-壱の談-落りた礼鬼と堕りた恋鬼
この章は前回の場所から離れます(あんまり離れない)
影華の意思がある山とは違い季節に関係なく所々で紅葉、黄葉、褐葉などいろいろな紅葉が見れる山、宝葉山。そのてっぺんには和風建築の豪邸が一軒ある。ただほとんどのものはそこまで行ったことはなく“家がある”と知っているだけだ。
その家には一人の鬼とその配下の鬼が住んでいる。
「紅葉」
「はい、なんでしょう三吉」
紅葉と呼んだ少女は藤原三吉という鬼だ。髪は薄茶色で目は緑色、服装は本当に水が流れているような模様が描かれた水色の和服、額には一本の美しい角がある。そして紅葉と呼ばれた女の子は更科紅葉という同じく鬼だ。紅葉色の髪に緑の目、服は濃い黄色で頭に白い捻じれた外側を向くような角が二本、その根本に本物の紅葉のような髪留めをつけている。
この二人は主と配下の関係だが紅葉は全然配下らしくない、なにせ…
「一応、様ぐらいつけたらどうなのじゃ?」
「はいでは。三吉さm…ふふっ」
「はぁ…」
ずいぶんと親しい間柄のように見えるが紅葉が“そういう性格”なだけだ。まぁこの影遠の里では主従関係があってもだいたいこんな感じだが
「とにかく、明日じゃなかったかの?祭りは」
「そのはずですよ」
「じゃったら明日出かけるぞ。酒を飲むんじゃ!なははははは」
「ではお供します」
「むう、おぬしは村に帰ってもいいんじゃぞ?」
「いえ一応配下なので三吉を一人には出来ません」
「それはわしの背を見て言っているじゃろ」
「…そんなわけあるわけないじゃないですか」
「おぬしもそんなに変わらんじゃろうて!」
「何のことでしょう」
そんなこんなで夜が明けてすぐに支度をし山を下る
祭りを行う村は山から南西へ少し離れた大地の村と呼ばれる村だ。そこは200年ほど前まである者が村長としていたのだが亡くなったため村長不在の村となった
道中は何もなく朝ごはん用に紅葉が作ったおにぎりを食べながら歩いていた
昼ごろにようやく村に着き人々から聞こえる楽し気な声に一層興奮が高まった
「紅葉!向こうの屋台に行くぞ!」
「はいはい」
一番最初に目に留まったのは髪も目も服も黒い人形が飾ってある焼き鳥の屋台で三吉は走っていく
「正肉2本とねぎま2本お願いなのじゃ」
「はーい、少し待ってねー」
「ん?おぉリンじゃないか」
「あ、三吉さん」
「久しぶりじゃの。あやつがいなくなってから大丈夫かの?」
「えぇ、寂しくはありますがあの人からはいろいろともらいましたから」
「そうか、よかったの」
そうやって話す屋台の店主は女のエルフのリンゼットだ。髪は自然を思わせる緑色の長髪で目は右が赤く左が薄緑、服は緑で木の葉のような模様が描かれている、腰には木の棒のようなものを携えている。
リンゼットは今のところ一番の新人だ、250年ほど前にここの村長であった祈土路雨流という男に連れてこられた者だ
「はい正肉、ねぎま2本ずつ」
「ありがとうなのじゃ。また来るからの」
「待ってますね。紅葉さんもまた今度」
「えぇ」
何か面白そうな店などはないかと探しに歩きながら先ほど“買った”焼き鳥を紅葉とわけて食べる
しばらくすると急に裏路地に興味が引かれた。よく見ると桃色の髪をし紫の目、服には小さな紫色の花がたくさん描かれた白い和服、額には根本は紫でそこからは桃色の2本の角を持った霊鬼の少女がいた
少女は手招きをしながら「鬼様こちら」とくすくす笑っていたが三吉は「ひぃぃぃぃぃ!」と悲鳴を上げながら紅葉の後ろに隠れてしまった