合流
「リクルド!! あんた生きて……!」
自分のために死んだと思っていたリクルドが生きていてハナンザはとても驚いていた。それと同時に一緒にいる老人が何者なのかも気になっていた。
「あぁ、こちらの御仁が助けてくれてな。なんとか生きてるってわけだ」
「そうか、同僚を助けて頂き感謝する。あなたは一体?」
「あー、ジーさんは凄腕の魔法使いだ。風の魔法だと思うが、12頭のヘルハウンドの首を同時に落とす大魔法使いだ」
リクルドの紹介を聞いたイーナは随分と可笑しそうに笑っていた。老人は魔法使いでも無ければ、ジーという名でもない。ジーという名は爺という意味だとイーナはすぐに分かった。
「凄腕の魔法使い? それにジーさんねぇ……、ふーん」
「……ゴホン、ま、まぁそんなとこです」
イーナに何か言われる前にと老人は話題を流そうとする。
そんなイーナの様子は視界に入っていないのかハナンザはリクルドの紹介を聞いて驚いている。
「12頭のヘルハウンドを同時に!? そんな魔法が……」
「イーナさん、お願いしますよ? お二方、私の事はいいですから、併呑する森を出る事を優先しましょう」
笑い続けるイーナに自分の正体を明かさないように念を押しつつ、老人は併呑する森を出る事を優先させる。
「無事王国に帰れるようお手伝いさせて頂きます。一応腕には自信がありましてな」
「あぁ、恩にきる。あたし達は生きて王国に帰り、ヘルハウンドの群れの存在を閣下に伝えなきゃならない」
一行は併呑する森を出るべく、走り始める。もちろんイーナと老人はリクルドとハナンザに合わせて走っている。
併呑する森は、高さのある木が多い事もあり、昼間でも薄暗い。幸いな事に、草などは大きくて腰程度の高さまでしかなく、身動きが取れないという事はない。また、深部でなければ、ぬかるんだ地面に足を取られる事もない。
唯一移動する際に気をつけるのは、原生生物以外であれば、木の根に躓かないようにするだけだ。
とは言ってもこれだけの数があると簡単ではない。現にA級冒険者であるリクルドとハナンザも足を取られたりしている。
イーナと老人については軽い足取りであった。
「そういえば、その閣下についてお聞きしてもよろしいですかな?」
「あぁ、人種最強の戦士、グスタシオン・エル=ロード王さ」
「閣下は、かの災厄ノ龍の眷属を一人で屠った事もある御方だ。ヘルハウンドの群れとそのリーダーを殲滅できるのは閣下しかいないだろう。今回の併呑する森の調査結果を、俺たちは閣下に伝えなきゃなんなねぇ」
「あぁ、あの子ですか」「あの坊やの事ね」
イーナと老人は妙に納得したように、そう頷くのであった。
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