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秘策

「お二人さん一体何を話してるんだ?」


2人でこそこそと話すイーナと老人に、リクルドは怪訝そうに尋ねた。

やはり殲滅など無理だと理解してもらえたのだろう。いくら腕に自信があるからと言っても、人間には限界がある。千を超える魔物、しかもヘルハウンドなど物理的に不可能だ。併呑する森近くの街の住人が、なるべく犠牲にならないような方法でも考えているのだろうとリクルドは思っていた。


「いえ、どの方法を使って殲滅しようか相談しておりました」


リクルドとハナンザは老人の言っている事が一瞬分からなかった。少しして、未だに殲滅しようと考えている事を理解し、既にこの老人は耄碌しているのかと思ってしまった程だ。


「じ、ジーさん確かにあんたの魔法は凄いが、魔力は有限だという事を忘れちゃいないよな? あの魔法を何百と打ち込める人間なんていやしない、せいぜい古の魔王ぐらいだろーよ」


ここで老人は、自分のさっきの剣技を魔法という事にしていたのを思い出した。素性を隠すためであったが、千の群れを一掃すると言うには剣士であるというよりも魔法使いである方が都合が良い。


「確かにヴェルヌーイなら…… ふむ。そうそう、私とあるアーティファクトを持っておりましてな」


老人は古の魔王という言葉を聞いて何か思いついたようにそう言った。


「アーティファクトねぇ」


ハナンザとリクルドは気づいていないようだが、イーナは老人の大根役者ぶりに呆れている。もちろんアーティファクトなどでたらめで、老人がアーティファクトなど持っていない事は知っている。誤魔化すための適当な嘘なのだろうとイーナは思っていた。


「アーティファクト? ジーさんそれって遺跡とかでごく稀に発掘される隆盛時代の遺産の事か?」


「ええそうです、イーナさんあれを」


老人は、この前買った奴を貸して下さいと小声でイーナに頼みながら手を差し出す。


「はぁ、はいはい」


差し出された物はさまざまな色に光るガラス玉だった。確かに綺麗ではあるが、特別な力が宿っているようには全く見えない。


「これがアーティファクトなのか? 俺にはただのガラス細工にしか見えないが……」


それもそのはず、リクルドの言った通りただのガラス細工である。先日寄った街で老人がイーナに買ってあげた物だ。


「イーナさん、これ光らせたりできます?」


老人はまた小声でイーナにそう頼んだ。アーティファクトと言うには流石に少々厳しく、加えてA級冒険者となれば一度くらいアーティファクトを見たこともあるはずなので、誤魔化すにも無理があったのだ。


「面倒な事させないでくれる?」


イーナは文句を言いながらもガラス玉が淡く光るように魔力を込めた。先程よりも存在感が増し、幾分かそれっぽくなる。


「いや、よく見たら何か魔力を感じないかい? あたしは魔法が使えないからよくわからないけど」


淡く光るようにした事でハナンザは納得してくれたようだ。リクルドも言われてみれば確かに、と少し懐疑的ではあるが納得してくれた。2人とも戦士であり、魔法はからっきしであったのが幸いした。


「ジーさん、このアーティファクトは一体どんな力を持ってるんだ? これであの犬っころ達を殲滅できるのか?」


「えーっと、そうですな。古の魔王による、大魔法が封じられていると聞いていますな」


リクルド、ハナンザそしてイーナの三人が微妙な顔をしている中、老人が一人満足げにそう語るのであった。


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