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Episode.3-2

 当日も当日、おお当日である。

 体育大会当日。


 僕は早朝からトーナメント表を作成したり、会場の準備をしたり、バスケットゴールで遊んでいたらゴールネットが破れてシャルルさんに怒られたりして疲れていた。

 ちなみにバスケットゴールで遊んでいたのは僕1人だけである。早朝だったので他に遊ぶ人がいなかったのももちろんだけど、やっぱり男と女というのはどうしても壁があるらしくて、こんなバカみたいな遊びに女子を誘うのは気がひけたのもある。

 ともあれ、男でもなんの問題なく体育大会を消化していた。

 そもそもアレニウス使いってのは女性の中でも運動神経のいい女性が務めるため、僕がその中に入っても別にチートになることはなかった。

 僕も男ということに甘んじてアレニウス使いをやっているという訳ではないが、波動使いなので腕っぷしの強さという面では負ける。

 女性に負けてしまうのだ。

 そもそもアレニウスの歴史として、最初は女性用の戦闘兵器として作られたものである。

 その当時は世界再編の真っただ中で、女子供含めた多くの人が戦地に出向いて戦力とならなければいけなかった。

 そのために作られたのが筋力増強としての役割を持った初期アレニウスだった。

 初期型は女性や子供でも力仕事をこなせるように発明されたものだったが、そこから改良が進んでいき、新型アレニウスが誕生した。

 新型アレニウスは今までの筋力増強効果に加えて、それぞれが固有の武器を持つようになった。

 剣、弓、槍。

 その後もアレニウスは改良を重ね、ついにはテーマを持つようになった。

 闇、炎、水。

 気がついた時には、アレニウスを装備した女性は男性よりも強くなったのだ。

 そこから男女のパワーバランスは逆転していった。

 つまり僕が女性に負けても問題がないのだ。

 そうそう。

 ほんとそれ。

 ともあれ、僕は全力で体育大会に参加していたのだ。

 僕は白い粉の中に顔を入れて飴玉を取ったり、上に釣り下がっているパンをとったりするレースをした。

 筋力関係ねえ!

 せめて、僕の方が足は速いのかと思ったけど、そんなことはなかった。

 というよりもあのレース、足の速さよりも飴玉をとったりパンをとったりする方の重要度が高すぎだろ。

 僕は朝からの準備疲れとレース疲れが相まって、午前中だというのに、いい加減休みたかった。

 グラウンドの脇に設置されている草原に腰かけて休んでいた。

 気温は初秋だというのに暑かったが、風が吹いてしまえば暑さがほどよくリセットされて心地よかった。

「よっこいしょ」

 僕が草原に座って休憩していると、僕の横に誰かが座った。

 コールラウシュさんだった。

 おっさんくさい掛け声。

「どうしたんです?」

 僕はコールラウシュさんの方を向かずに話しかける。

「せっかくの休みだし、街に行きましょう?」

 コールラウシュさんも僕の方を向かずに僕を誘う。

「いや、休みじゃないですけど……」

「あら、私が休みと言ったら休みになるのよ。なんたって副会長だもん」

 だもん、と可愛くしてみせるコールラウシュさん。

 かわいい。

 じゃなくて。

「いや、副会長って言われましても、会長に怒られますよ」

「シャルちゃんは怒らないわ。だって私だもの」

「そうですか」

 だって私だもの、といわれてしまったら、なんとも言えない。

 よく分からない根拠を出す人だ。

「じゃあ、行きましょうか」

 コールラウシュさんは立ち上がりながら言う。

「分かりました!」

 ヤケクソになる僕。

「その前に、」

 コールラウシュさんは僕の顔を見ながら言った。


「顔の粉を落としてくれるかしら」



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