ー壱の談ー皆を狂わせた意思
影遠の里の日常をここに記しましょうーーーー
「ねぇねぇ、今日は何読んでるの?」
「…本」
とても純粋できれいな笑顔で話しかけるのはマリィ・スマイル。黄色い短髪、薄いオレンジ色の瞳で橙色の服を着、頭にオレンジ色のリボン、透明なのだが外側が薄く黄色い二対の楕円形の羽を持つ女の子の妖精だ。こたつに入ったまま素っ気なく返したのは弥七蛇 三一納。空色の長髪で白と見間違うほどの薄い空色の瞳、緑色の服、首にはヘビのような模様が描かれた長いマフラーを着けている
「そんな無愛想に答えなくてもいいじゃんみいなー」
「これ意外にどう答えろと?」
このやり取りも毎度変わるが生活に馴染んでしまっていてもういつものことだ
「そうやってるから周りに人がいないんだよ?」
「…うるさい」
いつものように返すがやはりマリィはすごくきれいな笑顔で顔を覗き込む…手に藍色のピアスを持ちながら
「はぁ…。わかった、遊んであげるからどいて」
「はーい」
もちろんマリィがこうやって言ってくるときは遊びたいというだけだ、なぜマリィがピアスを持っているだけで素直になったかというとマリィの固有札がそのピアスだからだ
マリィの固有札は【笑う顔に狂闇】というもので文字からして狂闇が気になるが主な能力としてはその笑顔のままの威圧や少しの洗脳だ
そんなマリィが強行手段にでようとするなら早々にお手上げだ
「それで?マリィ今日は何するの?」
「今日はおはじきしよう」
「へぇ、今日は他のは呼ばないんだ」
「うん、今日は二人だけだよ」
へへへと笑いながらきれいなおはじきを並べていく
「で、ルールは?」
「おはじきたくさんあるから30個テキトーに並べて手元の10個のおはじきを弾いていって何個とれるかだよ」
「そう、簡単ね」
「でしょ?」
そうして明るかった外が暗くなるまで遊びマリィがいなくなったあとは本の続きを読み始めた
いつものように本を読んでいると暗かった空が明るくなったので思い出した用事を済ませるために外へと出る
三一納の家は和風で大きな家で近くに大きな山があり山とは別の方を向くと町が見える場所つまり山の麓にある
そしてその用事は山のどこかにあるモノの管理で50年周期で見るようにしたのだ
それが今日で全く覚えていなかった三一納はマリィのお陰で思いだしたのだ
「やっぱり面倒なんだけど、誰か代わってよ…」
ため息を吐き愚痴をこぼすができる人は三一納ぐらいしかおらず代わってくれる者は遠い場所にいるのでそこまでいくならまだ山を登るほうが楽なのだ
そんな感じで目的の場所につくと管理していたモノの代わりに真っ黒の大きな球体があった
「なにこれ」
面倒と思いながら辺りを見回すがこれらしい人物はおらずもう一回球体を見、一枚の札を取り出す
「…固有札、【漂空の上下】」
三一納は固有札を迷いなく使う人なので結構周りから危険人物扱いは受けているが即決即断はやはりいいことで効果はすぐに現れた
三一納の固有札【漂空の上下】は簡単に言えば空気を操る能力だ
それを使い黒い球体の近くに空気の漂わない真空状態の場を作りだす、そしてその真空状態の場に黒い何かが吸い込まれるようにモノから剥がれ一部に浮遊する
「これでできて良かった、できなかったら……いいや」
できなかったらどうしようかと思ったが特に思い付かなかったので気にせず黒い何かに覆われていたモノに近づく
それは大きな石で高さは2mあるかないかぐらいのモノでぱっと見本当に石だ
左手を伸ばし石に近づけていると後ろから怒った声が聞こえてきた
「何てことを!このぉ!今度こそ倒してやる!」
後ろを向くとボブカットの白髪、赤色の目、黒を基調とした服、背中には赤が特徴的な翼をもった吸血鬼、キュラミス・ドラドレスがいた