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EPISODE1 紫炎覚醒 編 その2

ども〜 5月1日にこのELPISと言う話を投稿させて頂いた筆者トマトジュースです。

ゴールデンウィーク中にまとまって話を打っていたので、出来た分を一気に載せ様と思います。


「いいかげんにせやー‼︎」そんな言葉を吐き捨て僕はアパートを飛び出した。


ほんの数分前に言った自分の発言に苦虫を噛み潰した気持ちになった!… 。


家を出たとき小雨が降っていた… 。少しづつ雨足が強くなってきた。


自宅から歩いて20分ぐらいの距離にある駅周辺を、 靴の踵をあえて擦るようにして、速度を落としながらぐるぐるとあてもなく歩いていた。


ささいな事で母親と口論になった。 口論と言っても悪いのは自分だ。


母は、僕のことを思って言ってくれたのに自分は、それを頭ごなしに拒絶した。


自分はむしゃくしゃしたり悲し事があると、心の中で自分語りをする。


変だと思われるが、これは中学の終りぐらいからやっている、僕流の精神安定のようなもの。


心の中に見知らぬ人物を創りその人に自分の話しをひたすらする。


話す内容はバラバラで、最近の事、昔の事、今起こっている事、その全て、こんな感じである。


どんな内容であれ、誰かに話しを聞いてもらっている間は気分が良くなる。 それと似たような事を心の中でする。


心の中の人物は、意見も批判もしないので、話していて気分を害さない。


人は誰かに自分の感情をぶつけたい生き物だと僕は思う。


ただ言葉と言う パンチを受け続ける、サンドバックが欲しいのだ。


身勝手で独りよがり、相手の考えや思想など不要。


こんな何の根拠もない方便をする自分は間違いなくズレている。ズレているのに治そうとしない。


自分に甘いのだ・・・・。


今から僕は心の中の誰でもない何かに話しをする。


そうだ、母の事を話そう・・・・。


久しく親の事を話すのを止めていた。


喧嘩をしてしまったが、今までの事を少しでも振り返れば、また母親に対して素直になれるかもしれない。


当たり前だがこれはたんなる心の中の独り言、 他人は聞けないし、覗くこともできない。


でも、もし今からする自分語りを誰かが見ることができたなら、この話しをし終えた時その人が僕に向ける感情はきっと、醜く、浅ましく、そして、こう言う人間が結局最後に何も残せず、誰からも感謝されずに消えていくんだと……



僕の家は、母子家庭で、特別裕福と言う訳ではなかったが、自分の小さいときを思い出しても、お金で苦労したことは、無かったと思う。


欲しい玩具も、発売日には買えたし、好きな食べ物も、毎日ではないが、比較的食べる事が出来た。


だが、あるとき、ふと、疑問に思ったことがある。母は、いったい何をしているのか?特に何か仕事をしている気配もなく、時々2、3時間外に出かけるくらいだ…


そういえば、母が外出した後、隣の部屋から男女の声がいつもした。アパートの壁はそんなに薄い訳ではないが、なんとなく話しをしているのは分かる。


でも、隣から聴こえくるのは、会話と言うよりは、音に近いものだった。小さいときは、その音が何なのか、別に意識などしてはいなかった。


だけど、次第に成長するにつれ、母がなにをしているのか、そして、あの人が外に出かけるたび隣から聴こえくる音は何なのか?、薄々は気づいて行く事になる…


母はとても美しい女性だった。


町を歩けばすれ違う男女はたとえ幼い子供であっても、その美しさが人としての本能で分かるのか、全員が振り返った。


腰まで伸びる長く淡い紫色をした銀髪は光を浴びればラメのグラデーションを施したかのような美しい光彩を放ち。


左右で彩度の違う藍色の瞳は、左目の下には二つ泣きぼくろがあり、垂れぎみの目元と合わせて、少し妖艶な感じがする。


北欧系を思わせる均整(きんせい)のとれた顔立は、それでいてどこか憂いを帯びている。


身体は細すぎず程よく肉がついており、胸も風船でも入れているのではないかと言う程大きく、男がいかにも好きそうな体型をしていた。


ただし、女性の割りに背丈がとても大きく、183㎝もある僕の身長より高く、人混みに紛れても頭三つ分ぐらい抜けていた。


こんなどこに出しても自慢できるのが僕の母なのだ。そう、僕の・・・・・。


男性は母親、女性は父親に似ると言うが、僕と母はまったく似ていない。


そもそも、母はどう見ても外人で、僕はどう見も日本人だ。ハーフのような顔立ちも僕はしていない。


しいて母さんと似ているところがあるなら瞳の色ぐらいで、後は、どこも似ていない。


角張った顔、毛深い身体、くせが酷い頭髪、アジア人特有の黄味がかった肌。


これで、血が繋がっているととても信じられない。


男でも父親に似るのはおかしくない。自分は父似なのかと思い、親父の写真を見せてくれと頼んだが、母さんからは、僕は精子バンクからの体外受精で妊娠したため、父親も分からないし、写真もないと言われた。


普通そう言う事をするときは事前に提供される精子の素性は調べないのかと、何度か母に尋ねた事がある。


だけどいつも言葉をはぐらかされ、少しキレ気味に詰め寄ると、「ごめなさい、ごめなさい、私がもっとちゃんとしてたら。」この言葉を繰り返し、泣きながら僕に土下座をする母にそれ以上は深く追求することができなかった。


自分は養子か何かで母はそれを隠そうと嘘をついているのではないかと思い、母親に説いても、「貴方は紛れもなく私のお腹から産まれた。」とその一点張りだった。


母親に聞いてもらちがあかないので、母に内緒でDNA検査を受けた。


最近はネットからでも簡単に申し込めるので、母の唾液を送られて来た申請書と一緒に検査機関に送った。


ちなみに唾液の採取は母が床に着いたときに、起こさなように、母の寝室に忍び込み、待ち針に糸を通す感じで、綿棒を口の中入れて口内の粘膜を(こす)るように取った。


採取している最中は自分は一体何をやっているのだと僕自身に呆れた。


当たり前だが、こんな事をして起きない人はいない。綿棒を口から抜いときに、異変に気付いた母が目を覚ました。


とっさに綿棒は後ろに隠したが、なぜ?自分の寝室に僕がいるのか不思議そうにしていた。


僕はとっさに「めちゃめちゃ怖い夢見て母さんと一緒に寝たいねん。」と無茶苦茶な言い訳をした。


自分でも何を言っているのかと思ったが、母は僕がアルバイトをして、母の為に初めて贈り物をしたのときのように、少し瞳を潤ませながら満面の笑みで僕に抱きついてきた。


母は僕の頭をなでながら「そっか・・・縁君怖い夢見たんでちゅね〜。ママと一緒に寝たかったんでちゅね〜。よし。よし。ママがずっと縁君が寝るまで抱きしめてあげまちゅよ〜。」


赤ちゃん言葉で僕を抱きしめるこの女に少し怒りを覚えたが、母はそんな僕の気持ちなどつゆ知らず、僕を自身の布団に引きずり込むように寝かしつけてた。


逃げ出す為に、目を開けて母親の方を見ると、彼女の方も目を開け、優しく微笑んだ。


そんなことを繰り返していたら、僕の方が根負けして眠りについてしまった。


母は本当に僕が眠るまでずっと抱きしめていた。


そんな苦労の末に採取した母の粘液を検査機関に送り、DNA鑑定をした結果、僕と母は高い確率でほぼ間違いなく実の親子だと言うことが分かった。


検査結果が届いて血の繋がった親子だと判明したときは素直に嬉しかった。


今までは僕と母は赤の他人で母は何か人には言えない理由で、仕方がなく自分を育ててくれたのではないのか?。


実際母は僕に時折気を遣っているような表情をするときがある。

それがたまらなく嫌で、たまらなく不安だった。


でも、もう気にすることはない。僕と母は本当の家族だ。


血縁関係がない家族は本当の親子ではないのかと言われたらそんなことはない。


血が繋がっていなくても、過ごした時間と心が通じ合っていたら、誰がなんと言おうと、それは、本当の家族だと思う。・・・思うと思う。


母さんが僕を愛してくれていると思う。


たとえそれが全て偽りだったとしても、今まで育て僕を護ってくれたことは、母と過ごした時間が証明している。


本当は血縁関係などどうでもいいのだ。


母と一緒にいられれば、それで・・・・。


僕は重度のマザコンだ。母が好きだし愛している。最初は親への尊敬や慈しみといった純粋な愛情だった。


それが成長するにつれ愛情が嫉妬や独占欲の愛憎に変わった。


母が他の人と話していると腹が立ち、たまに出かけることさえ嫌悪感でいっぱいだった。


このまま家に閉じ込めてずっと、自分だけを見つめてほしい。


その柔らかそうだが強く抱きしめたら粉々になってしまいそうな、薄いガラス細工でできたかのような白く透き通る肌を一晩中弄(まさぐ)りたい。


一つになりたい・・・・・・。


自分が異常なのは重々分かっている。


この世で一番嫌いなものがあるならそれは自分だ・・・・・。


自分が嫌いだ。僕が(つね)日頃感じる嫌悪感は結局自分自身から滲み出る、あさましくヘドロのさらに底の澱みを塊にしたかのような歪で醜悪な母に対する感情だ。


唾液の採取で寝室に忍び込み、母に気づかれ結局一緒に寝るはめになった時も、このまま欲望に任せて事を起こせばいいのではないか。


母はなんだかんだで全て受け入れてくれるのではないのか・・・・。


案の定そんな事を思って寝た夢は、母とまぐわう淫夢を見てしまった。


まぐわうと言っても終始母が上で動き、下の僕はまったく動かない状態だった・・・。


朝目覚めた時に慌てズボンを確認した。


粗相(そそう)な事はなったが、隣で穏やかに寝る母の顔を見た時、今までで一番の嫌悪感と罪悪感が込み上げて来た。


「・・・母さんごめん。ごめなさい。」心の中でひたすら母に謝罪した。


そして、そんな自分が許せない程に憎くいっそこの世から消えてしまえと思った・・・・。


こんな事を思うなら血なんて繋がっていない方が、いっそのこと、よいのではないかと思う。


でも、・・・僕はそれではダメなんだ。


母さんは美人なのはもちろん、頭も良く、性格だってとても優しい慈愛に満ちた人だ。


そして今この瞬間だって僕の知らない所で絶えず、護ってくれているそう言う人。


言い過ぎかもしれないが、もし女神様が本当にいるのならこう言う女性ではないのか。


だけど僕はそんな女神のような人と釣り合っているとは思えない。


頭だって特別賢い訳でもない。顔が良い訳ではない。性格も優しくない。


どちらかと言えば、短気でそれでいて肝心な時には弱腰になる臆病者だ。


そして、心中では母親に浅ましい感情を持ち、常に自己嫌悪に陥るにもかかわらず、自分自身に都合の良い言い訳し、母の元から離れようとしない屑それが僕【藍田(あいだ)(えん)】だ。


DNA検査を勝手に受けたのも、親子関係の有無などではなく、自分の中で感じていた母との距離を縮めたかったから。


そして、血が繋がっていれば、母と子なら、こんな卑しい僕がこの人と一緒いられるこじつけが欲しかったから。


そんな身勝手で、結局は母の気持ちなど一切考えていない1人で安心したいが為に、母に内緒でこんなことをした。


ただそれだけ・・・周りが聞いたらとてもしょうもなく、呆れた行為だ。


でも、最低で情けない理由でも僕にはこうするしかなかった。


容姿も、髪の色も、知力も、性格も母と全く似ていない自分が不安だった。


不安で、不安で、不安で、常に何かに押しつぶされそう感覚で一杯だった。


周りからも色々言われた。小学生の時はマシだったが、中学高校は酷かった。だけど必死に聞こえないふりをした。


それでも 僕の事をどうこう言うのは我慢ができたが、母の尊厳を侮辱する事だけは我慢ができなかった。


発言した相手に僕の方から喧嘩を売り、そしてボコボコにされる。


背が大きくても中身は小心者のヘタレがいくらイキがって所で喧嘩慣れした奴に敵う訳がない。


たまに勝つがそんなのは、2、3回程度しかなく大抵は負けて帰ってくる。


負傷して痛みを必死にこらえて帰って来る僕を母はいつも僕以上に、悲痛な顔で大粒の涙を流しながら僕に駆け寄って抱きしめて来る。


大抵喧嘩で帰って来る時はこの状況で、母が僕に喧嘩の理由を聞いても、母親をなじられたからなど恥ずかしくて言えず。


そうじゃなくても多感な時期と言う事もあり僕は、心配して寄り添って来る母に辛辣(しんらつ)な言葉を吐いてしまう事もあった。


その度、また心の中で自己否定が始まり。


母に多大な気苦労と心配させ。 周りからは笑いからかわれ。そんな事を学生の間ずっと続けてしまった。


そうじゃなくても、母は僕と家計の二重挟みで僕が考えるより、大変な気苦労を負っていたんだと思う。


それでも、母は僕の側にいつも寄り添ってくれた。

酷い月だと1カ月ほぼ 喧嘩、喧嘩の毎日でいつもボロボロの僕を介抱し、喧嘩相手の家に母が僕の代わりに謝罪にいく。


僕はそんなやつに謝りにいく必要はないといつも突っぱねていたが、母は僕にニコっと微笑んで、「大丈夫。私がなんとかしてあげるから。」と僕の静止も聞かずにいつも一人で喧嘩相手の家に謝りに行っていた。


たいていは、母が謝罪にくると、相手側の家族も「こちらこそ息子が大変ご迷惑をおかけしたみたいで。」とそんな感じで双方が謝るが、やはり、自分の息子が多少なりともケガをして帰って来るのを我慢できない親もおり、当人の僕がいないぶん謝罪にきた母に罵声。ときには土下座までさせる所もあったらしい。


どうして謝罪に訪れていない僕がそんな情報を知っているかと言うと、母が謝罪に行った家の生徒が学校でその事を面白可笑しく話しているのを聞いてしまうからだ。


話している当人も、隠れて話すのではなくあえて僕に分かるように周りに広めていく…


こんな事をするのは向こうが、僕がキレてくるのを見て楽しみたいからだと思う。


でも、言いふらしている本人達も僕が再び喧嘩を吹っかけてくることはないのを分かっている。


母が謝罪しに行った手前、僕がまた同じ相手と喧嘩などしては、母は同じ家に謝りに行かなければいけない。


そして、また母が僕の代わりに責めを受ける。

そんなことを僕が良く思わない事をあいつらは、分かっている。


僕はただ唇を噛み締めて、母がなじられるのを我慢するしかなかった。


学校の連中も僕がマザコンなのは知っているはずだ…


たびたび母の事を悪く言われてキレていれば、そう思われるのは仕方がない。


僕は自身はその事を言われても何だ気しない。

母に大好きとか愛してるとか直接言ったりはしないが、本人も僕がマザコンなのはとっくに気付いていると思う。


僕がなぜ?いつも喧嘩ばかりしてくるのか、理由を調べないはずがない。


当然どうして、僕が何に対して憤慨(ふんがい)しているかも調べはついているはず。


喧嘩相手の家に訪れるのだから、そこの保護者と喧嘩の理由を世間話程度の感覚ですると思う。


そんなこと家に帰ってきて僕に自分の為に今まで怒っていたんだと母に尋ねられたら、恥ずかしくて泣いてしまうかもしれない。


でも、母は一度として僕に喧嘩の理由を聞いてきたことはなかった。


謝罪を終え 家に帰って来た母はただ僕に笑顔で微笑み、いつものように晩御飯の準備をし、風呂を沸かし、喧嘩の事は関係ない世間話を僕として布団を敷いて床に入る。


何も変わらない一日、普通の家庭ならこんなバカ息子勘当されそうなものだが、母は何に一つ変わらず、そのままの僕を何にも言わず受け入れ続けてくれた。


そんな母の無償の愛に何に一つ応える事がで気ないまま僕は中高の間を喧嘩と謝罪を繰り返すだけで終わった。


原因は全部僕だ。母の為と思ってしている事が結果的に母を一番苦しめいる。


だけど、母は一度として僕を叱ったり、殴ったりした事はない。


そんな母に甘えていた。自分では甘えていないつもりでも、元々の根性は甘えて性のガキた。


こんな自分でも、大人になれば、マシにはなってくれるのか?、本当の意味で母の助けになってあげられるのか?……


今の自分にはそれが分からない…だけど、変わりたい……イヤ!、変わるべきなんだ…


甘えてばかりで何もしない自分など、血が繋がっていようがなかろうが、母と対等な立場で入られ続ける事など出来ない……


今はまだ、母が僕を慕ってくれているが、そんな関係もいつの日か、破綻するんじゃないか?…母が僕に愛想をつかしてどこかへ行ってしまうのではないか?……………


…… 急に寒気がした……なんだと思ったら、上半身がずぶ濡れだった、靴の中もなんだか、湿り気がある。


家を飛び出した時はまだ小雨ていどだったが、今は完全な本降りになっている。


雨は降っていたが、ずっと自分の中で自問自答していたので、周りが見えず、自分の身体が濡れている事すら忘れいた…


いくら、夏場とはいえ、身体が濡れれば寒い、徐々に手足も冷え、身体が震えて来た。


薄手のワイシャツしか上は身につけていなかったので、人目につかなさそうな所で、一度脱いで水を絞っても、中々湿り気は取れなかった……


とりあえず自分は駅の正面入り口に入った、天気予報では雨と言っていたので、道行く人は皆ちゃんと傘を指している。


グゥ〜、お腹が鳴った、そういえば家を飛び出した時は丁度お昼ぐらいだった。


母は昼飯の準備をしていた、その最中に些細な事で喧嘩をしてしまい母に罵声に近いものを浴びせ、自分は今こうやってこの場所にいる。


雨が一層強くなって来た、雲に覆われた空もゴロゴロと音を出して光出した。


空がゴロゴロと鳴るたびに、それに呼応するかのように、腹もグゥ〜グゥ〜と音を立てた…


余りにも腹が鳴るので、何か食い物を買いたかったが、家を急に飛び出しので、財布も携帯も持っていなかった。


もしかしたら小銭でも入っていないかと、ズボンのポケットを何気無しに探って見たが、小さい綿クズの様な物しか入っていなかった…


ハァ〜ため息が出てきた、せめて財布だけでも持って来れば良かった……


項垂(うなだ)れながら、自分はその場にしゃがみ込んでしまった。


しゃがみ込んで、ハァ〜…ハァ〜…ため息ばかり出していると、誰かが自分の前に立っているのを感じた…


顔を上げると母がずぶ濡れになって立っていた、自分はその姿にビック‼︎っとしてしまった。


母は右手には傘を持っていたが閉じたままだった。


何故か?母は息が荒かった、走って来たのか?……母は何も言わずにしゃがみ込み、僕と同じ目線になると急に抱きしめてきた……


人と目につき、ただでさえ人通りの多い駅の正面入り口の前で、しゃがみ込みだ男女が抱き合うのは流石に恥ずかしいと感じたので、辞めろと言いかけたが……それを言う事が出来なかった。


僕を強く抱きしめる母は泣いていた、そして、僕の耳元でずっと、ごめん、ごめんと謝っていた…


後で分かった事だが、母は家を飛び出した僕をずっと探し続けていたらしい…しかも、この話しは母から聞いたのではなく、後日学校に行った時に、同級生が話してくれたから分かった事だ…


何故この同級生がこんな情報を知っていたかといえば、彼がたまたまコンビニからの買い物帰りに、うちの母が傘を持っているのに土砂降りの中、血相を変えた顔で走っており、僕と少し親交があった彼を見つけると、僕の所在を知らないかと、詰め寄る様にしつこく聞かれたと、彼の口から半ばクレームの様な形で聞かされたからだ……


母が僕を駅で見つけた時は、人通りの多い駅に行けばいるのではないかと思い、一番最初にここを探したと言っていたが、実際は僕を見つける為にあちこち探し回っていたらいし…


母は一言もそんな事を僕には言わなかった…僕を見つけた時も数分間抱きしめた後に、母は立ち上がると涙をこらえた笑顔で僕に「帰ろ…」とだけ優しい声でささやき、僕の手をそっと引いて立ち上がらせた。


この時の僕は母に何か言う事はなかった…母も僕に特別何か言う事も無かったので、僕自身もう、この事は有耶無耶(うやむや)にしてしまおうかと思ったからだ……


帰る時は母が手にしていた傘を刺して帰った、傘は一つしか無かったので、必然的に相合い傘の状態だったので、内心恥ずかしかった。


一つの傘に身体を寄せ合って歩いていると、母は震えていた…


僕の前では笑顔で取り繕っているが、降りしきる雨の中ずっと探し回っていたのだから身体も冷え、体力だって相当減っていたはず。


それでも母は僕を叱るでもなく、家に着けば真っ先に僕を有無を言わさず風呂に入れ、母の方が探し回って疲れているはずなのに、彼女は僕が出て行った事で中断していた昼食の準備を再び始めていた…


湯船の中で自分は情けなくなった、1人雨中考え込んでいる時は、母に迷惑をかけない、母を一番思っているのは自分だ、見たいな事を頭の中で大層ぶって考えていたが、結局自分はこうだ……


母に迷惑をかけてる、しかも、母が何も咎めないのをいい事に、自分が悪いのに意固地になり謝りもしない。


この時は結局何事も無かったかの様に1日が過ぎ、翌朝を迎えて自分はいつも通りに学校へ行った……


同級生から、この事についての詳しい事情を説明された時、もう2日ほど経っていた…


登下校時、夕日で赤く染まった細い路地を、重い足取りで帰って行く自分は、自分自身に情けなくなった、……何やってんだよ!…本当に自分が嫌になる。


良く良く考えて見れば、母が僕を見つけた時、彼女は息が荒かった、母は僕をすぐ見つけたと言っていたが、そんなのは嘘で散々探し回ったんだと普通は分かる。


分かっていたはずなのに、その事実を受け止め無かった、何故?……きっとそれは、この年にもなって、必死に母親に探され続けたなど、恥ずかしくてたまらない思う自分が心の片隅にいたんだと思う。


身勝手だ!…母が他人からなじられれば、キレる癖に、一番その母に精神的に苦痛を与えているのは僕の方じゃないか……


自分でも面倒くさい性格だと思う…こうやって1人の時は自分のした事を振り返り反省しようと思うが、いざ母の前に立つとさっきまで直そうとした事が出来なくなる。


でも、何故?、それが出来ないか自分ではもう、分かっている……


多分それは、家に帰れば母がいつも笑顔で僕を迎え、例え僕がヘドロの様な吹き溜まりの存在でも、彼女はヘドロに(まみ)れても、その女神の様な優しさで、嫌がる事なく、僕の全てを受け入れてくれると思うから、まぁ、また直すのは次の機会でいいやと、いい加減な方へと自分を肯定して行く。


そんな母に自分は結局甘え続ける、変わる事なく同じ事を繰り返す……繰り返し、繰り返し、自分は母に悲痛な笑顔をさせる……


もう、イヤだ…何で自分はこうなんだ!……今こうやって考えいる事も、家に帰ればまたいい加減な自分が顔を出し、また、母に甘える。


いっそ、自分見たいな人間は死んでしまった方が、母の為になるのではないか?。


でも、絶対自分は死ねないと思う…いざ、死のうと思っても、きっと心の中で母は引き合いに出して死ね事を拒否すると思う…


……もう、こんな何も変われない自分なら、母の方から切り捨ててくれた方がマシなのかもしれない……


僕はその場にしゃがみ込みで頭を掻きむしった……、アァァァァァァ〜〜項垂れ(うなだ)れ、言葉にならない言葉を言い放つ…周りが見たら変人扱いされるだろう……


!…、ふいに何かに気づき頭を上げた、母が目の前に立っていた⁈……


…どうし?、何故?…この時間は家で夕飯の準備をしているはず…….?


僕は立ち上がり、「母さん…」と母を呼び、右腕を伸ばそうとした……


‼︎……、なっ…、右腕が無い⁈、さっきまで有ったはずのものが無い……‼︎、二の腕までは制服の袖が膨らんでいるが、そこから先は風になびかれ揺れている。


右腕がない…ないと意識した途端、凄まじい激痛が襲ってきた。


僕は右腕を必死に押さえた、何故か痛みと共に熱さの様なものも感じる。


熱いと言っても、熱湯を触った様な熱さではなく、まるで直接バーナーで(あぶられているかの様な熱さが、二の腕しかない右腕に強烈に感じる。


激痛でその場で悶えていると笑い声がした…笑っていたのは母だった…


…………なんで笑う?、どうして⁈


訳が分からなかった、いつもの母ならこんな状態になっている自分を放っておくはずが無い…


暮れの灯りがクスクス笑う母を燃える様な赤色に染め、その姿は怪しくもどこか妖艶ささえ醸し出していた。


そんな母の姿にいつもなら見惚れてしまうかもしれない自分だが、今は違う…ただ、ひたすらにこの人が怖く感じた。


腕を無くし、のたうち回る自分をあざ笑う母の姿もそうだが、何故か、本能的にこの今目の前に立っている母に恐怖を覚える。


……あれ、これと似た様な事前にも?そんな事が頭の中を一瞬よぎった時、ずっとクスクス笑うだけだった母が急に右腕を胸元に入れた。


?……何をしている、右腕を必死に押さえ、痛みで途切れそうになる意識を何とか失なわない様に耐えていると、母が胸元から棒の様なものを出したて来た。


見た目はまるでデカイ棒付きのペロペロキャンディーの様な…‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎…………


あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー

母が胸元から取り出した物を見た瞬間、声を上げ全身が震えだした…


あれを知ってる、えっ…待て!、どうなってんだ……完全に自分の思考は追いついてはいなかった。


言葉がしどろもどろになり、考えと行動が一致しない。


えっ、えっ、えっ……最早なくした右腕の痛みなど消えていた…それ以上に母が手にしている物に対する恐怖の方が痛覚を上回っているからだ。


でも、分からないのがあの棒状の物、絶対に見た事はあるのにどこで見たか分からない?


ただ、一つ言える事は間違いなく最近の…


!………母が急に僕に向かって歩き出した。普通なら何とも思わない行動だが、今の母と自分は普通じゃない、分からない……この人の何がそんなに自分を恐怖させるのか?ただ、今の母には近づいて欲しくはなかった。


僕は逃げよと()いつくばる様な形で後ろを振り返ると、自分がさっきまで歩いていた道が、瓦礫の山で被われていた。


はぁ、何で…!、自分は辺りを見渡した、周りは更地の様になり、さっきまで夕暮れ時の風景だったのが急に曇り空になっている。


周りの突然の変わり様に愕然となった。いきなり何で夕暮れが曇天に……イヤ、それ以上にどうして周りの状態がこんな事に……


はぁっ…‼︎、背中に何かが当たった。恐る恐る後ろを振り向いた。


母が立っていた、彼女は下卑た笑みで僕を見据えていた。


自分はそんな母の下品とも言える笑顔に見覚えがあった。


母はこんな下卑た表情はしない…した事が無いのに自分は確実にどこかで見ている。


そんな母の侮蔑感すら感じる表情に自分は猛烈な怒りすら感じ、そして…何故だか、とてつも無い悲しみすら感じた……


母は手にしていたペロペロキャンディの様な形の棒をいきよいよく上下に振った。


振ると、先端が伸びた。伸びきった瞬間、伸びた部分が紫色に光った……


あっ!……そうだ、これは……


母が手にしている棒状の物体が紫色に光り出した時、頭の中で粉々に欠けていた記憶の紙片が一つに集まり、本当なら消してしまいたかった記憶の像が鮮明に蘇ってしまった。


母は僕の記憶が全て戻るのを待っていたかの様に、今まで以上の侮蔑感と邪悪な笑みで、その光る棒を僕の頭めがけて振った……………………

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………目が覚めた。静かに覚めた。飛び上がる事も声を上げる事もなかった……


何故か、自分はベットに寝ていた。身体にもちゃんとシーツまでかけてある。


自分は寝起きなのせいなのか視界が霞んで見えた。


……涙が出てきた?。あんな悪夢を見ていたのに目頭から涙が一筋流れ出た。


涙を拭おうと右腕を動かそうとした……


‼︎ ……二の腕までは動く…動くのにその先を感じない…


自分は考えるのが怖くなってきた…まさか、そんな事……


少しずつ右腕を顔の高さまで上げて見た…上げるとシーツから出てきたのは二の腕までは膨らんでいるが、その先はしぼんだ長袖だけだった……


特別寒くも無いのに身体がガタガタ振るえて来た…震えると同時に先ほどは涙が一筋流れる程度だったが号泣していた…シーツを噛み、声を荒げない様に抑えた……


夢でも何でもねーじゃねーか……シーツを噛みながらそんな一言が無意識に出てきた。


僕は今、心の中で必死に願っている事がある…どうやったらこの溢れ出る涙が止まってくれるのか……

どうしたらこの溢れ出る悲しみと怒りと焦燥感を消し去る事が出来るのか……。


お願いだが止まって、お願い…お願いします。いくら念じてもそれらを止め事は出来ず、時間が経てば経つほどより一層酷くなる一方だった……。


「泣いている最中ですまないが、少しよろしいかね…?」


!……男の声で急に喋りかけられた。後ろの方からだ…慌てて振り向こうとしたが途中で止めた。


そういえば、あの時も自分の後方から何かが光りその後に声がした…。


今とあの時とは状況が違うが、誰かの声が聞こえたからハイ直ぐに振り向くとはできなかった。


ただ、さっき声どこかで聴いた事が……?、基本僕は母以外の人間にはさほど興味はなかったので、知り合いであってもその人の発する声質などいちいち覚えてなどいなかった。


でも、この声は違う聴いた事がある…イヤ、違う……どこかで聴いたんじゃなくていつも聴いている声だ、とごで……?。


そんな事を考えていたら溢れ出していた涙も感情も止まっていた。


「もしもし〜聴こえいないのかね…」再び後方から話しかけられた。


僕はその問いかけに答えず黙ったままだった……


ただ、この声、あきらかに自分に直ぐ後ろで聞こえる…つまり、誰かも知らない人間と今自分は一緒の空間にいる。


後ろを振り向こうとしたがやっぱり出来ない。


分かっている…ただ、黙るだけじゃ事態は何も好転しない…でも、その事態が喋った所で良くなる保証もない。


むしろ、今自分が置かれている状況は間違いなく最悪の事態だと思う。


あれが、夢でも何でもないのなら、自分が辿る道など容易に想像がつく。


そんな事を考えていたらまた身体が震える出した…自分はどうなる?…イヤだ、死にたくない……母さん……


……その瞬間、ハッとした。…母はどうなった?


左しかない手で頭を掻いた。一体全体どうなってる……えー、てっゆうか、そもそもあの現実離れした状況そのものが本当にあったのか?


実はやっぱりあんな事はなくて、このなくなった右腕も、事故か何かで失っただけなのかもしれない。


それに、この部屋…ちゃんと見渡した訳ではないが、病院の寝室にも似ている。


余計な物が何も置いていない、自分が寝かされているベットも、まさに病院に置かれている物と同じ作りだ。


心の中で少しだけ希望が湧いて来た。やっぱりあんな非現実的な事は全部嘘だったんじゃないか。


母もちゃんと無事で今病院に向かっている最中なのではないのか…ただ、自分には不安材料があった。事故か何かに巻き込まれたのが自分だけなのか?…まさか母まで……


「聴こえますかーー」突然耳元で大声で話しかけられた。


僕は慌てて飛び上がり声のした方を向いてしまった。


………えッ、そこには男性が一人立っていた。


少し黄ばんだ白いローブを全身に(まと)い、白い胴着と袴の様なズボンを履き、白い手袋を両手にはめている。右手には白い表面が凸凹した杖をついている。


髪は長い縮毛気味の白髪で、口元も長く白い髭で覆われている。


しかし、見た目以上に目を向けてしまったのが、彼の右眼にある深く大きい傷跡だった。


傷は額から頬にかけて一直線に刻まれており、切り傷と言うよりは、何かで抉られた跡の様に、傷跡が少しくぼんでいた。


左頬にも横に、二本小さく抉られた傷跡がついていた。


白髪と白い口髭のせいで、一見すると老人の様にも見えるが、顔にはさほどシワはなく、見た感じでは30〜40台前半ぐらいに見える。


ただ、今は見た目の話し何てどうでもいい…自分はこの一見すると老人の様な人物を始めて見た時驚愕した……。


今自分の目の前に立っているのは自分だった…顔のシワや背丈の違いがあるが間違いなく僕だ。


さっき声が聞こえた時、どこかで聞いた事があると思ったが当たり前だ。だって自分自身の声なのだから…。


多分僕が後20年ぐらいしたらこうなるであろう姿の人物が目の前で僕を見つめている。


母といい自分といいどうしてこう…容姿が似た人物と良く合うのだろう……。


彼の姿に唖然としつつ頭の先からつま先まで珍しい生き物を良く観察するかの様に凝視していると…「すまないが、何か話してくれないか…それとも日本語では通じないのかね…?」


彼は黙り込む僕を見かねて自分の方から再び口を開いた。


僕の方も話しかけた所で彼から何かをされそうな訳ではなかったが…今自分が置かれている現状が良く理解できず、それを処理する為に頭をフル回転させている最中だったので、当たり前の返事するら返す事が出来なかった。


僕が返事も返答もしないであたふた慌てた様子でいると「…すまない。私の配慮不足だった…今君は相当混乱しているだろう……今の君にこの状況を冷静に把握するなど無理な事……そうじゃなくてもそんな状態の君にいきなり話しかけるなんて…本当にすまない。」彼はそう言うと深々と僕に頭を下げた。


「…えっ、いや…こちらこそすみません…あのー本当はずっと聞こえてたんですけど、あぁーその……話しかけて大丈夫な人だったのかなーって……あの、本当にこちらこそすみません…。」


しどろもどろになりながらもようやく自分も初めて口を開き、僕に向かって深々と頭を下げる彼に僕も頭を下げた。


同じ顔をした男が互いに頭を下げ合う。はたから見たら可笑しな光景だろう。


数分間お互い頭を下げたまま黙っていると、先に白いローブの彼が頭を上げた。


顔を上げるタイミングをうかがいかねていた自分は、彼がもう顔を上げているのに気付き、慌てて表を上げた。


… 顔を上げると彼は少し険しい表情で、顎に蓄えたサンタクロースの様な立派な白髭を触りながら僕を見つめていた。


「…あのー、何でしょうか…?」この時になって初めて自分から自発的に言葉を発した。


僕のこの発言に彼は少し溜息混じりに口を開いた。


「…あぁ〜、そうだな…どこから話すべきか…

え〜、うん〜〜、」彼はしきりに顎髭をいじりながら会話を続けた。


「…ハァ〜、やはり君にはこの事から伝えねばいけないな……単刀直入に言おう、気が体験した事は夢や幻でもなく全て事実だ。君の母親は連れ去られ、君の住む星地球も破壊された。」


………… ‼︎、まず、こんな話しをされたら戸惑い慌てるかも知れないと思うが自分はそうはならなかった。


あっ、そっか、そうだよな……この一見すると荒唐無稽な話しに特に理由も聞かずに納得する自分がいた。


何故か……あの現実離れした事態はとても夢には思えなかった。


夢なら覚めればそれが夢だったと感じられる。やはり夢と現実なら、憶い返した時どちらが現実だったのか直ぐ判る。


それだけ夢より実際肌で体験した生身の現実の方が、脳に刻まれる力が凄いんだと思う。


だからこそ判る。あの理解しがたい光景が全て本当にあった事なんだと……


さっきベットに横たわっている時は、あれは実は全部夢で母もちゃんと無事なんだと無理やり思い込ませようとしていたがやはり無理だった。


だって、あの最悪の光景はこんなにも視界に、脳裏に、そして心にも焼き付いている。


あれが全部嘘だった何てとても信じられない。むしろ、この自分と容姿をした人物のおかげで目が覚めた。イヤ、…目が覚めたんじゃなくて、彼のさっきの発言で自分が知っていた現実に完全にトドメを刺された。


自分が今まで見て来た現実が音たてて崩れてゆく感覚がした……。


もう、自分は喋りたくも動きたくもなかった。


僕の前に立つ僕と同じ容姿をした彼は、地球が破壊され、母が連れ去られたと言った。


連れ去られたと言う事は取りあえず母は生きているのか?と思った。


だが、…この人が言っている母は僕が知っている母なのか?、それとも僕の右腕を奪った母なのか?、どっちの事を言っているのか分からなかったので、連れ去られたと聞いても素直に喜べなかった。


あと、地球が破壊された?…


僕があの赤い甲冑の集団に貨物船に無理やり乗せられて墜落するまでの間にそんな事になっていたんだと驚くよりもまず先に笑いが込み上げて来た。


だっていきなり地球が滅びましたって……そんなのどう反応していいか分からない。


悲しむのか?、怒るのか?、呆然とするのか?……。


自分の身内が何かしらの事情で死んだならこれらの感情が表に出てくるかも分からないが…

地球が滅んだと聞いた場合、脳や心はどの感情を出せばいいかだなんてその脳や心自身どうすればいいのか戸惑うと思う。


あまりにも規模がデカ過ぎて感情の波が揺さぶられない……。


……ハァ〜、もういいや、考えるのも辛くなって来た……自分や身の回りがどうなるとか?、この自分そっくりな人物は誰だとか考えるのが嫌になった。


どうせ、自分も母もロクな目に合わない。そもそも、僕が知っている、僕が愛した母が、ちゃんと生きているかも不明だ…規模を持つだけバカらしい……。


ベットの上でうなだれている僕に彼は、ハッ!

と何かに気づいたのか、僕に慌てた様子で語りかけて来た。


「…あぁ〜、そうだ、…すまない。君には一番初めに伝えなければいけない事があった。」


僕は何なんだと彼の顔を見た?…。


「私は君の味方だ。君を奴らから救い出したのも私だ。だから心配はしなくてもいい…」


僕は彼のこの発言にどこか嘘臭いものを感じ、安心するどころかむしろ不安になった。


自分に害をもたらそうとする者が、わざわざ自分は貴方を傷つけます何て、今節丁寧に答える訳はない……。


まずは、相手を信用させてから何か事を運ぶはずだ……そんな疑惑の目を彼に向けていると、彼も何かを察したのか、僕に再び語りかけて来た。


「……なるほど、君は私を疑っているのだね、

まぁ〜今はそれでいい…実際のところ私も君をそんなには信じていないのだからね……。」


…… ?彼の発言に違和感を感じた。


僕を助けてくれたと今自分で言っておいて、その助すけた僕を信用していないとはどう言う事だ?……。


僕が訝しげな顔で彼を見つめていると

「…私の言った意味が良く理解出来ないと言った顔だな、まぁ〜仕方がないさ、今の君では理解できないし……あっ!、決して君をバカにしている訳ではないぞ、断じて…私が今の君の立場なら君と同じ様になると思う。だから君のその… 人なんか誰も信じないぞ!…的な目もこの状況ならきっと正確だ……。」


この人は決して悪気があって言っている訳ではないのは判る。


途中から自分の発言に慌てて訂正を入れていると所から、僕の事をフォローしてくれ様としたんだろうが、完全にバカにしている様にしか聞こえない……。


そんな僕の様子を感じ取ったのか彼は申し訳なさそうな顔になった。


「…すまない。人とは久しく会話をしていなくてな、あぁー何だ、そのー、自分で自分のも何だが、私は元々人を少し小馬鹿にする癖があってな、そのー、いわいるコミュ症と言うやつだ……。」


「すまない……」彼はそう言うと再び僕に頭を下げた。


彼と僕は確かに同じ容姿をしているが、彼の方が僕より年を食っている。


そんな彼が明らかに自分より年下であろう人間にこう何回も頭を下げれると言う事は少なくても、僕の事は一人の人間としてはちゃんと敬意を払っているんだと思う。


数分ぐらいして彼が頭を上げた。自分よりも年上の人間に頭を続けて2回も下げられると言うは何だがむず痒く感じる。


だが、当の本人である彼はそんな事は気にする素振りも見せずに淡々としている。


「どうかしたのかね?…。」彼は訝しげな表情でモジモジしている僕に不思議そうな顔で質問してきた。


「…あっ、イヤっ、その……こう何回も年上の人に頭を下げられるのは、ね〜〜、何だが変な気分って言うか、申し訳ないと言うか……」


彼が急に僕の様子について尋ねて来たので、少し慌てた感じで答えてしまった。


「少なくても君を不快にさせたのは私なのだから謝罪をするのは当然だろう私は思うが……」


「…あっ、でも、なら謝罪だけでいちいち頭まで下げる必要何てないんちゃいます。」


「…何故、急に関西弁になる?……さっきまで割り普通に喋っていたと思うが…。」


「元々、こうなんです。頭の中で物事考える時とか、真剣に話す時は、標準語ぽっくなりますけど、それ以外は基本関西弁です……。」


「真剣に話す時だけは標準語になるか……随分と変わった“性格になったな”…。」彼はどこか楽しそうな様子でそう答えた。


「…何ですかその顔!、てっゆーか、ここはどこなんです?……貴方は誰?、あっ、人に名前を尋ねる時はまず自分からとか言わないでくださいよ…今そんな事どうでもいいですから…。」


早口気味に喋ったので、少し息が乱れてしまった。


「それだけ喋れる元気があれば、まぁ〜取りあえずは大丈夫になったと判断してもよろしいかね…?。」


「大丈夫って何がですか?…。」僕は喉を押さえながら彼にまくし立てる様に返した。


「心の方がだ……。」彼は自分の胸に指を突き立てそう答えた。


…………僕は彼のこの発言に直ぐ返す事が出来なかった。


確かに今さっきは彼との会話であの事を一瞬の間忘れていたが、彼の言う大丈夫が心の傷の事なら、答えたはNOだ……。


大丈夫な訳がない。


僕は再び沈んだ顔でうつむいてしまった。


「…すまない。私はまた余計な事を言ってしまった様だね…。」彼は自分の発言でうつむいてしまった僕に申し訳なさそうな表情で謝罪をして来た。


「…あっ、いえ、気にしてませんから…。」


…………………………………………………………………


再び二人の間で沈黙が続いた。話かけた方が良いのかと思ったが、自分の方から話始めるのは何だか気がしれて出来なかった。


先に動いたのは彼の方だった。彼は僕が寝ているベットに腰を下ろし、僕の方を見ずに淡々と話始めて来た


「君は先ほど私が誰か聞いたがそれは必要ないのかと思い言わなかった。」


うつむいていた僕は彼の方を見た…。


僕は彼の方を振り向いたが、当の彼は、僕の方を一切見ずに話しを続けた。


「君は私を見た瞬間…もう私が誰か君には分かっているからだ…。そうだろ、藍田(あいだ) (えん)


彼は腰を下ろしていたベットから立ち上がり、僕の方を見て

「私も君と同じ、アイダ エンだ… 。」彼はそう言い放った。


僕は何か言いかけたが引っ込んでしまった。

ただ、何故だが分からないがこれだけは分かった。


顔も名前も同じだからとかそう言う理由を抜きをしても、この人は自分の敵ではないと…信じられる人物だと…。


…イヤ、信じるとか信じないとか思う事すらこの人の尊厳を侮辱するおこがましい行為だと思う。


どうしそう思うのか自分でも不思議だったが、自分の心の更に奥底にある何かがそう叫んでる気がした……。


彼…アイダ エンは僕、藍田(あいだ) (えん)を鋭い眼光で見つめていた。


しかし、その目は鋭くはあったが、誰かを傷つけ侮辱する様な眼差しではなく、確かな決意とそして、その瞳を見ただけで暗闇に閉ざされそうな者を導き灯す、熱き炎の様な希望を僕は感じた……。








































































































お忙しい時間の中読んで頂いた皆様ありがとうございます。

何分小説を書くのはこれが初めてなので、見るに堪え無い部分もあるとは思いますが、それでも楽しんで頂けたのなら筆者トマトジュース的には幸いです。

これからも不定期ではありますが、どんどん次話を投稿して行ける様に頑張ります。

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