第9話 におい
同じクラスに好きな女の子がいる。
「喜多見、おはよー」
「おはよう、蟹沢くん」
挨拶だけして席につく。俺、魚臭くなかったかなとスンスンと自分の手を嗅ぐ。
うわっくせぇ、身体中に生魚の臭いが染み付いてやがる。親父が朝ギリギリで俺に魚の陳列をやらせたせいだ。くそっ絶対、喜多見に臭いって思われた死にてぇ。もう寝た振りしよ。
「蟹沢くん、元気ないね。どうかした?」
「えっ、うわっ喜多見。どーして」
いきなり声をかけられ驚いてしまう。
「びっくりさせてごめんね。でもいつもはもっと元気なのに。蟹沢くん元気なさそうだし。心配で……」
俺のために喜多見はここまで心配してくれる、なのに俺は生魚の臭いで落ち込んで喜多見に心配かけた。なんか俺すごくカッコ悪くね。
「俺は至って元気だから、心配するなって」
「ほんとに?」
「おぅ」
そう言ったら喜多見は安堵した様子だった。
「蟹沢くん、これもしよかったら使って。魚臭いのが取れるよ」
えっ……その言葉に蟹沢はフリーズした。
「ここに置いとくね。じゃあまた後で」
そう言い仲の良い女子メンバーの元へ向かって行く。机の上には柑橘系の制汗シート。
俺ってそんなに魚臭い?生魚の匂いそんなにこびりついてる?自問自答しながらフリーズしている蟹沢を見た友人は肩をポンと叩いてドンマイと声をかけたが、彼に聞こえたのか聞こえなかったのかは定かではない。
はじめましての方もはじめましてじゃない方もこんばんは紫紀です。今日も花粉がすごいな。みなさんは平気ですか?私はダメです。
今回のお話は蟹沢くんと喜多見さんのお話でした。喜多見さんみたく知らずに相手を傷つけちゃう人っているよね。蟹沢くんドンマイ
それではこの辺で失礼します。ばいちゃ