007:遊戯
更新不定期です
呼んでくれる方いるのか不安ですが、ちょくちょく書いてます。
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「……これで、楽になれるんだ、みんなの……ところにい、ける」
「――(この女性が私のお母さん?)」
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「喋りたいんだけど」
「ダメです!」
「え~~~~」
「ダメなものはダメなんです!」
どういう事かというと、啓示したいのだ。多少無理やりにでも信仰を得て、あの世界に行きたいのである。
よーく人間的感覚で考えて10年は長いと改めて思ったのだ、たとえ超越者などというものになる前に1000年単位で暇を持て余したことはあってもここは敢えて人間の標準的寿命的な考えで、長い時間が掛かると分かっていたが外からちまちまとやるのには飽きてきた。
1000年単位で物事を考えていた時は私以外は存在しない状態で変化も無くただ時間だけが流れていただけだったのに対して、デモ子がいて日々に彩があり少しずつ変化していく世界の動きが確認できる状態なのだ遅々として進まない現状に少々の不満を持ってもいいと思うのだ。
よし一回ここでこれまでの情報を整理しようそうしよう、情報を整理統合することは重要な事だと思うが私はめんどくさいのでデモ子に投げる。
「は~いお母様のご要望によりディザスターの情報を整理しました~」
「仕事はやっ!?」
「――というのは冗談で今までの記録を出すだけなんですけどね驚かれましたか」
「ううん知ってた」
デモ子も10年でいい感じに成長している、手際の良さは変わらず合の手を入れてくれるので暇は紛れている。
脹れているデモ子を宥めるのにも慣れたもので、軽く頭を撫でてあげるだけですぐに機嫌を直してくれる、過去の過ちは繰り返さない。
「魔王世界ディザスター、世界の主は彼方お母様、一年間は360日、一日は24時間となっております。現在の日時は12月2日午前10時30分です、お母様の啓示は1月1日の0時0分を予定しております。
次に年号ですが、お母様のご要望の通りリンクス大陸で使用されている年号を使用し新暦341年です、それ以前の年号もあり最初期の宝暦といったもので表記しますと12,073年となますが如何為さいましょう」
「新暦のままでいいから、そんな長い年号誰も使わないからスルーでオーケー」
「畏まりました、では次に大陸の状況です、4大陸で現在お母様の加護の下に在るのはマーセナリー大陸となっております、お母様の名を関させて頂きました救神国カナタが存在します、その他は集落が点在しているだけですが大陸の南東部に人間種の村が出来つつあります。
お母様の指示通りアゾートとマステマによって大陸南部、南西部、南東部に転移魔法陣を構築した拠点の設置は完了しておりますが、現在は移民を受け入れるために片道でしか運用できておりません、双方向運用には今しばらく時間が掛かると思われます。
なお精霊石の塔周辺で精霊の誕生を確認しておりますが現在のところ無害です、誕生したてで自我は希薄であり赤ん坊のようなもので精霊に好かれる者達に教育を可能かは分かりませんが任せております」
「順調でなにより、今にして思えばもっと時間かかる可能性があったのだしむしろよくやってるから褒めて上げないとな」
「むぅ(まぁ頑張っているみたいだし少しはいいかな)……続いて他の3大陸の現状を説明させて頂きます。人間種族のリンクス大陸ではアンサラー王国、マブレードス連邦、ドナミトン公国、コードウェル法王国、アルトリーゼ帝国の5大国家とそれ以外にも多くの小国が在ります。
アンサラー王国は大陸東部に位置し大陸最強と言われるオルカ騎士団を有しております、現在の国王はマクシミリオン・シュープリス・アンサラーです。
より詳しく解説いたしましょうか?」
「概要だけでオーケー」
「マブレードス連邦は大陸北部に位置するラインヒルおよび北部カンパルス連合国です、交易と商業が盛んで各国が独自の戦力を保有しております、現在の首相はアンジー・ドーリーです。
ドナミトン公国は大陸南部に位置し魔法使いが多く唯一魔法使いの大規模部隊が存在しております、数ある魔法薬はこの国が作成したものです、現在の大公はオラクル・パーライアンス・ドナミトンです。
コードウェル法王国は大陸中央部に位置しネサイン教発祥の地です、法術や法王軍といった独特のものが多く存在します、現在は法王コードウェル4世です。
アルトリーゼ帝国は大陸西部に位置しレイヴン大陸と近いため魔物種の侵攻に晒されており兵の練度は最も高いです、現在の帝王はアイゼン・レジセイア・アルトリーゼです。
小国は如何なさいましょう?」
「パスで、あとライアーに引き続き各国の物流の調査と交易のノウハウを学んで貰っておいて、将来的には商隊でも率いてマーセナリー大陸に来てもらいたいから」
「承りましたライアーには言伝しておきます、続きましてリンクス大陸はケンタウロス族のイーダ王国、マーフォーク族のアクアマリン、ハーピー族の集落スカイリム、アラクネ族の巣アトラクナクア、ラミア族の隠れ家エキドナ、ライカンスロープ族は集落が数か所に点在しており最重要拠点はありません……まともに国として存在するのはイーダ王国とアクアマリンだけとなっております。
イーダ王国はレイブン大陸西部、リンクス大陸から最も離れた場所にあり、その事もありましてリンクス大陸においてはケンタウロス族の存在自体があまり知られて無い要因となっております。人間種と同等の国家であり国土もレイブン大陸随一となっております。
アクアマリンはマーフォーク族の海底都市国家でレイヴン大陸北西の海底に存在しております、ラミア族の隠れ家が北西の海岸近くに在り同種族と友好を結んでいます、魔物種では唯一人間種と交易をしておりますがラミア族絡みの内容で交易というより斡旋の様なものです」
「あの子を送ってから具体的な変化は今のところ無いみたいだからいいけど準備はしているのだか……2大陸はそんなものか、もう1つの大陸はオーリューに任せてあるからいいとして。
デモ子は精霊、いや邪精だったっけ滅ぼしたい?」
邪精とは精霊の変異体で自然の本質から離れた、云わば悪意に染まった精霊のこと。純真無垢でただ在るがままに存在し好奇心旺盛で時々我儘な精霊に対し、利己的で打算の下に動き嘘は言わないが本当のことは言葉巧みに隠し真実は聞かれても言わない。
ある意味人間に近く、そもそもの発生原因は人間種の悪意に触れたことで変異する、そうして長い時間をかけて染まっていき最終的に堕ちる。
変異する過程で自然から切り離され自らを維持するために、自然から自動的に力を得ていた分を自前で調達しなければならず魔力を吸収するのは効率が悪いので、もっとも安易に手に入り自らに馴染む力、魂の吸収である。
魂魄と純粋な力を多く内包する魂は邪精にとても良く馴染み、力は自らをより強くし魂魄は自らをより製錬することが出来る。
ただし魂を吸収するにはいくつか条件があり、第一に精神が弱っていること、第二に肉体から離れていること、第三に特定の場所内であること。そのためのマーセナリー大陸であり、4つの道である。
道で弱らせその途上で死を迎え者を、マーセナリー大陸に辿り着き死に絶える者を、邪精達は効率的に自らの維持と力を得る場所を手に入れていたのであった。
デモ子にミキサーされ分解され投げ捨てられた哀れな末路を辿り挙句の果てに私がマーセナリー大陸をゲットしました、ざまぁである。
「当然ですよ」
デモ子は嗤っている、私の許しがあればすぐさまコトに移し尽くを刈っていくことだろう、その笑顔がとっても怖い。
それは私が許さないしさせるつもりもない、私のこれからの楽しみが減ってしまう。
「まあその内に少しだけ、本当に少しだけ殺らせてあげるから。本当に少しだけ、分かった?重要な事なので二回言ったから」
「……はーい」
渋々といった感じで了承するデモ子、即答せず間ができたあたりすぐにでも殺りたいのだろう。
そんなデモ子のために少しでもフラストレーションを発散させてあげる&私のためになるであろうプランはすでに出来ている、デモ子の目の前に幾つかのウィンドウを表示する。
表示されているのは2つの情報、捕獲候補者の世界一覧と私が見繕った捕獲対象の情報。もう1つは神を騙る者一覧。
表示された情報に素早く目を通し行くデモ子、驚きやら戸惑いつつも全てを見終わると非常ににこやかな笑みを浮かべていた、笑顔が怖いぞ。
「お母様、よろしいですか?」
「許可する、これ以上言葉は必要か?」
「暫しお傍を離れることをお許し下さい、1時間30分以内で終了する予定です」
「時間は気にしなくていいデモ子の好きなように……ああ捕獲者(お土産)よろしく」
「畏まりました」
一言最後に告げると瞬く間に消えるデモ子を見送り、私はほくそ笑むのであった。
「我がお母様のために貴方達の力と魂を捧げよ」
大鉈を掲げて宣言する私の前には数万人の完全武装した精兵(雑兵)と最奥に控える神意の代弁者(愚か者)、鈍く光を反射する鋼鉄の全身装甲は一指乱れず悠然と並び対峙する者を威圧し、構えられたタワーシールドは何者をも通さない鉄壁の城塞を思わせる。
最前列でタワーシールドの間から構えられたパイクは一切の侵入を許さない槍衾となり、中列の抜剣した兵士達は万が一にもパイクが抜かれる事は無いと分かりながらも一切の注意を怠ることなく来るべき時に備え、後列では引き絞られた弓矢は放たれる瞬間を待ちわびており放たれれば天から堕ちる慈悲なき死の雨となる、最後列に控えた魔法使い達は極限まで集中し高められた魔力が周辺の魔力に影響を与え局所的な高濃度魔力帯と化していた。
「ふん、予言にあった破滅の権化か日も時も違わぬが……何とも期待外れよ」
遥か先で愚者が笑っている何も知らずに、眼前の塵芥を無視して一瞬で刈り取ることも一刀で全てを消し去ることも、この世界を消滅させることも出来るとは知らない。
無知とは愚かだが、人の身では知り得ることなど出来ない以上仕方がないことなのだろう。
愚者が言った予言、おそらくはお母様の行ったことだろう。
ただ愚者一人とその他諸々を刈り取る程度なら数分で事足りるがそれでは些か味気無い、少しばかり気は紛れるがその程度だろう。
この戦場はお母様のご用意して下さった舞台、ならば存分にお母様のご期待に添わなければいけない。
お母様の言葉「時間は気にしなくていいデモ子の好きなように」の通りに、私の好きなように時間は気にせず、だけど6時間後のお母様のご夕食までにことを済ませてしまおう。
ならばやることは単純だ、眼前の全てをお母様のために
「告げる、これより一切の驕りを捨てよ、これより一切の油断を捨てよ、これより一切の迷いを捨てよ、これより一切の希望を捨てよ。
だが僅かながら時間を与える、臆せし者は無様な様を晒し逃げるがいい」
慈悲を与えたが誰も引く素振りも迷う素振りもなくその場を動かない、ほんの僅かだけ魔力を言葉と共に発し力ある言霊として告げたのだが感覚が麻痺してるかそもそもそういったものが感情が欠如しているか、状況判断能力は乏しいと言わざるを得ない。
「無駄だ我が精兵達には通じんぞ、我れが施した結界により貴様の力は全て霧散し無力化されるのだ」
いらない解説をする愚者を眺め無駄に犠牲となる者達に視線を外し結界を観る、今の言霊を結界が精神攻撃と認識して防御をした様だったがこんなことで壊れかける結界など無いに等しい。
まあいいかほんの数秒だけ時間が掛かるだけだ。
「ならば構えよ、弄ぶことも徒に生き永らえさせることなく刈り取ろう、ビルゴ!」
掲げた大鉈、ビルゴの刀身に眼が開かれる、魔力が刀身を満たしていきビルゴが淡く極彩色の輝きを放ち出す。
ビルゴを軽く振り下ろすと結界が霧散していく、ただ軽く振るった余波だけでシャボン玉が弾けるよりもあっさりと消えた結界に愚者は慌てふためいているようだ。
誰一人逃がさないよう広域結界を展開、更には魔力と魂をお母様に還元するよう領域の操作を実行して準備を完了する。
「破滅の権化ならそれらしく……さあ、殺戮を始めよう!」
「ふんふんふ~ん」
デモ子が大暴れしているとは知らずに呑気に色々している私、色々は明かせないがデモ子にバレるとめんどくさい。
世界の根底の一部に手を加えて疑似崩壊させたりして楽しんでいるなんて言えないし、断片的な啓示を与えて教義の根本を歪めたりして弄んでたり、物理法則の一部を改変したり、人類種の天敵のようなもの作りだしたり、思考誘導して英雄にしたり、単機で戦争の常識をひっくり返したり、断片的な分散した情報を統合して可能性が集約した世界を作ったり、神を殺せそうな存在を創るのに繰り返し製錬するための世界作ったり、天国とか地獄をごちゃ混ぜにして混沌を加味して虚無を注ぎ込んで複数の平衡する世界にばら撒いたりして中々に楽しかった、これは色々明かせない内の明かせるような一部である。
最近始めたのがファンタジーやSFやら学園やら退魔やら、そんな超常の能力持ち達を集めてバトらせていた。
のだけどドレコレも共通して『見てるだけ』なのである、非常に非常に非常に暇で速攻飽きた、お土産とお礼を渡して集めた人達は元の世界に帰しておいた。
10年でやること無くなってきて暇しそう、早く魔王(あの子)達のいる世界にいきたい、そのためのデモ子の初めてのお遣い、もといお仕事とお土産、もとい捕獲者達である。
んで今閃いた、善は急げで早速事に移す。
これまでの10年間こうやって私は行き当たりばったりで動いてきたけど自重しないのが私、デモ子にもバレなきゃ問題ないバレたら小言を頂戴するの程度だが隠し事って響きが堪らないやめられないとまらないとまる気など更々無い。
幾つかの世界から適当な人数を見繕う、同時に創造を行い箱庭世界を創り出す。
創造も大分手馴れて考えただけで出来るというか考えると出来てしまうので、創造の操作をマニュアルに切り替えて更には承認式で一々手順を踏まなければめんどくさい方式に切り替えなければいけなくなってしまっている。
世界を創造する際のプロセスは1億を超え承認の数も同様、思考の超光速処理で数秒で創造しているが体感的には1時間くらいにも感じる作業なのだ。
今回創造した箱庭世界は幾分小さいが頑丈に作り結界で囲っているので外部からの干渉はもとより内部からの術式干渉にとんでもなく強く造っている。
『メッセージ:かゆうまー(゜∀ ゜)』
「いきなり突拍子もなく訳も分からない発言というかメッセージを出さないで貰いたいな自称神」
『メッセージ:神です(`β´)』
「私的にどっちでもいいけど同じく神なんて呼ばれてしまってしまいまして嫌で嫌で仕方ない、デモ子には悪いがマジやなんすけど」
『メッセージ:ナカーマ(私)人(お前)』
「死ね」
神(笑)は無視して問題無いがウザい、さっさと居なくなってくれる簡単かつお手軽な方法で退散してもらうのがベスト。
「拾え」(# ゜Δ ゜)ノ⌒◎
『メッセージ:わおわおーんε=ε=(ノ≧∇≦)ノ』
世界一つ分の力の塊を適当に開いた適当な領域の適当な世界の適当な空間に適当な時間軸で巧妙に細工し偽装し罠を仕掛けて幾重にロックを掛けて最終的に爆発するようにして放り込む、それを追って神は何処かの世界に消えた。
さて静かになったことだし、作業を再開しよう。
暫くして遠く何処かの世界で爆発音が聞こえたような聞こえなかったような。
「初めましてだな諸君、私は諸君らの教官を勝手にさせてもらう彼方軍曹だ!」
集めた面々を前に私は迷彩服を着こみ参上した、いつも着ている黒いセーラー服だとイマイチ雰囲気にかけるため変更したのだ、右目に黒のアイパッチと額に黒のバンダナをしている。
まあインパクト狙いとかノリで生きている私だからだとか理由なんてどうでもいいんだよ、こまけぇことたぁ気にすんな。
いきなり現れていきなり教官宣言する私に面喰って全員呆然としている、一応全員元の世界では最高戦力クラスの能力を持った者達だが戦闘で死の間際の瞬間を狙って拾ってきた。
そのために戦闘で極度に集中し死の間際(走馬灯を見ている最中くらい)で急激に暗転して見知らぬ場所で見知らぬ人々(殺気のオマケつき)、体が無意識に戦闘態勢に入ろうとし動き出し意識が働き始めるタイミングに割り込むよう私が現れた。何を言っているのか分かりにくいが動きを止めてこちらに意識が向くよう仕向けた。
「何者だあん――たわらばっ!?」
「返事はSirしか認めん!」
とりあえず睨んできた失礼な一人を右拳を叩き付けて沈める。
「手前ぇ何様――のぎゃぁっ!?」
「私は気が短いこれ以上は足が出そうだ、返事はどうした無駄なことしか言えんのかその口は、縫って塞いじまうぞ!」
残念な雰囲気とチンピラ風な物言いの一人を左に持ったハリセンで沈め。
「Sir!ご質問をよろしいでしょうか軍曹殿!」
「ちっ……良いだろう質問を許可する2等兵」
ダンディーな一人を踵落としで沈めようと思っていたのに残念だ。
「(2等兵……)Sir!ありがとうございます!ここは何処で軍曹殿は何者なのでしょうか、それから私は死ぬ直前だったと記憶しております、よろしければお教えください!」
「ふむ、では2等兵の質問に応えよう。まずここは箱庭世界、名は『敗者の園』だ、私については詮索するな2度目は無い、覚えておけ。私を呼ぶときには軍曹殿もしくは彼方軍曹と呼べ、それ以上でもそれ以下でもない。あと貴様等が生きているのは死の間際に適当に拾ったのだ感謝するがいい、私が拾った命で既に貴様等自身の命ではない分かったか2等兵とその他諸々!」
「Sir!お答えいただきありがとうございます軍曹殿!つきましては愚鈍な私共は未だ混乱してる状態にあります、私共に情報を整理する時間を頂いてもよろしいでしょうか軍曹殿!」
「ふん、ノロマめチンタラと悠長なことだ、戦場では迅速かつ的確に行動し必要な情報を瞬時に選択し判断しなければならないんだぞ、貴様らは死にたいのか!だがいいだろうノロマな貴様らのために許可するが10分間で情報を整理し共有しろ、それと貴様の名は何という2等兵!」
「Sir!ジャック・オクスタンであります軍曹殿!」
「よしオクスタン2等兵、うすのろ共と脳の発育が残念な者共に説明をしておけ、だが1人でも理解力に乏しく独断専行するような愚か者がいた場合連帯責任だ!あと序に、地面にめり込んでいるごみ共も躾ておけ、分かったか!」
「Sir,Yes Sir!」
「声が小さいぞ貴様は男か2等兵何を言ってるのか聞こえんぞ!腹の底から全力で声を出せ馬鹿者が、分かったのか2等兵!!」
「Sir,Yes Sir!!」
ノリの分かっている奴がいたので途中から楽しくなってきた、3人目でダメだったら普通にしようと思ったけどちゃんとのっかてくれる人がいてくれて助かった。
キャラ作りしてまでいるのだ、途中から素に戻るのは恥ずかしいし気まずいからしたくなかっただけに3人目のジャック2等兵、思わず2等兵といってしまったがまあいいか全員2等兵で。
今度は迷彩服じゃなくて昔幾度か使っていた軍服でも着てくるとしよう。
「では10分後整列しておけ以上だ、解散!」
「Sir,Yes Sir!!」
軍服の少女、彼方軍曹殿が数m歩いて忽然と姿を消す。同時に各々に安堵の表情と緊張が解かれ地面に倒れ伏すものまでいる。
かくいう私、ジャック・オクスタンも膝が笑っていた、途中何度か気を失いそうになったが軍曹殿がいなくなるまで気を保てた自身を称賛したい。
見た目以上の存在、少女の姿をした何かが言葉を発するたびに精神が鉋で削り取られるように擦り減っていき、見られるたびに例え様の無い圧迫感を伴い体中から脂汗が際限無く出てくる始末で、詮索するなと言われた瞬間など幾つもの自身が殺されるビジョンが見えた程だ。
1人目に声をかけて男は私よりも大分弱いと思われるが一撃の下に文字通り地面に沈み気絶した、認識できない一撃を受けて気絶で済んでいるのだから手加減されたのだろう。
2人目に声をかけた少年は私と同格くらいだろう1人目と同じく一撃の下に沈んだ、ただしギリギリ認識できる速度で行われた一撃は少年の防御した腕など無意味とばかりに沈めたのである、実際に目にしていなかったら獲物がハリセンだと言われてもおそらく冗談と思っただろう。
少女の様子が2人目を沈めた時に変化した様な気がし、このままでは何となくまずいと思い行動した私は少女に従い激しく後悔している。
「助かったよ、あんたがあの軍曹に対応しなきゃ死んでたかもしれない」
「それよりも兎に角こいつら地面から引っ張り出してあの軍曹のこと教えないきゃ、連帯責任で何をする羽目に合うかわかんねんだぜ」
「あぁ……気が重いな頼みますオクスタン2等兵」
死の間際から拾われたが決して気の休まる状況から解放されていない現状で、これからどうなるのか分からず正体不明の軍曹に生殺与奪を握られているのだ。
しかも私は何故かこの面子の代表となってしまったらしく10分後、性格には9分30秒後に訪れる軍曹殿の矢面に立たされると考えると途端に気が滅入ってしまう。
ああ憂鬱だ、と考えていた私だが今後も長く付き合うことになり、鬱だ死のうでは無く、鬱だいっそ殺してくれになるとは現時点で考えもしなかったのである。
因みに、彼方が現れた瞬間に反射的に攻撃しようとした者達もいたが、動物的直感が働いた者は絶対強者の存在に即座に屈し、第六感が働いた者は霊的存在の巨大さに精神が屈し、そういった感覚に疎い者達でさえ体が本能的に動く事が出来ずにいた。
沈められた1人目と2人目は中途半端に強く負けず嫌いで自尊心の塊の様なもので強がって彼方に対したが、結果は尊い犠牲となったのである、死んでいないが。
『メッセージ:倍プッシュだ…!』
「どうした自称神、作者にでも仕組まれたか」
「病気か神(笑)……仕組むのは彼方の所業なり」
『メッセージ:倍返しだ…!●⌒●⌒(゜Д゜#)』
「なあ、作者って楯に出来るんだぜ知ってたか」
「…………」(返事がない既に屍の様だ)
「お母様~お夕食のお時間ですよ~」
「さ、自称神……ひ・ろ・え」(゜Δ゜)ノ⌒◎
『メッセージ:わんわんお~!ε=ε=(Λ ● ∀ ●)ゝ』
「…………」(応答が無い既にログアウトした様だ)