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EPISODE1 紫炎覚醒 編 その4

その4です。その3が、意味の分から無い例えに謎の用語、性格の悪いジジイに?… 情緒不安定な主人公。

こんなんで続きを見たくなるのかと書いている本人である筆者トマトジュースでさえ時々思う事がありますが、それでも楽しんで頂けるのなら幸いです。


「… 失礼な奴だな。」悲鳴を上げ、腰を抜かした縁の方を見て顔面真っ黄色の生物が、不満を漏らした。


そして、アイダ・エン は、この黄色い生物を見て腰を抜かし、涙目で怯える縁の姿に、必死でローブで口を押さえ、笑いをこらえている様子だった。


「… なぁ!、なぁ!、何!!!…… 。」縁は震えた声で、アイダ・エン の肩に乗るこの黄色生き物を見つめた。


アイダ・エン の肩に乗っていた謎の黄色生き物が彼の肩から降り、二足歩行で縁に近づいた。


自分に近づいて来たその生物に縁は、再び悲鳴を上げてしまった。


その生物は自分を見て怯える縁に、ため息混じりにうつむき、アイダ・エン の方を見た。


「… おい!、エン… こいつ怯え過ぎだろ!。」


「… 仕方がないさ、彼からしたら君は宇宙人見たいなものだからな… 。」


「… 俺からしてみれば、こいつだって宇宙人だぞ!… 。」


「… あぁ、そうだな… 。」


平然を装い喋ろうとするアイダ・エン だったが、やはり笑いがこらえきれないと言った感じだった。


黄色生物が再び縁に近づいた。縁はまた叫びそうになったがそこで不思議な事が起こった。


声が出ない。いや!、出している筈なのに、音が聞こえてこない!。


縁はパニックになり必死に叫んだ。だが、どれだけ叫んでも音が響かない。


そうこうしているうちに、あの顔面真っ黄色の生物が、縁の前方20センチぐらいの距離まで近づいて来た。


縁は腰を抜かしまま逃げようとしたが、急に床がまるでローションでも塗ったかの様にツルツル滑り、進む事はおろか立ち上がる事さえ出来ない状態になっていた。


縁はさらにパニクり必死で逃げようとしたが、いくら足や手を必死に動かしても滑って、その場でばたつくだけで一行に前に進まなかった。


縁がばたついている間に、あの黄色生物は彼の真ん前まで来ており、それを見た縁は心の中で殺される!と思い、うずくまった。


「… なぁ〜 、エン!、こいつ本当にあの

《藍田 縁なのか?。」


「… あぁ、そうだ!、間違いなく彼は、藍田 縁だよ… 。」


黄色生物は疑いの眼差しでアイダ・エンの方を向き、今度は縁の方を向くと恐怖でうずくまる縁に心底情けなさそうな顔を向けた… 。


「… おい!、そこのヘタレ!、こっちを見ろ。」黄色生物は縁に向けて怒鳴った… 。


縁は相手の声だけは聞こえていたのでこの声に反応は出来たが、恐ろしさのあまり聞こえていないフリをした。


自分が呼んでも一行に返答しない事に腹を立てた顔面真っ黄色の生物は、うずくまる縁の身体に登り、顔に覆いかぶさっている右腕を強引に外して自分の方を見させた。


顔面の至近距離であの黄色生物がいる事に、もはや恐怖や嫌悪感を越えて意識そのものがなくなりかけている縁に、黄色生物は寝るなと言わんばかりに、その小さな手で縁の両瞼を掴みめいいっぱいこじ開けた。


縁は飛びかけて意識を瞼をこじ開けたられた事で再び再起し、顔面の目の前にいるこの黄色生物にびびってとうとう漏らしてしまった。


縁の周りに黄色液体が広がって行く… 。


縁が漏らした事に気付いた顔面真っ黄色の生物は、「… うぁっ!、きたっねー!。」と叫び、怪訝な顔で縁を見た。


「… おい!エン… こいつ漏らしてやんのー!… 。」黄色生物は怪訝な顔から人をバカにした様な顔になり、ケタケタ薄ら笑いを浮かべながら、アイダ・エンの方を振り向いた。


「… もうその変にしておけ、何だか可哀想になって来た。」


「… 可哀想って、俺よりお前の方がこいつに対して泣かす様な事してただろ… 。」


「… 私は自分の発言があれなだけで、君の様に見た目で怖がられるタイプとは性質が違う。」


「… お前自分の発言が滅茶苦茶なの気付いてんのかよ!… 。」顔面真っ黄色の生物は、アイダ・エンに向けて呆れた様子で答えた。


「… 自覚してないよりマシだ… 。」


「… お前こいつにも同じセリフ言ってなかったか?… 。」


「… さぁーな、過去の発言などいちいち覚えていない。」


「… 過去って、ほんの数分前にお前が言ってた事だろ。」


「… 数分前だろうが、もはや過去の話だ。私は過去を振り返えらない。」


「… お前がそれを言うか!、一番過去に振り回されてる奴が!… 。」


「… それは今はどうでもいい事だ!、それよりもまず先に彼を起こそう… 。」


「… お前はそうやって直ぐ話をそらしたがる… 。」


黄色生物は小言で嘆いたが、アイダ・エンはその小言を無視するかの様に縁の側まで歩き出した。


縁は相変わらずうずくまりガタガタ震えていた。


そんな縁にアイダ・エンは倒壊寸前のジェンガにでも触れるがの如く、優しく肩に手を置き耳元で囁く様に話しかけた。


「… 藍田君、大丈夫だ、彼は君の味方だ。ある意味私以上にな… 。」


「… えっ!、俺、いつそいつの味方になったの?… 。」顔面真っ黄色の生物は自分で自分を指差し、困惑した表情を見せた。


「… 今は余計なツッコミは入れるなウパールパー君… 。」アイダ・エンはその生物の発言に苦言をていした… 。


「… はぁっ‼︎、テメェー今俺の事なんて言った!… 。」アイダ・エンのこの一言に黄色生物は眉間にシワを寄せ、物凄い剣幕でアイダ・エンを恫喝した。


「… 叫ぶな!、彼が恐がる。」


「… テメェー俺の事ウパールパーって言っただろ!。あれほど言うなって言ったのに!… 。」


「… なぁ、毎回の事なのだが、そんなにウパールパーと言われるのは嫌か?。」


「… 嫌だね!… 。」黄色生物がまくし立てる。


「… 何故だ!、ウパールパーはとても愛嬌があって可愛いいし、それ以前に君はとてもウパールパーに似ているぞ《(すけ)》さん。」


確かにアイダ・エンの言う通り、この黄色生物はウパールパーに似ていた。


強いてウパールパーと違う所と言えば、頭のてっぺんに、ちょうちんアンコンの様な疑似餌があり、二足歩行、五足(いつあし)五本指でアイダ・エンと似た様な服装を身にまとっていた。


そして、この生物の一番目を引く所は、頭からつま先までの身長以上のシッポを持っていた事だった。


縁はこのアイダ・エンが助と呼ぶ顔面真っ黄色の生物を始め見たとき、ビジュアルのインパクトが先に先行し、彼が服を着ている事もこの異様に長い尻尾にすら気付いてはいなかった。


「… なぁ、エン… そもそも何だが… お前が俺に付けたその名前も俺は納得はしていないからな!… 。」


「… どうしてだ!、助さん… 良い名前だと思うがな。… 実際私は何度も君に助けられたからこの(たす)けるの(すけ)を君に付けたのだが… 。」


「… いや、由来だけ聞けば良いんだが、なんて言うかー、なぁ〜、センスがない。」


「… センスがない?、なら君は自分で付けたとしてどの様な名を付けるのだ?… 。」


助は、不敵な笑みを浮かべながらまるでヒーロー番組に出る戦隊の様なポーズを取り、自身の理想とする名を挙げた。


「… 良くぞ聞いてくれた我が友アイダ・エンよ

… これが我が真の真名… その名も、スター・ブライト・ギャラク、………… 。」


「… 藍田君、大丈夫。怖くないか… 。」


「… 最後まで聞けよ‼︎ … 。」助が言った名を最後まで聞かず、アイダ・エンは再び縁を起こそうと耳元で囁いていた。


「… おい!、エン俺を無視するな!。」助はアイダ・エンが自分を無視し始めたので、彼の肩によじ登り強引に彼の気を惹こうとした。


「… 止めろ、かまってちゃん。… 。」アイダ・エンは自分の左肩に登って来た助を右手で掴み、首根っこを持って自分の顔の前にぶら下げた。


「… なぁ、エン、この持ち方止めて。何か猫みたいでヤダ!。」


「… 君がダダをこねるからだろ。」


「… 俺がいつダダをこねったって言うんだよ!。あのなぁ〜 、エン、俺は人の話を聞かないお前に注意を、…… 。」


「… 人!、人ではなく、両生類の間違いでは!…… 。」


「… だ、誰が、両生類だ‼︎ … 。」助は両生類と言われたのが腹が立ったのか、手足をばたつかせエンの顔を殴ろうとしたが、エンは殴られる瞬間腕をめいいっぱい伸ばしていた為、助の攻撃が当たる事はなかった。


「… ひ、卑怯だぞ、エン!。」当たらない分かっていても助はぶら下がった状態のまま、虚しく手足を動かし続けた。


「… もうよしたらどうだ、当たらないと分かっているのだから無駄に疲れるだけだぞ!。」


「… うっさいは!、物事っつーーのはやってみなきゃ分かんねもんだろが!… 。」


「… はぁ… 、そんなものかね… 。」ぶら下げた助を横目で見据えながらアイダ・エンは、ボソッとつぶやいた。


!……… 笑い声がした。アイダ・エンは助を顔の前から外すと縁が起き上がっており、クスクス笑っていた。


助も手足をばたつかせるのをやめ、縁の方を振り向いた。


「… 何が、可笑しい!… 。」助は不満そうな顔で縁に話しかけた。


「… あっ!、ごめんなさい。えーと、なんて言うか、その… すげーバカみたいな会話してんなーって…… 。」


「… はぁ!、誰がバカ… 。」


助は縁の発言にキレかけたが、縁が再び怖がらない様にする為アイダ・エンは、手にぶら下げていた助を無雑作(むぞうさ)に放り投げた。


助はアイダ・エンにゴミを捨てる様に放り投げられたが、彼は見せつければ体操選手も(うな)る程の空中ひねり一回転を見せ、綺麗に両足が伸びた状態で着地した。


縁とアイダ・エンはそんな綺麗な空中ひねり一回転着地を成功させた助にオォーと唸り、二人で拍手を交わした。


「… 関心してんじゃねーよ!。あぶねーだろ、

エン!。」助がアイダ・エンに向かって両拳を突き上げてキレた。


「… 君がキレてまた藍田君が怖がってもダメだろ。あっ!、そうだ藍田君、君に紹介しておかなければな!。… 彼がこの船のもう一匹の船員

助さんだ。」


アイダ・エンは右手を助に向けて縁に紹介した… 。」


「… お前今!、一匹って!言わなかったか?。」助が不機嫌そうな顔でアイダ・エンに毒づいた。


「… 君は人か?… なら匹で問題ないだろ… 。」


「… 俺は(にん)でもなけれな(ひき)でもねー!…… 。」


「… なら何だ?。」


「… 俺は… 神、。」


「… まぁ〜 、藍田君、こんな生き物だがそれなりに仲良くしてやってくれ、悪いやつではないんだ、少しヤバ目のクスリをやってはいるが!

…… 。」


「… クスリ何かやってねーよ!… 。って言うかまた、テメェー人の会話を途中で切りやがったな!…… 。」


「… 人ではなく匹とつけろ。」


これを聞いた助はとうとう我慢の限界に達し、アイダ・エンに飛びかかった。


しかし、寸前で助の顔をアイダ・エンは右手で鷲掴みにして、アイアンクロウをかました。


顔面を鷲掴みにされ逃れ様と(もだ)えている助をよそに、その状態のままアイダ・エンは縁に話しかけた。


「… 藍田君、色々あったが取り合えずこの船にいるのは君と私とこいつ含めて二人と一匹だけだ。」


「… あのー 、アイダさん、その人大丈夫なんですか?。」縁は助を指差し心配そうな顔をした。


「… あぁー 、これか!、大丈夫だ、君が心配する必要はない。彼は割と頑丈だからな。」


「… えっ!、いや、大丈夫と頑丈じゃ意味合い違いますけど、って!、… 何かその人手足が青くなってますですけど!… 。」


「… あっ!、顔を押さえ過ぎたか!。」縁は掴んでいた助の顔面を離した。


床に落ちた助は、顔が青くなりピクリとも動かなかった… 。


「… し、死んでる!… 。」縁は引きつった表情で助を見た。


「… いや、大丈夫だ!、これぐらいで彼は死なないよ。」


「… えっ!、でも、息もしてないし!… 。」


「… 大丈夫だ、藍田君… 君がそう心配する事でもない。… むしろ君はこんな事よりその漏らした服を変える事の方が重要ではないかね!。」


!!!… 、縁は自分が漏らしていた事を忘れており、それをアイダ・エンに指摘されると股を押さえ、顔が真っ赤になった… 。


縁は顔から火が出るぐらい恥ずかしい気持ちになった… 。


早く着替えたい!… 。縁が着ているのは白い手術着の様な服だ、当然白だから尿の色が黄色なら黄ばんだ様なシミが股の周りに着く。


案の定、股の周りは黄色シミが広がって着いていた。


だが、幸いだったのが尿漏れの後は完全に乾いており、肌に張り付くベタベタした感じには、なっていなかった事だ。


ただ、縁は一つ気になる事があった… 。


服は速乾性のある生地でも使っていたから早くに乾いたのかと自分で勝手に納得したが、それならどうして自分の足元の床に溢れているはずの尿が消えているのか?…… 。


あの出来事から一度もトイレなど行っていないから相当溜まっていたはず!、出した量も結構多かったはずだが床には尿漏れの後はなく?… 拭いた様に綺麗だった。


ただ、何故か?、足元がサラサラする様な感じがして、足先で払った。


「… どうかしたかね。藍田君… 、足元など見て…… 。」


「… えっ!、いやその!、… 何でか知らんけど足元の尿がいつの間にか乾いてたんで、不思議に思って!… 。」


「… 乾いたのではなく、“燃やしたんだ”!。」


「… ん!、“燃やす”?って、どう言う事ですか?。」


「… 時期に分かるさ、君が一番知りたがってた私との年齢の差と後… 何故私が無菌室で君の母親をバカ呼ばわりした事も含めて!… 。」


「… えっ!それってどう言う…… 。」


縁はアイダ・エンのこの意味深な発言に言及しようとしたが、アイダ・エンは縁に背を向けて、仰向けで倒れる助の尻尾を掴み、この応接室の入り口に向かって歩き出した。


アイダ・エンは助をズルズルと引きずり廊下に出た… 。


アイダ・エンは廊下に出ると、未だ応接室に立ち尽くす縁に振り向かず、背中越しに問いかけた。


「… 藍田 縁 君… 、君は私とあの無菌室に二人きりでいた時、私にこう尋ねたよね、自分はこれからどうなると?、そして私はこう答えた。それを決めのは君自身だと… 。」


「… 覚えています。で、アイダさんに何を決めるんですかって聞いたら、はぐらかされましたけど!… 。」縁は不安げな表情でアイダ・エンの背を見た… 。


「… あの時はぐらかしたのは、あんな状況に陥った君にこの選択を迫るのは、あの時の君の状態から見て早いかと思ってな… 。」


「… あの時って!、無菌室での事ですか?…

別に俺は今とさっきと対して変わってませんけど… 。」


「… 君はなるべく顔に出さない様にしていたが、仕草や声、反応を見れば君がいかにギリギリの状態で立っていたかと、“心”を見なくても解る… 。」


「… 仕草や反応って!、じゃーあの、人を少し小バカにした様な言い回しはあえてって事ですか?… 。」


「… いや!、あれは元々だ。… そこに他意(たい)はない。」


「… そこはむしろあえてやってたって言う所でしょ!… 。」縁は呆れた声になった。


「… そうか?、それはすまなかったな。だが、それは事実だ!、わざわざ隠す必要性すらない。」


「…あっ!、そうですか!。じゃー、話を戻しますけど、… アイダさんは俺が無菌室での精神状態じゃ出来ないと判断した選択とやらは、今なら出来るとお思いなんですか?。」縁は少しふてくされ感じで喋った。


「… あぁー 、そうだ!、さっきよりはだいぶマシになっと判断したからな、だから今決めてもらう!。」


「… 決めるって!… 何をですか?… 。」


「… 死ねか、それとも私の元で………

《シエンジャ》になるかだ!。」


「……………………………………… 。」縁は言葉をを失い!、棒立ちでアイダ・エンの背を震えた瞳で見据えた… 。


死ぬかとアイダ・エンに問われた時、縁は内心やっぱりそう上手い話などなかったかと、怯え哀しんだが、同時にこの事について達観する自分も心の中にいた。


ただ、死ぬかと聞かれた以上に縁には何故だが分からないが、アイダ・エンに放った一言で物凄く心に引っかかったものがあった… 。


だから、例え自分が死ななければいけない状況になったとしても、これだけは聞いておきたかった。


「… シ、シエンジャ⁈って何ですか? … 。」


「… シエンジャとは、【紫炎(しえん)】を放ち、全の均衡を保つ者だ!… 。」


「…し、 しえん?、何ですかそれ?… 。」


「… 私が持つ、まぁー 、魔法みたいなものだ、そして…… 。」


今まで振り替えず前を見て話していたアイダ・エンが縁の方を振り向き…「君がかつて持っていた力だ!… “20年前まではな!… 。」そう言ってアイダ・エンは鋭い眼差しで縁を見つめた…… 。


縁は戸惑った!。… まずアイダ・エンが言う、シエンジャや紫炎がどう言ったものなのかよく理解出来なかった!… 。


そして、一番理解出来なかったのが、自分もその紫炎?とか言う魔法の様な力を、“20年前”には使えていた⁈ …… 。


アイダ・エンは間違いなく20年前と言った!… 。


しかし、縁は今20歳!、当たり前だが20年前など産まれて直ぐの年、そんな赤ん坊の時にアイダ・エンが言う紫炎と呼ばれる力を保有していたとでも言うのか?… 。


縁はアイダ・エンの顔を見た。彼はそれ以上何も言わず縁を今までの少しおどけた感じではなく、鋭く、硬い決意の様なものを秘めた眼差しを向ける。


縁もアイダ・エンもしばらく見つめ合うだけでお互い何も話さなかった… 。


息がつまる様な沈黙が縁とアイダ・エンを包み、もう、それに耐えきれなないと思った縁は自分から何か言おうとしたが…「何?やってのお前ら!… 。」声のする方に縁とアイダ・エンが振り向くと、意識をなくしていた助が目を覚まし、二人を訝しげな顔で見ていた。


助は尻尾をアイダ・エンに握られ、逆さまの状態になりながら喋っていた。


「… なぁ、縁!、もういい加減尻尾の話してくんねーか!、頭に血が昇る!… 。」


「… それはすまなかった!。」アイダ・エンそう言うと掴んでいた助の尻尾を離した。離した尻尾は床にペチンッと軽い音を立てて倒れた。


助は起き上がると服を払い澄ました顔で、アイダ・エンと縁を見た。


「… で!、お前ら何で一言も喋んねーで見つめ合ってんだ?、はっ!、まさかそっちの気が!…… 。」


「… 何で見つめ合うだけでホモ認定されなきゃいけないんですか!… 。」縁は助の発言に憤慨した。


「… やめろ、気持ち悪い… 。」アイダ・エンも縁に続けて苦言を(てい)した。


「… いや、だってお前らまるで付き合いたてのカップが、何か話そうとしてお互い歩み寄ろうとも、中々一歩踏み出せないもどかしい感じに見えたから… 。」


「… 何故?これを、そんなふうに見える?… 。」アイダ・エンは呆れた様子で答えだが、縁の方はそうではなかった… 。


確かに、ホモの様に見られたのは不愉快だが、助が喋ってくれなければ、自分もアイダ・エンも話さないままお互いの出方を待つだけで、一行に何も進まなかった、だから、助が話してくれて助かったと縁は思った… 。


アイダ・エンは助にまだ小言を言っていた。しかし、等の助はアクビをしたり、ケツを掻いたりして、全く話しを聞いていない素振りを見せしていた。


そんな聞く耳持たない助にアイダ・エンは溜め息混じりにうなだれ、もういいと言った表情で廊下側に振り返った。


廊下側に再び振り返った縁はまた縁の方を見ずに彼に重たい感じの口調で話し始めた。


「… 藍田君、私は困っている人をはいそうですかと、簡単に助けるほどお人好しでもない。…

助けるならそれ相応の理由がある… 。」


「… 理由って何ですか?… 。」


「… 今はまだ話せない。だが、これだけは言える。… 今の君は私がいなければ何も出来ない。、生きる事も死ね事も… 。」


…… 縁は眉をひそめ、アイダ・エンから顔をそらした。


「… アイダさんの言い方、まるで脅してるみたいに聞こえるんですけど!… 。」


「…… そうさ!、きみの言う通りだ!。… 私は今、君を脅している。私の目的に利用する為に… 。」


「… 利用するほどの価値が俺にあるんですか?… 。」


「… 今はない。だから利用出来る様に私が鍛える。そして、ダメなら切り捨てるだけだ… 。」


「… そうですか…… わかりました!。それでいいです!。俺にどんな価値があるかわかりませんが、利用出来るだけ利用してください。」


「… ぅはぁっ!!!」… アイダ・エンは自分が予想していなかった発言を縁がした為、驚きのあまり変な奇声を上げてしまった。


アイダ・エンは縁の方を振り返った… 。


「… 藍田君、あんな事を私の方から言っといて何だが、本当にいいのか?それで!、そんなに早く答えを出す必要はないのだが!… 。」


「… これでいいんですアイダさん。… だって、貴方の言う通り、俺は一人で生きる事も死ね事も出来ないヘタレ野郎何ですから… 。」


「… 利用されて最後には死ねかも分からないのにか?… 。」


「… それでいいです。むしろ利用されてるって解ってる方が、アイダさんに要らない感情を持たなくていいから、気分が楽です。」


「… 要らない感情とは何だ?… 。」


「………… それは今は言いたくありません、すいません。… でも、アイダさんだって俺に隠してる事とか、もしかしたら嘘をついてる事だってありますよね… 。」


「……… どうだろうな。」アイダ・エンは締まりのない返答をした。


「… 俺は、アイダさんが隠してる事を追求する様な事はしません。、例え嘘をつかれていると解っても訂正もしません。だから… 僕の事も、聞かないでください。」


縁は歩き出しアイダ・エンの側まで近づいた… 。


「… いつまでの付き合いになるかは分かりませんが、とりあえず、よろしくお願いします。」


縁はアイダ・エンの前に手を差し出した… 。


「… 君には、自分と言うものがないのか?。」


「… ハナっからないですよそんなにもの!。」


「… 私がこの手を握り返したら、君はもう元の生活には戻れないのだぞ!… それでもいいのか?。」


「… 元?、可笑しな事聞くなアイダさん!。戻るってどこに戻るんですか!。帰る星も、唯一愛した人すらも全部ななくなっちゃたのに!… 。」


縁は何とか平静を装おうとしているが、その目は潤み、声も必死で涙声になるの抑えている様だった。


「… ねーアイダさん。」


「… 何だね。」


「… アイダさんってやっぱり、さっき言った事と今言ってる事、矛盾する人ですよね。」


「… 何故、いきなりそんな話しになる?… 。」


「… だって!、アイダさん… 俺の決断早い事に心配する素振り見せてますけど、アイダさんの提案断ってたら俺、最悪どっかに捨てられるかもしれないんですよね!… だったら、俺の唯一取れる洗濯なんてハナから貴方に着いて行くって言う事、一つじゃないですか!… 。」


それを言われたアイダ・エンは一言…「そうか?」と答え、自分に差し出された縁の手を強く握り返した。


「… 藍田君、ようこそ祈りも願いも希望も無い腐った世界へ……… 。」


縁は何故アイダ・エンがこんな事を言ったかは、分からなかった。


しかし、縁自身どこかでは感じていたんだと思う。… もう、自分は進むしかないんだと。


彼の言う通り、祈りも願いも希望すらも無い世界に飛び込んだとしても、自身にはもう祈りも願いも希望すらもすでに無いのだからどこに行ったて同じである…… 。


例え、この先アイダ・エンに利用され、最悪の結末になったとしても、母に全て任せ自分一人では何も選択して来なかった自分になど、どう一人で歩めばいいかなんて分からない… 。


だったら!、行くべき道を自分で考えず、すでに提示してくれているアイダ・エンの提案を断る理由はない!… 。


「… 僕の方こそよろしくお願いします。アイダ・エンさん… 俺がどれぐらい使えるか分かりませが、使えるなら使い潰すまで使ってください… 。」


「… あっ、あぁ…… 。」アイダ・エンは少し戸惑いながら返事をした。


縁は涙と鼻水をすすり、必死で笑顔を作っていた。そんな縁の姿にアイダ・エンは少しいたたまれない気持ちになった。


自分は縁に選択という名の強制を強いているのに彼は気持ち悪いぐらい笑顔で応えている!。さっきは泣く寸前だったのに…… 。


そして今になって気づいた。きっと縁はこうなのだろう!、アイダ・エンが知ら無い彼の20年間の内に、藍田 縁 と言う人間はこうなってしまったのだと…… 。


自分を偽り、我慢して、心をすり減らしながらも前に進む為と言うこじつけをして、自分を必死で保ちながら今までもこれからも生きて行くんだと、だったらアイダ・エンが彼に提示出来る事は一つしか無い…… 。


「… 分かった、藍田君、君を使い潰そう!…

しかしだ藍田君、私はこうも思うのだよ、誰かを己の目的の為に利用使用とする者は、同じ事をされる必要性があると、だから藍田君、君も私を利用しろ、もし、それで君が私を不要と見なせば私を…… 殺してくれても構わない。」


「… えっ‼︎。」縁は突然のこの一言に戸惑ったが、数秒ぐらいだろうかアイダ・エンに向かって…「仮にそうなったとしても、今の僕じゃ何も出来ないですよ!…アイダさんの言う通り僕は雑魚だから!… 。」笑顔でこう返答した… 。


「… 心配するな!、そう出来る様にする為に私がいるのだから!… 」アイダ・エンも縁と同じで笑顔で答えた… 。


時間にして数分ぐらいだろうか、硬い握手を交わしていた二人は手を離し、アイダ・エンは縁の後ろに回り、肩に手をやって彼を(いざ)なう様に応接室の出口に向かわせた… 。


二人が廊下側にでると助が大きいアクビをしていた。… 助はアイダ・エンに気づくと彼の肩に乗り、アイダ・エンも助が自分の肩にちゃんと乗るのを確認すると笑顔で微笑み、三人一緒に長い廊下を歩き出した… 。


アイダ・エンがどこに向かっているのかは分からなかったが、もう… いちいち聞くのは止めよう… 。


例えそれが些細な事でも自分にはもう… この人が提示してくれた道しか無いのだから!。


きっと今で生きて来た以上の辛い経験が待っているのかもしれない。… 甘ちゃんだった自分は耐えられないかも知れない。… それでも!、進むしか無いんだ!。


母を失い、帰る場所も失い、その事で生じた様々な感情の渦に自分の全てが飲み込れる前に!… 。


「… 藍田君!。」… 突然アイダ・エンが自分に話しかけて来たので縁は何だと!、いきよいよく彼を方を振り向いてしまった… 。


「… そんな!、激しく首を振らなくても…

まぁーいい…… 藍田君!、君に一つやって貰わなくてはならない事が有ったのを忘れていたよ!… 。」


「… いいですけど、何ですか?… 。」


「… ずいぶん物分りがいいな!。」アイダ・エンは縁の今までとは違う、対応の早さに少し驚いた… 。


縁の了承を得たアイダ・エンは、左手を服の胸元に突っ込み、一枚の折り畳まれた紙を出した… 。


アイダ・エンはその紙は広げると、そこには地図の様な者が描いており、丁度紙の真ん中辺りだけ小さく赤い丸がしてあった… 。


縁は不思議そうな顔でその地図を眺めていると、アイダ・エンはその地図の真ん中にある赤い丸に指を指して、「… 藍田君、どこでもいいからこの赤い丸をスタートに一本線を引いてくれないか… 。」そう言うとアイダ・エンは縁にボールペンを手渡した… 。


縁はボールペンを受け取ると、続いてアイダ・エンの持つ地図を取り、紙にシワがよらない様に床に地図を置いて、赤丸から左方向に線を引いた… 。


線を引いた時、縁は関心した。… 定規を当てていないし、それ以前に利き手である右手を失い、左手で描いている為、線は歪むだろうと思っていたが、ペンはまるで意思を持っているのかと言うぐらい、手ぶれを補正して、綺麗で真っ直ぐな線が引けた… 。


これが最新式の筆記用具か!… 縁は物欲しそう顔でそのボールペンを眺めた… 。


「… 欲しいならやるぞ。」アイダ・エンは物欲しそうに見つめる縁に、そんな物どこにでもある物と言った感じの表情で、ボールペンを縁に譲った… 。


縁はボールペンを貰うと、子供が欲しいオモチャを買ってもらった時の様に嬉しそうにジックリ眺めたり、色々な所を触ったりしていた… 。


アイダ・エンはそんな縁の様子にそこまで嬉しいかと言った顔をして、縁がボールペンに夢中で床に置きぱっなしにしている地図を拾い上げた… 。


アイダ・エンは縁が線を引いた地図を眺めると「… よりにもよってここか!。」唸る様に声を出した… 。


その声に気づいた縁がどうしてのかとアイダ・エンに詰め寄ると、彼は少し困り気味の笑顔で縁の顔を見た… 。


「… 藍田君!、これは大変になるぞ!… 君が選んだルートは他のに比べてかなり苦労するコースだ!… 。」


「⁈ …… 苦労するんですか?」縁は不思議そうな顔でアイダ・エンを見つめた… 。


「… 苦労するとも、凄く。…… 所でだが、君はこの地図について何も聞いて来ないな?、どうした… 。」


「… いや、どうしたって訳じゃないですけど、もう… あまり聞かない方がいいかなって、自分の中で思って!… 。」


「… 無菌室の時とは大違いだな!、どう言った心境の変化だ!… 。」


「… えへへへへへへ〜 ……」縁は照れ臭そうに笑っていたが、笑うだけで何故そうなったのかは言わず、表情も笑っているがどこか硬い感じがした… 。


アイダ・エンもそんな縁の気持ちを汲んだのかそれ以上何も言わなかった… 。


アイダ・エンは縁が一直線に線を引いた地図を縁自身に見せると一言「… 修行だ。」


「… えっ!… 。」縁はよく聞こえなかったのか聞き返した… 。


「… 修行と言ったのだ、藍田 縁 君、この君自身に引いてもらった地図上の線通りに真っ直ぐ進んでもらう!。… それが今君が一番最初にやるべき 『シエンジャになるべき道、その一だ… 。』」


アイダ・エンはそう言うと縁の顔をまたしても鋭い眼光で見つめた!… 。


その縁を見据える瞳はまるで縁自身のこれから起こるであろう事への覚悟を問いている様にも感じた… 。


縁はそんな鋭い眼差しで自分を見つめるアイダ・エンを、彼と同じ様な眼差しで見据え、一言「… 出来てますよ。」そうつぶやいた… 。


それを聞いたアイダ・エンは縁に何かを言う訳でもなく、黙って前を振り向き再び廊下を歩き出した… 。


縁も自分が言った言葉に反応しないアイダ・エンに苛立つ訳でも、悲しい気持ちになる訳でもなく、黙って歩みを進めるアイダ・エンに彼もまた黙って後ろを付いて歩いた… 。

その4を見てくださった皆様ありがとうございます。

その1〜その4と投稿しましたが、全く話しが進んでいませんね。

一応先に言いますが、今書いている続きの話しも、まぁー先に進みません。

やっぱり長ったらしい会話と今どう言う状況なのかと言う、状況説明が不足気味だと思います。

書いてる本人がそれを言うなと言う話ですが、いかんせん話しを書くと言うのは難しいですね。

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