ハムサ 第3話
戦力の増強は武器だけに留まってはいけません。
戦闘員自身の戦力増加も必須、そのためにはレベルアップが最優先の課題となります。
ゴブリンという種族はいかんせん弱過ぎる、身体は小さいし筋力もそこら辺の人族にさえ負けてしまいます。
下級魔獣程度なら兎も角、いくらボウガンがあるとはいえ中級魔獣には歯もたちはしません。
『錬成術』を使えば強い武器は確かに作れはしますが、材料がないのではどうしょうもありません。
これに関しては、そろそろ活動範囲を広げてみようかと思います。
今まで、ぼくたちは洞窟の中にこもってばかりでした。せめて、下級魔獣の素材があればもう一つ上のランクの武器をつくれます。
ランクは区分はこんな感じです。
《洗練級》
《卓越級》
《希少級》
《精良級》
《普通級》
《劣悪級》
今のぼくに作れるのは精々《希少級》の武器で、魔獣の素材無しにはこれが限界になります。
更に言えば、《希少級》も数少なく、ぼくと一部の側近しか所有していません。一般的なゴブリン戦士は《普通級》まで持つことが出来ません。
《精良級》に関してはまあまあな量を確保していますので、戦闘に備えて備蓄しています。
これでも良い方なんです。
そもそも普通の素材は《普通級》しか出来ないから《普通級》と呼ばれているのです。
それを、無理矢理《精良級》まで高め、尚且つ偶にではあるが《希少級》さえも作れている。
これを知った上で考えて頂きたい。
ぼくは十分…
いや、十二分に頑張っているのでは無いでしょうか!
とはいえ、頑張ったとしても、勝てないようではどうしょうも無い。
襲ってきた敵に、頑張りを評価して貰おうとする摩訶不思議な思考回路の持ち主は四にいくらいで結構。
しかも、四にぃの場合頑張るのは手加減の方で死ぬのは敵。こっちは頑張って強くならないと死ぬのはぼく。
種族のスペックの高さがこうも赤裸々に表れますと、世知辛さがしみじみと感じられます。
かといって、文句を言う余裕など、ぼくにはありはしません。
現在戦えるゴブリンは全部で160程。
それを1チーム20鬼の8チームに分けて、6チームは洞窟の周辺を探索させています。
下級魔獣程度なら、20鬼くらい足りることは数十回の経験によって証明されています。
万が一の時に、隊長クラスに持たせている連絡用の晶石があります。連絡用と言っても、大きな音を出して仲間を呼ぶだけですから言葉を伝えることは出来ません。
緊急ということは伝わりましょうが、どのような状況で、敵の数も何も分かりません。
言葉を伝えられる道具は、魔獣の素材無しには到底作れはしません。少なくとも、『最高錬成師』のジョブを持つぼくが出来ていないのですから、余程の怪物じみた奇才でも無い限り無理です。
今回の魔獣素材収集もとい初回は、戦えるゴブリンをほぼ総動員してやらせているのですから、正直言ってもし今に侵入者が襲って来たらかなり厳しい状況です。
流石に手元に全く兵力が無いとどうしても不安になりますので、2チームだけ残してありますが、あくまでクーデター防止の為であって、侵入者対抗には心許ない限りです。
ここまでぼくの話ばかりで飽き飽きして来た頃かと思いますので、他も紹介してみましょう。
普通のゴブリンは、というより殆どの種族は本当の意味での名前を持ちません。
ゴブリンも人族も呼びやすいように名前をつけたりしますが、それは真の名前ではありません。
一部の選ばれた存在にのみ、自分もしくは他者につけることが出来るのです。
例えば、『ゴブリンキング』のぼくが『王の加護』を行使すれば名前をつけることが出来ます。
ではまず、
一番隊、隊長『ゴブイチ』
二番隊、隊長『ゴブニ』
三番隊、隊長『ゴブサ』
四番隊、隊長『ゴブシ』
補佐官、『ゴブスケ』
の以上5名が、当集落の『名前持ち』になります。
普通に見ればお気づきになるかと思いますが、ゴブスケ以外全員数のそのまんまです。
五番隊の隊長は多分『ゴブゴ』に名付けられると思います。『○ルゴ』を彷徨させる名前ですね。
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その後、まさか五番隊の隊長が本当にスナイパー系統のジョブになると知り、ぼくが驚いてしまうのは、もう少し後の話。




