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Episode.2-3

 ぬくもりを 求めて鳴くは 背の鶴か


 川柳を読みました。泣くと鳴くをかけています。おっと、今の僕の状況を先に説明した方がいいかもしれませんね。

 えっと。僕はバラールっていう幼馴染に抱きしめられています。向かい合うようにして抱き合っている訳ですね。その前に僕はドアに顔をぶつけて号泣しています。

 つまり僕は泣いている訳ですね。

 そして今遅刻ギリギリのタイミングで学校に来たのでチャイムが鳴ろうとしています。さらに、僕は正面はバラールに抱きしめられて暖かいけれど、背中はあんまり暖かくないのです。そう、僕の背中にある鶴の刺青が疼くのです。寂しいと。

 そんなこともあり鶴が鳴いて・泣いているのです。

 どうですか。めっちゃ上手くないですか?

 ええ。お? 

 チャイムが鳴りましたね。

 ここで僕のなんだかよく分からないパートは終わりです。

 

 

 僕とバラールは急いで1年2組の教室に入った。

 僕の席は一番前の真ん中と昨日聞いていたので、それに従って真ん中の席に座る。

 というよりも、空いている席がそこしかなかったのでそこに座らざるをえなかった。

 僕達が教室に入って数十秒後に先生が入ってくる。

 ウィルヘルミーさんだった。

 ウィルヘルミー先生と言うべきだろうか。

 ウィルヘルミーさんでいいや。

「みんないるね~」

 と言いながらウィルヘルミーさんはクラスを見渡し、もっていた手帳のようなものにメモをする。

「え~っと本格的な授業は今日から始まるんですが、最初はガイダンス的な話が多くなるかと思いますので、気楽に聞いてください。みなさんも知っての通り、この学校は上級生が先生となって下級生に教えるため、初めて先生をするという人も多いです。共に切磋琢磨し合いましょう」

 ウィルヘルミーさんは話をつづける。

「新入生は1か月後に新人戦があります。新人戦の結果次第では昇格もありますので頑張ってください」

 ウィルヘルミーさんが話し終わった途端、予鈴が鳴った。

「以上です」

 ウィルヘルミーさんは教室から出ていった。

 予鈴だと思っていたら本鈴だったようで、1時間目の授業を担当する先生がウィルヘルミー先生と入れ替わるようにして教室に入ってくる。

「授業始めます」



 なんやかんやあり


 午前授業が全て終わった。

 これは……疲れるな。

 初日午前は怒涛のアレニウス整備学の四連続だった。

 最初はガイダンスと先生が言っていたので、授業が軽い感じで進むのかと思ったら、それは最初の1時間だけで、残りの3時間はガッツリと授業をした。

 頭が痛くなってくる。

 地元にいたときはアレニウスの整備は全然していなかったため、整備のことに関しては何も分からない僕にとっては授業についていくのがやっとだった。

 僕はググッと背伸びをして学生寮に帰る。

 昼の1時間は自由な時間である。多くの人は食事をとり、余った時間で昼寝をしたり、体を動かしたりする。

 それは地元での学校生活となんら変わりがなかった。

 だが1つ変わったことがある。

 食堂で食事をとる際に学年別に時間が決められていることだ。1年生は最後の20分が食事の時間だった。

 僕は特にすることも友達もいなかったので自室に帰る。さすがに女子がたくさんの中で男子が1人だけというのは堪える。

 やはりアレニウス使いは女性というイメージが付いているし、そもそもアレニウスは女性に合うように作られているので、男性が多いとなったら、それはそれでおかしいわけだが。

 工業高校における女子生徒のようなものだ。

 男子が1人というのは、女子同士で牽制しあうため、逆に男子に話しかけづらいとかあるのだろうか。

 女子じゃないから分からない。

 と、思ったが、別に入学してから女子と一切の会話をしていない訳では無かった。

 今朝だってバラールと会話したし、ウィルヘルミーさんやコールラウシュさん、それにシャルルさんとも会話した。


 うーん、もっとクラスの人と会話してもいいような。

 と悩んでいたのだが、今日は登校時間ギリギリに登校して、授業の合間の休み時間は初めての内容ばかり学んだためグッタリしていて、それで昼に学生寮に帰る。といった流れで、なんだか話しかける・話しかけられるタイミングがなかったような気がする。

 午後は早めに学校に行ってみよう。

 コンコン。

 僕が物思いにふけっていると、部屋にノック音が鳴り響いた。

 コンコンというよりは、コーン(高い音)、コーン(高い音)という感じである。どんな叩き方をすればノック音が鳴り響くのだろうか。

 このノック音が伝わるだろうか。伝わらないだろうなあ。

「どうぞー」

 僕はノック音に応答する。

「やあ、ギーブ」


 ノック音の主はバラールだった。


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