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Tenpure 2-3

「うおおおお!さむっ!」

 次の日、いつものように寒さに負けて二度寝しようとしたが、強引に掛布団をはがされて寒さを全身で味わってしまった。

 冬満喫。

「危機感がないわね」

 コールラウシュさんは僕の掛布団を取り上げる。

 僕はベッドの上でクッと背伸びをする。

「あーあ。ずっと日常パートだったらいいのになあー」

「危機感のなさが素晴らしいわ」

 褒められる僕。

 僕は仕方なしにノソノソと布団から起き上がって寝間着から服に着替え始める。

 着ていた寝間着をベッドに放り投げる。

 壁にかけてある制服を着る。

 そのままジャブジャブと洗顔を済ませ、寝ぐせをチェックする。

「よし!」

 僕は食堂に行こうとするが、コールラウシュさんに止められる。

「私が朝ご飯を作ってきたわ」

 コールラウシュさんの右手には岡持ちがあった。

 岡持ちって……。

 今の時代、ラーメン屋でもそうそう見ないぞ。

 というか岡持ちってラーメン屋しか使わないんじゃないのか?断じて朝ご飯を入れるものではないでしょ。

 コールラウシュさんが机に岡持ちを乗っけて、料理を机の上に並べる。

「ん?コールラウシュさん、これって」

「あら、どうしたの?」

 机の上に乗っていたのはチャーハンとラーメンだった。

 岡持ち、大正解。

 しかも両方とも1人前という具合だ。

「朝からこんなにたくさん食べられないですよ」

「言い訳をする子は嫌いよ」

 ……。

 完食した。

 その後、間髪置かずに第四闘技場へと連れていかれた。

「じゃあ、ちゃっちゃとはじめましょう。まずはいつものように君のアレニウス、アダージェットを起動させてくれないかしら」

 僕は呪文を唱えてアダージェットをだす。

 最近は自主的にソード型のアレニウスを動かしていたので、アダージェットをだすのは久しぶりだった。

 しっくりくる。

「最初に言っておくけど、」

 コールラウシュさんは僕に忠告をする。

「私が渡したアレニウスは体力の消耗が激しいわ。最初のうちはあまり慣れなくて精神が体力の消耗についていけないと思うけど、頑張ってね」

 アレニウスを2つ、一度に起動させているのだから、体力の消耗が激しいという話も、当然といえば当然なのだろう。

「じゃあ、私が渡した方も起動してくれないかしら?」

「起動って言われても……」

 アレニウスを起動させた状態でさらにアレニウスを起動させたことがないので、どうすればいいのかわからない。

 僕はとりあえず右手の指輪を天に掲げてみる。

 何も起きない。

 今度は腕を1回転させた後に、かっこいいポーズを取ってみる。

 何も起きない。

 僕は手詰まりになったのでコールラウシュさんに聞く。

「これってどうやって起動させるんですか?」

「名前を呼べばいいのよ。その後にカッコいいセリフもあると最高ね」

「このアレニウスの名前ってなんです?」

「決めてないわ。君が決めて頂戴」

 僕は新しいアレニウスの名前を熟考する。せっかくなのだから、自分に関連した名前をつけたいものだ。

 ヘルムホルツ―α

 ヘルムホルツ―σ

 ヘルムホルツ―Z

 まともな名前が出てこないから僕の名前に関連づけた名前を付けるのは辞めよう。

 そもそもこのアレニウスは僕が作ったものではないから、僕の名前がつくのもおかしいといえばおかしい。

「スケルツォにします」

 僕はスケルツォの生みの親であるコールラウシュさんに報告する。

「Scherzo、素敵な名前ね」

 すっげぇいい発音。

 僕は名前がついたばかりのスケルツォを起動させる。

「スケルツォ、セットオン!」

 僕が叫んだ途端、右手の指輪の拘束は解け、その力を開放させる。

 指輪が僕の体内へと溶けるようにして姿を消す。

 しかし、指輪がなくなった以外で、僕の見た目はなんの変化もしていなかった。

 僕は不安に思いコールラウシュさんの方を向く。

「飛んでみてくれないかしら」

 飛ぶ?

 僕は飛んだことがなかったので、どうすれば飛べるのか分からなかったが、とりあえずジャンプしてみることにした。

 刹那、僕の体は数十メートルほどに飛びあがり、上空で停止した。

「すごい!」

 僕は手足をジタバタさせてみるが、なにも変化がない。

「これが……これがスケルツォの力か!」

 僕は過剰なほどに驚いて、うおおおおおお!!力がみなぎるぜええ!!!とか言ってみたりした。すぐに飽きた。

 そしてなんだか恥ずかしかった。

「コールラウシュさん」

 僕は上空からコールラウシュさんを呼ぶ。

「あら、上から目線なんて随分と偉くなったものね。力を手に入れた人ってのは、必ずしもそうなのかしら」

「いや、そうじゃないですよ!」

 僕は音速で否定する。スケルツォの力のおかげで音速で否定できるようになった。便利。。

「あの、降り方が分からないんですけど。どうやって降りたらいいんですか」

 一連の使い方を教えてから起動したかったのは否めない。

「降りたいと念じれば降りれるわ」

「僕、さっきからずっと降りたいと思ってますよ」

「思うんじゃなくて、念じるの」

 ググググッ。

 僕は手を前で組んで念じてみる。

 目を閉じる。

 降りろーー!降りてくれーーーー!!!!!

 ススッーー!

 半信半疑だった僕はお腹のフワッとする感覚があったので目を開ける。

 降りてる!

 なんじゃそりゃ……。

「とりあえず、」

 僕が上空からスッと降りると、一部始終を見ていたコールラウシュさんが話し始める。

「今日は新しいアレニウスを使いこなせるようにしましょう、えっと名前なんだっけ……スキムミルク?」

「スケルツォです」

「あら、そうだったわね。変な名前」

 変な名前って……。


 さっき素敵な名前って褒めてなかったか……?


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