-伍の談-鬼と人と精霊とエルフと
2019/07/29修正
「なああああああ!」
違和感を覚えた状態に新たな幻をかけられたせいで強制的な意識の改変にずれが生じ何とも言えない痛みが頭の中をジグザグに駆ける。そんな状態ではまともな思考などできるはずがないのに静めようとその一点に集中できたのはさすが上のクラスに属する鬼と言えるだろう
三一納は幻妖がリンゼットと仲良く話している隙に対策を練るために三吉に向くが
「…今は駄目か。更科」
「はい、なんでしょう三一納」
少し賭けの要素が高かったのだがどうやら当たりを三一納は引き寄せたらしい
「…貴女は大丈夫なの」
「私の得意分野でもありますから。まあ他人に対して治すことも防ぐことも出来ませんが」
「…もともと貴女が恵みを与えられるとは思ってないわ」
「そんなにひどく言われます?」
「…とにかく、この状態を何とかできない」
「恵みを与えられないと言ったのは誰ですか…。はぁ、私の固有札を使っている間に説得、なんて無理でしょうし私の能力は使わせてもらえないのでしょう」
「…許可を出すわけがないわ、それに貴女は能力を使いはしないでしょ」
「まあ使いませんが駄目だと思えば使いますよ」
そんなやり取りをするが一向に解決策は出ない
そう考えているところにネティーショが不思議そうに一言
「……ねぇ、何がしたいのか分からないけど“言魂”使えるんじゃない?三一納は無いだろうけど」
「…あ」
「そうですね、言魂の中になら…ですがまずどこから手をつけるんですか?」
「…面倒だから幻妖を捕まえて」
「はいはい」
言魂(固有札や本人たちの能力、技術を技名にしたもの。技名、つまり言魂を意識して発すると自分の思う能力を使える。)という発想は三一納にはなかったが聞いて考えてみれば言魂は個人個人のできる範囲のことを自らが決めて作るものなのだから侵食など他人に悪影響を及ぼす能力を持つ紅葉ならば転じてこの場なら治すとまでできずとも幻妖の計画を狂わすことができるかもしれない
そう考えた二人だったが三一納のめんどくさがりな性格から幻妖を捕まえることに決まった
ネティーショに三吉を見ておくように言い、まずはと三一納が幻妖とリンゼットに近づく
「…ねえ幻妖。いつまでこのままなの」
「え?ずっとだよ。当り前じゃない、楽しいことはずっとしたいでしょ?」
「そうですよね楽しいことが一番ですから」
「…そうね」
幻妖の言いたいことは分かる、ただここでこの場の全員を縛り付けることは良しとはできない
「…でもね、外に出たいって言ってるわ」
「え、誰が?…」
「【静なる心】」
【静なる心】そんな言葉とは正反対に思えるような黒い触手のようなものがうねうねと幻妖に近づいていく。その時リンゼットが幻妖の前に飛び出すが黒いモノはリンゼットのお腹部分をすり抜け幻妖もすり抜ける
紅葉の言魂はきちんと効果を発揮し幻妖もリンゼットも倒れ込む
「…これ、死んでないでしょうね」
「そんなわけないですよ。これはただ頭が真っ白になったようになってるだけですよ」
「…それもそれよ…」
「さてどうしましょうか」
「…そうね」
そう悩んでいると三吉が頭に手を当てながらふらふらと近づいていた
「あぁ…はぁ、おぬしら良く見ろ。幻妖が倒れたことでまともに幻をかけられていた者たちは意識がないんじゃ。じゃったら紅葉が操ればいいじゃろ」
「そうですね、それでいいんですか?」
「…この際文句はないわ」
「ではそうします」
言魂は2話ほど前に考えていた後付け設定ですwwまあこれからも設定は増えてくだろうし大丈夫でしょう