Tenpure 2-4 壱
「起きて!起きて!起きて!」
僕は昨日の疲れを残さないようにグッスリと寝ていたはずなのに、何者かが10分にわたって僕を揺すり続けたので否が応でも起きてしまう。
「起きてる!起きてる!」
僕の意思表示もなんのその、揺さぶられ続けていた。
「あら、おはよう」
僕を揺すっていたのはやっぱりコールラウシュさんだった。
10分も揺するなよ、頭おかしいのか。
僕はキレていた。
プンプン!
僕はベッドから立ち上がろうとしたが、さっきからずっと揺さぶられ続けていたので三半規管がボロボロだった。
立ち上がろうとして床に頭を打ちつける――と思ったがギリギリのところでコールラウシュさんが僕を抱えてくれた。
あ、この展開は前に体験したことがあるぞ。
「はやく朝ご飯を食べましょう」
コールラウシュさんは僕をそっと床に置いて離れる。
安堵感と共に、悲しいような複雑な気持ちがこみ上げてくる。
いや、よかったんだけどね。
うーん。
まあいいか。
僕はコールラウシュさんお手製の朝ご飯をモリモリと食べる。今日のメニューはチンジャオロースだった。
昨日に引き続いて朝からガッツリメニューである。
しかもまた中華。
朝ご飯を食べ終わって身支度を済ませてから今日も第四闘技場へと向かう。
「今日からは実戦形式で鍛えてもらうわ」
「実戦形式」
「ええ、最初の相手は」
「私だ!」
コールラウシュさんの声を遮るようにして発せられた声の主はウィルヘルミーさんだった。
ウィルヘルミーさんは闘技場の観客席にいると思ったら、そこから大きなジャンプをしてバトルフィールドの中央にいる僕達の前に下りてきて足をくじいた。しっかりしろ。
「うわあ!凄い跳躍力だ!」
リアクションをとる僕。
「いや、アレニウス起動状態だから跳躍力が凄いだけだよ」
ウィルヘルミーさんは冷静に訂正する。
「というわけで、」
コールラウシュさんは話し始める。
「ここから12時間戦い続けてね。私は観客席で見たり見なかったりするから」
「せめてずっと見ていてくださいよ……」
「だって飽きるんだもの。お腹だって空くし」
「僕にはお腹空いてるのを我慢させて12時間戦わせるくせに、自分はマッタリとお昼ご飯を食べるんですか。最悪ですね」
僕は精一杯の毒を吐く。
「君が新しいアレニウスを早く使いこなせればこんな戦いは不要なのよ。このままだと君がニュークリアーとの討伐で死んじゃうから私がこうして授業を放り出して監視しているのよ。君はこの学校の学生だからまだ問題ないかもしれないけど、私は教師なのよ。ウィルヘルミーだって教師だから授業を他の先生に変わってもらってるわ。だから、一刻も早く君が新しいアレニウスを使いこなせるようになれば問題ないのよ。えっとなんだっけ、名前……スマートウォッチ?」
「スケルツォです」
スマートウォッチはハイテクな時計だ。
絶対正確な名前を当てる気ないわ、この人。
僕はアダージェットを起動させ、さらにスケルツォも起動させる。
「スケルツォ、セットオン!」