第18話 大嫌い
好きな人に告白した。振られた最悪
教室に戻り鞄を持ち、涙を流しながら走って帰る。
下を向きながら走っていたためドンッと人とぶつかってしまった。
「す、すいません」
「おっ、なに泣いてんの」
「げっ、乙丸」
見上げればニヤリと悪い顔で笑っている同じクラスの乙丸辰也がいた。
「げっ、ってなんだよ。宍倉」
宍倉は乙丸のことが好きではなかった。むしろ嫌いだ。お調子者でよく人をからかっている。
「もしかして、告白して玉砕って感じ」
「帰る」
こうやって人の痛いところをつくところが大嫌い。
今日は最悪だ。振られた上に乙丸に会ってからかわれて、ほんとうに最悪だ。
そう思いながら廊下を走る。
「走ると危ないよ~、段差に……あちゃ~」
乙丸が言い終わる前に見事に宍倉は段差に躓き転んだ。
「うっ、ほんと最悪」
無様に転んだ姿を乙丸に見られた、嫌いな奴に見られた。最悪
もう顔がぐしゃぐしゃだ。ほんとうに最悪だ。
「大丈夫?はい」
乙丸は宍倉に近づき手を差し伸べた。
「自分で立てるし」
そう言いゆっくり立ち上がる。
「すごいブサイクな顔してるね」
「知ってる……」
涙と鼻水が溢れて顔がぐしゃぐしゃなことぐらい知ってる。
「でも俺、ブサイクな宍倉さんも好きだよ」
「はっ?」
「告白失敗して俺嬉しかったんだよ。まぁ振られることは予想してたけど」
意味わかんない、人が告白して玉砕した後に告白してくるとか意味わかんない。
「まぁパンツの柄がパンダさんだったのはダサいなって思ったけど、そこも好きだよ」
「……、大っ嫌い」
教科書が入った鞄を思いっきり振り乙丸の顔にヒットした。そして足早に宍倉は去って行った。
「イタタタタ、今のはちょっと痛かったなぁ」
と頬を撫でながら宍倉の後ろ姿を見ながら呟いた。
こんにちは紫紀です。
第18話『大嫌い』の閲覧ありがとうございます。今回のお話は乙丸くんと宍倉さんのお話でした。いかがでしたか?お楽しみ頂けたら幸いです。
それではこの辺で失礼しますsee you again.....