部分を治してくれる… 。」
「… そんなの… とっくにやってますよ!。」縁は唇を噛み締め痛みに震えながらアイダ・エンの問いかけにやや怒り気味で答えた!… 。
縁は痛みで意識を集中することすらままならなかったが、それでも縁はアイダ・エンが言った通り、傷の深い右太ももに持てる全ての意識を向けた!… 。
1分ぐらい経った頃だろうか、右太ももの傷ぐちから青色に光る糸ミミズの様なものが数十匹這い出た!… 。
傷口から現れた光る糸ミミズは損傷箇所を縫う様に進み、次第に切り傷が内部から塞がって行く!… 。
大きく開いた傷口が鉛筆でなぞった線ぐらいの太さになった時、縁は痛みと疲労で完全に意識を失ってしまった!… 。
縁が意識を失ったと同時に右太ももの損傷は切り傷が目立たないぐらいに塞がった。
だが、身体につけられた縦一直線の切り傷はまだ治っておらず、太もも程にないにしても今度はそこから血が流れ出していた… 。
そんな縁に何か声をかける訳でも、介抱する訳でもなく、ただ、見ているだけのアイダ・エンだったが、突然彼の前に手をかざした!… 。
縁の前に手をかざして直ぐ!、倒れ伏す縁の身体が地面から浮いた!… 。
地面から90センチぐらい浮くとアイダ・エンは縁の肩を押しながら彼が浮いた状態のまま歩き出した!… 。
アイダ・エンは宙に浮いた縁を押して数分間歩き続けると、前方にプレハブで出来た小さい小屋が現れた!… 。
アイダ・エンはそのプレハブ小屋まで近づくと扉の前に立った… 。
扉の前に立ったアイダ・エンは扉を三回ノックした。、すると扉が開き割烹着を着た助が出迎えた!… 。
「… そこまで本格的な格好をしなくていいと私はいつも思うのだが?… 。」
割烹着を着ている助にアイダ・エンは少し苦言をていした!。
「バカだな〜 、物事ってーのは、何でも形から入るもんなんだよ!。」
助はそう言うと、その場でくるっと一回転した!… 。
「… 何故、回る?。」
「… えっ!、何となく。」
数分お互い無駄な沈黙が続くと、小屋の奥からやかんが沸騰する音が聞こえた!… 。
その音に気付いた助は慌てて小屋の奥に戻った!。
一人玄関前で置いてきぼりにされたアイダ・エンは何も無かったかの様な顔をし、浮いたままの縁を押して一緒に小屋の中に入って行った… 。
小屋の中に入いると台所で助がやかんから溢れ出したお湯を雑巾で拭いていた… 。
アイダ・エンは羽織っているローブを椅子にかけると、宙に浮いた縁を持ち空中で少しずつ回転させながらあおむけにした… 。
縁は空中であおむけになるとゆっくりと下がって行き、床に身体が着いた!… 。
縁の身体が床に着くのを確認したアイダ・エンは、椅子にかけた自分のローブを縁の身体にかけた… 。
「… お前の古汚いローブかけてやるぐらいなら、新品のシーツぐらい用意しとけよ!。」シンクで雑巾を絞る助が、そんな苦言をアイダ・エンに言った… 。
「… 今持って来るからその間の代わりだ!。」
そう言うとアイダ・エンは玄関脇に立てかけてあった杖を取ると、若干左足を引きづり気味に駆け足で外へと行った!… 。
助はそんなアイダ・エンを窓から眺めながら深い溜め息を吐き、ふいに… 床に寝転がる縁の方を見て、「お前も大変だな!。」とボソッとつぶやいた… 。
その8読んで頂いた皆様ありがとうございます。
ちょとだけ話しが進んだかなぁ〜とは思います。