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スポーツ

作者: 噺 角蔵

 人生はまるでスポーツだ。

 そう思ったのは、時間が分刻みだから。時間? 誰の? あたしの。

 赤い時計が、ぎらぎら光沢を放ちながら、あたしを見つめている。あと5分。高校受験という人生初の、人生をかけた戦い。これであたしの人生は決まる。右か左か、上か下か。はたまた北か南か、東か西か。

 苦手な数学の問題。こいつをあと四分で解かなければいけない。無理。出来ない、わからない、時間ない。雑念との闘い。それはまるで、頭上にボールが飛んできた時のよう。打つか、打たないか、よけるか、掴むか。どうしよう。あと三分。カップラーメンが出来上がる時間。いや、ウルトラマンの戦闘時間? 違う。今はあたしの戦闘時間。

 良い高校を出て、良い大学に入って、この先明るい未来が待っている人生。なんてことは思わないけれど、今はただこの七年分の過去問が詰まっている問題集を解かなければならない。ペンを握る右手が痛い。本番でもないのに、どうしてこんなに手が滑るのか。滑る、滑る。ああ嫌な言葉。やばい、あと二分。もうだめだ。息が続かない。水泳だったらそうなって、水面から顔を出すところ。わかんない、わかんない。

 このままでは、何者にもなれない。その気持ちが強くあたしを急かす。せめて手に職をつけたい。大学なんてまだ考えられないし、今の今で精一杯だけど。ここでペンを投げるのは自由。でもそれをしないのは、出来ないのは、何者にもなれない自分がペンの先にいるから。

 あと一分。滑るペンを握りなおした。

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