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タラータ 第1話

新しい人入りました、盛大な拍手でお迎えください。

 僕はタラータ・ヒグチ。

 転生というヤツをしているが、まず、一言ツッコもう。

 この世界の成長速度がおかしい!

 僕はまだ生まれて一年経ってないのに、五歳児並みの体格になっていた。

 この世界では一週間で歩き、一才か二才で会話が出来るのが普通、らしい。しかも小学生かそれ以上の会話能力。全くびっくりである。


 五才でもう学校に入る。僕が五才の頃はまだ加減法に苦労していたのに、この世界の人は乗除法を難なくクリアできる。というか、中学校の内容をやっている、らしい。僕はまだ学校に行っていないから。


 認めよう、この世界の人は地球の人より遥かに進化している。地球では人が成長するのが遅く、理性を持ったら忙しく生き、忙しく死ぬ。

 ちなみに、日本は過労死大国であり、自殺大国でもある。


 僕は始め、何処かの貴族の家に生まれたかと思ったが、それが全く違う。ここはいわゆる神殿というところ、らしい。僕は神殿に急に現れた、らしい。この世界に来た直後は意識がはっきりしなく、気づいたらもう揺りかごの中にいた。

 この“揺り”かごというのは本当に名前どおりで、とにかく揺れる。何回吐きそうになりながらも耐えたことか。

 さすがに一週間過ぎれば、普通にベットで寝かせてもらえた。


 少し逸れた話をすると、僕はまだこの世界の人とまともに話をしたことがない。

 一歳児だから、まだちゃんと喋れてるとは言えないから、当然と言えば当然なのだが。理解不能な程ではないはず。

 それに、みんな僕とはあまり一緒に居たくないらしい。

 使用人たちも食事を置いたら壁際で直立不動している、それで、気が利かないかというと違う、そんなんじゃない。むしろ気が効きすぎる。

 ソースが服に垂れそうになったら、目にも止まらぬ速さで回収した、らしい。服につく前に目の前で突然消えたから、はじめは困惑したけど、メイドから説明があったからなんとか理解した。


 説明するまでもないが、この世界は当たり前のように魔法があるから、風呂に入らなくてもなんともない、というかそっちが主流である、らしい。

 そんなある日、僕が“お風呂に入りたいな〜”と“僕以外誰も居ない”自分の部屋で呟くと、その日の晩には僕の隣の部屋がなんとも豪華な風呂場になっていた。

 メイドさん曰く“この程度でしたら、五分も掛かりません。”と、魔法は偉大ですな〜。


 と、こんなように僕ごときでは身に余る程良くして頂いておりますが、それ以外は会うこともありません。

 ベルがあって、鳴らせば来てくれるが、あまり使ったことがない。

 そこはやはり社畜根性が抜けきれないからであろう。“その程度で人様を煩わせてはいけない”という言葉は、徹底的に僕の思考回路に組み込まれている。


 たまに、もしかしたら、嫌々やらされているのかもしれない、と思ったこともある。みんな無表情に近いから、何を考えているかわからないけど。


 みんなといっても、メイドと執事が一名ずつだけである。そして、何故か名前を教えてくれない。始めて聞いた時は“恐れ入ります”の一言で、急に地面に頭をつけた。僕はあわあわパニクったが、追求する意思がないと彼女は見て、事なきを得た。

 何はともあれ、この世界の基準がわからないけど、僕からみたら相当高い水準と見える。

 ここは神殿だというから、ギャグ神が取り繕ったのかもしれない。


 以上を見れば、確かに非の打ち所がない程素晴らしい高待遇である。

 むしろ、彼女を土下座させた僕の血祭りを提案しようとする方さえいるかもしれない。というか、前世の僕だったら、血祭りに協力したかもしれない。

 だけど、僕の現状をもっと知れば、少し僕の気持ちがわかるかも知れない。


 僕はこの世界に来てからこの部屋の外を知らない。

 こう言うと、“赤ん坊なんだから、外に出さないのは当然”と言えばそうかもしれない。いや、確実にそうだろう。そんな危ないことをさせるわけがない。


 だが、そんなのじゃない。

 僕のいるこの部屋、ここには窓がない。換気は魔導具を使って、空気を浄化してるらしい。健康のために、普通の明かりだけでなく、擬似太陽もある。曰く、本物の太陽と違って、有害な影響がないらしい。こっちは魔導具ではなく、科学製品だという。

 ファンタジーとSFがコラボしている。


 もう、お気づきだろうか。

 そう、僕は監禁紛いなことをさせられている。

時系列はみんなバラバラに近い状態です。

それぞれの世界の時間の流れが違いますので、お気になさらず。

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