表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

場違いな老人

およそこの場所に全く似つかわしくない二人が併呑する森を足取り軽く歩いている。


一人は焦げ茶色の着流しを纏った白髪の老人、眼光は鋭いが、常に上がっている口角が好々爺然としている。


もう一人は真紅のドレスを纏った美しい女性。その女性は少女というには艶やかしさがあり、貴婦人というには若々しいそんな人物で、血のように赤い瞳、初雪のように白い肌、長く伸びる髪は銀糸のようであった。


「イーナさん、何か物騒な音が聞こえる気がするのですが」


「動物同士の小競り合いなんて興味無いわ」


イーナは、さも興味がないという素ぶりで言い放つ。


「はっはっは、あなたにとっては人間も動物の1つに過ぎませんか。私も動物という事になりますな」


「あなた、自分の事を人間だとでも思っているの?」


「冗談ですよ。それよりも一日一善、困っている人が居たら助けに行かねば。弱い方に味方するのが私の方針ですので」


老人は女の言いように若干府に落ちない様子であったが、まぁ良いかと流す事にした。


「はぁ、言うと思ったわ。全く、面倒くさい人ね」


若干のイラつきと呆れを含んだ物言いだが、その言葉に突き放すような冷たさは無かった。


「そういう性分なんですよ。ではさっそく、イーナさんにはこっちに走ってくる女性を頼みますな」


そう言うと老人は目にも留まらぬ速さで駆け出した。


「もうっ! あたし手伝うなんて言ってないのに!」


後ろの方でイーナの恨み節が聞こえるが気にしない。イーナがなんだかんだ言って手伝ってくれる事を、老人は知っていた。

老人は叫び声や戦闘の音を頼りに走る、悪路を物ともしない足捌きでみるみると目的の場所に近づく。

周囲の景色は流れるように過ぎていった。


「なるほど、ヘルハウンドの群れですか。もしA級冒険者程度の者しかいないのであれば全滅もあり得ますな」


少しして、一人の男を見つけた。

右足に重傷を負い、おそらく走れないのであろう。しかし男の目には覚悟があり、相当な決意を持ってそこに立っているのは分かった。

8頭のヘルハウンドに睨まれて怖くない人間などそうそう居ない。だがその男は、震えるどころか少し笑っていた。


間違いない、ここで見殺しにするには惜しい人材であった。

老人は仕込み刀の杖を抜刀し、一息にヘルハウンド達の首を両断する。

まるで空を切ったかのような、抵抗を感じさせない太刀筋であった。


「男の覚悟というものは、いつの時代も格好いいものですな」


老人の言葉には素直な賞賛があったが、目の前の男は目を見開き、ただ呆然と老人を見ていた。

ご意見ご感想、ブクマお待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ