006:年月
作者です、魔王育成師はR-15に触れないラインで書いていきたいのです。
しかしなのですが……あは、書キタイナぁ
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「……私一人になっちゃった」
「みんな、私を置いていっちゃう」
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私、レイチェル・アルテリアは10年前の奇跡を決して忘れません、『彼方』様の福音を拝聴できたことに、敗北者としてこの大陸に来られたことに感謝する。
リンクス大陸の東部ハイダラー山脈の麓に広がるアンサラー王国、強大にして広大な領土を持つ5大国家として古くから在り続けます。
貴族の娘として生まれ厳しくも優しい両親、同日に生まれたお調子者の親友や私の家に仕えているすばらしい方々に恵まれ何不自由なく育ちました。
物ごころ付いた時より騎士に憧れ両親に我儘を言って剣術指南役を剣士の方を雇ってもらいました、そこから私に才能があったのでしょうメキメキと腕を上げ、いつの間にか剣術指南役の方を超え、物は試しと騎士団の試験を受けさせていただきました。
そして私は歴代最優秀の成績でアンサラー王国オルカ騎士団に歴代最年少の若さで騎士となったのです、二つの歴代記録を更新した私の名は国中に広がることとなりました。
ですがその時間は長くは続きませんでした、騎士団内での次期団長争いに巻き込まれ無実の罪を着せられたのです。
反論も弁明も出来ず投獄され、異常に早い日程で執り行われた裁判では次々と身に覚えもない罪状を並べ立てられ国家反逆罪を言い渡されたのです、異議申し立ても再審も否決され数日後に処刑を執行されそうになりました。
国の決定に不服を唱えていた両親と親友の協力で秘密裏に牢獄からの脱走を手伝ってもらい同日中に国を出る事となりました、後に知ったことですが、投獄されていた牢獄で自殺として処理を行おうと事件の首謀者が動いていたらしく九死に一生を得ました。
脱走の罪も加わったことで賞金首として指名手配された私は国から離れ隣国に逃げ延びていましたが、国外のギルドに捜索依頼として私への指名手配が出回ってきていたためギルドの支部が置かれている国からも離れなければいけなくなったのです。
ギルドは傭兵達が登録を行い個人、組織、国家などからの依頼を斡旋する組織として設立され、依頼主は依頼を傭兵は報酬をギブアンドテイクの関係で成り立ち如何なる権力にも従わず政治的駆け引き、宗教活動の幇助などの依頼は執り行わない組織として設立されました、ですがギルドの内情や仕組みは支店ごとで大きく異なっているようでした。
国家の密命を受けて諜報を行う依頼を、反逆者を秘密裏に処理する依頼を、反乱を扇動する依頼を、宗教組織の資金調達に関係していると思わしき依頼を、特定個人に対する悪意ある依頼を、そういった噂程度の情報を騎士団所属時代に聞いたことがありました。
国内外に繋がり情報と資源が豊富に集まる、何よりもいくらでも替わりがきく、不要になれば切り捨てるのも容易にできため市政の中でも使い捨てなどといった話も耳にしたことがあります。
ギルドの体制は既に形骸化し国家にとって有益であることが存在意義と化しているのです。
私に対し騎士団、もしくは個人で依頼をしたのでしょう、Dead or Alive(生死は問わず)の依頼らしく最初から殺害を目的としている者達や捕獲後のことを考える低俗な者達、そういった者は一切の慈悲無く口封じのために刈り取っていったいったのがいけなかったのでしょうか、最後に見た私の依頼書の報酬が笑えないものになっていたのは今では振り返りたくない思い出です。
多数の追ってに最早指名手配というよりも討伐依頼と化してしまいリンクス大陸のどこにも居場所がなかった私は最後の決断をすることとなりました、マーセナリー大陸へ行くことをこの時決めたのです。
1年にも及ぶ逃亡生活で疲弊し武器も防具もボロボロとなっていた私には手は残されていませんでした、国に戻る事は不可能、傭兵共に捕まることなど論外、選ぶ道は残されていませんでした。
生き恥を晒してでもいつか必ず私を貶めた者を討つ、そのために私はリンクス大陸を去ることにしました。
海の道を使いマーセナリー大陸へと渡る際、海の道の守衛をしていた者達を蹴散らし仲間と共に進んでいきました。
蛇道という石と海の道を通る手助けをする組織が私に接触してきた時は私自身も丁度良かった、何でも守衛の数が多くなり少し前に比べ道へと向かうことが困難になっていたようでタイミング良く私が現れたと言っていました。
私自身の噂、もとい討伐依頼は有名らしく真珠色の悪魔、幼女剣士、殺靭姫、ギルド側が性犯罪者に間違われる相手、ヒューマン族の幼女じゃない実はドワーフ族の熟女だ、あの娘速過ぎて剣がブレてるんだけど魔法斬ってるんだけど、ロリコンホイホイ、などと言われていたらしいです、人生で初めて自身のアレな称号の数々に地面に四つん這いになり立ち上がれないほどのショックを受けたのでした。
守衛を突破し海の道を進むこと自体は問題はなのです、そこまでは問題はありませんでした。
辿り着いたマーセナリー大陸は人間にはあまりにも過酷な環境が待っていたのです、何人かが慌てて来た道を引き返して行ったが直ぐに波間に見えなくなってしまいました。
ここに辿り着く前に蛇道のメンバーが言っていた『引き返すことは出来ない』と言う言葉を思い出し、続こうとしていた者達を引き留め海の道だった場所より離れるのでした。
街か村を探すため、体の内側を傷つける埃を吸い込まないようにしながら大陸を進んでいくのですが何かをしようとする度に仲間達は倒れていきました。
舞い上がる埃は呼吸のたびに肺に入り傷つける、湧き出ている水は毒を含んでおりそのままでは飲むことが出来ず、分厚い雲に覆われた空から日の光は差し込まず夜は身を刺す寒さに震える。
拳大の雹が降ることもあった、豪雨により腰まで浸かることもあった、雷が至近に落ちることもあった、急激に気温が下がり吹雪に見舞われることもあった。
私はなんとか生き伸びていましたが共に逃げてきた仲間達は次第に一人、また一人と力尽きてい居きその数を減らしていったのです。
ようやく集落らしきものを見つけあと少しだと仲間達を励まそうとし数名しか残っていなかったことに愕然としました、その時の私は自身が思っていた以上に衰弱していたようで仲間の状況に気付けませんでした。
いえ気付いていた、ですがどうしようもないと分かっていました、そして蛇道のメンバーの言葉を思い出したのです『希望は捨てろ』と。
それから2年は日々をギリギリ生きていました、果たしてそれは生きているといえる状態だったのか、死ぬために生きていたと仲間の一人が最後に言っていたが耳から離れませんでした。
何時しか私は自身が生きている目的を忘れそうになっていたのです。
ですがあの日が訪れたのです、『魔王』デモゴルゴン様が降臨されたのです。
この大陸は作り替えられ清浄になりました、死ぬために生きるのではなく、明日を向かえるために生きていると思い出すことが出来のです。
私はすぐさま『魔王』デモゴルゴン様のお与え下さった宝珠を使い白亜の巨塔に向かいました、それから7日間は時間流れが変わったかのように感じてしまうほどだったのです。
心身ともに充足し余裕が出来たことで2年ぶりに剣を振るうと想像以上に自身の衰えを感じる事となりました、筋力は落ち、感覚は狂い、重心は安定せず、太刀筋は乱れてしまっていたのです。
歴代最優秀といわれた過去の自身が遠くに感じるほどの体たらく、7日目までには残り数日あり時間の許す限り再び鍛えなおすことにしました。
剣を振るっていると騎士になろうと日々鍛錬していたことを思い出します、あの頃はただ騎士になることを目標としてひたすらに剣を振るっていました、それが自身のためであり民のためであり国のためであると信じて疑わなかったあの頃を思い出します。
それ以上は余計な事を思い出さないうちに雑念の一切を払い、ただただひたすらに剣を振るい続ける、何千何万と振るっていたあの頃の自身に追い付き追い越すために。
何時しか私の周囲に同じように剣や槍を振るう人間や魔物の方々がいたのです、どうやら無心になり過ぎていたらしいです。
この大陸へと来て初めて魔物の方々と交流しましたが、話に聞いていた印象と大きくかけ離れ皆一癖も二癖もあるのですが気の良い方々でした。
雑談も交えつつ私達は互いに衰えた腕を鍛えなおすために鍛練をしていきました、老いも若きも関係なく武器を振るい闘う者達は似たり寄ったりだと誰かが言っていましたね。
『魔王』デモゴルゴン様が降臨されて7日目、『白亜の巨塔』内で太陽が中天に射しかかり『魔王』様方が降臨されました。
ですが『魔王』様方の降臨も私の短い人生の中でも大変衝撃的な経験でしたが、その後に起こった――
『彼方』様の福音
その場にいた全ての存在が跪いていたと思います、むしろ跪かないはずがないのです。
『彼方』様はこの世界の内に存在せず世界の外にいながらその存在を感じられるほどの御方、私達のような矮小なものと比べるなどおこがましいほど隔絶しているのです。
私達は皆一様にその御言葉を拝聴し『魔王』様方はこの世界での任を拝命されたご様子でした、そして私達の様な矮小な存在にもその福音を頂きその内容に驚愕し、歓喜いたしました。
今日この日、この時、この瞬間に立ち会えたことを感謝します、私は生涯を『彼方』様に捧げることをこの時に決めたのです。
『彼方』様が福音をなされた時より10年が経ち『魔王』様方のお力によりマーセナリー大陸に秩序が齎されました、『精霊石の塔』を中心地として街は発展し都市となり昨年王国規模となり国を名乗るようになりました、国の名は救神国カナタ。
塔周辺は最初期の段階で計画開発が行われたことで、今では南東に居住区画、南西に農業地区、北東に工業区画、北西に商業区画と4区画に分かれて作られています。
最初に『魔王』様の元に集まった269名の人間と魔物だけの村だったがレイヴン、リンクス大陸から多くの移民が流れ込み急速に規模を拡大し10万名を超える規模となりました。
『彼方』様と御言葉を民へお聞かせくださる『光の魔王』マステマ様と『水の魔王』アゾート様がお納めされている。1年ほど前に『氷の魔王』ファービュラリス様が北方の海へ向かわれてからはアゾート様が統治をされおります。
『炎の魔王』ペイモン様は戦いを司りザイン騎士団の団長として指揮、訓練を行い都市の防衛と治安維持に多大な貢献をされており。5年前に突如として飛来したドラゴンを撃退した英雄として多くの者達からは羨望の眼差しを向けられている。
『水の魔王』アゾート様は薬学、錬金学、幅広い分野に精通したその知識応用し画期的な新薬の研究に余念がないのですが、ファービュラリス様が北方へと向かわれたことで統治の代行を余儀なくされてしまっている。その研究は引き継がれ研究員達が鬼気迫る様子で開発に没頭していたとのこと。
『風の魔王』アンリ様とマユ様は農業、林業、牧畜、養殖と食や暮らしの知識や病に対する備えといったことまで司っているが、お二人方ともあちこちへと行かれ興味があるものや御気分でお動きになるので偶々知識を授けられた者達が他の者達に伝えております。
『土の魔王』マモン様は切り出された木々を瞬く間に木造の建物に作り替え、魔法によって作りだした石を削り出し石造りの建築を行ったりと暮らしに欠かせない御方となっており、日々新しい建物が作りだされる様子は時間を早送りしているかのようであります。
『氷の魔王』ファービュラリス様は9年の間、人間と魔物双方の代表を指導、区画整理、配置や役職、管理の仕方や計画などを一手に手掛けていました。1年ほど前に『彼方』様よりお言葉を賜り、北方へと向かわれていきました。
『光の魔王』マステマ様は法を敷き秩序の維持に努めれれ10年の間に投獄されるような犯罪を侵した者はいない、『彼方』様の福音をお聞きされる巫女の御役目と秩序の維持を兼任しているためお忙しいご様子。
本来マステマ様がファービュラリス様の代わりを行うとのことでしたが、アゾート様以外の『魔王』様方の全会一致で決定しアゾート様に決まったとのことでした。
『魔王』デモゴルゴン様は『彼方』様にお仕えされる御方でこの大陸をお救い下さった『救世の魔王』様と皆がお呼びになられている。福音の時より姿をお見えにならないが『彼方』様のお傍にいらっしゃると『魔王』様方は仰られていました。
『彼方』様は『魔王』様方の母君にして『精霊石の塔』を御建てになられた至上の御方、御姿は御見えになれずともその福音を拝聴させて頂けた者達は一様に歓喜し、生涯の忠誠を誓いました。
名も無き世界だったらしきこの世界を『ディザスター』と『彼方』様は御名付けになり世界の主となられたことで、マザーウィルの国民はその加護を賜り。加護により病める者は癒えるばかりか、体を欠損した者は再生するのです。
奇跡の数々をお与え下さった『彼方』様を我等は崇め奉りマーセナリー大陸の最初の信仰となったのです、『彼方』様は癒しと救いの存在として在られるが、神の名をお使いになることを極端にお嫌いになられる。
『魔王』デモゴルゴン様が救神と御呼びになられたことで、救神様もしくは『彼方』様とお呼びになることが決まりました。
そうして各々に与えられた役職と義務を10年間に与えられ、マーセナリー大陸の中央に位置する救神国カナタは極めて平穏な日々を送れるようになっていた。
「ぐぬぬぅ……一定の信仰って一体どれだけ必要なんだ」
「うーん、国の規模で考えますと全員より信仰を得られているのであれば条件は満たしていると思うのですが。人間種67,415名、魔物種40,266名、107,681名もの信仰を得られているすれば十分と思うのですが……よもやお母様の御膝元でお母様を信仰していない不信なるものがいるのでしょうかね、いるのでした潰しましょうそうしましょう名案です♪」
「潰したら信仰得られないし国民減るし力による恐怖政治だし、これはこれで纏まりきって無くて私好みの配分状況だしむしろもう少し混沌としてて良いんだけど、まだ情勢を難しく(ハードモード)にする必要性なんてないから手は出さないで。ああそれと、10年記念とかで私が一声入れようかと考えているんでそこら辺の調整をお願い」
「はい、お任せ下さい!他の子達には私から連絡を入れておきますのでお母様は御ゆるりとお寛ぎ下さいね、附きましては日取り段取り内容に関しても私がお決めしてしまってもよろしいでしょうか?」
「問題ない、デモ子なら安心して任せられるし~」
「ありがとうございますお母様~~♪」
「……ふむ、ねぇデモ子時が経つのは早いものだなぁ」
「如何なさいましたかお母様?」
「10年、私の感覚的にはまだ1年くらいしか経ってない気がするんだけど、お腹空いたかも?」
「時間が過ぎるのは早いですねお母様、本日のご夕食は如何なさいましょうか?」
「このやり取りも10年かぁ、麺類……ラーメンが食べたい気分だね」
領域も平和であった。
余談だが10年間魔王達の里帰りはデモ子が彼方を独り占めしたいために果たせないのであった、デモ子の巧妙な思考誘導で彼方の意識を他の魔王達から逸らしていたりする、彼方を第一に考える性格のためにこうなってしまっていたのである。
本能的に気付いている彼方は気にしていないであるが他の魔王達には堪ったものではない、創造まれて5日ほどしか共に過ごした時間はなくそれも主に戦闘時間が大半である。
魔王達は創造主の彼方に甘えたくて仕方がないのだが、まずは目的を果たすことを第一にしているため泣く泣く(本当に泣きながら)ディザスターで魔王をしているのであった。
彼方としては直ぐに会いに行けると軽く考えていたのだが予想以上に一定の信仰(何名必要なのか不明)が集まらないために少し悩んでいた、それ以外にも他の大陸についてのこともあったので早く会いに行きたいのである。
後にデモ子の仕業と知った魔王達の大ブーイングに合うがデモ子による肉体言語で瞬く間に誰もが説得されていた、彼方に創造ってもらい背中に背負った大鉈は完全に飾りと化しているのであった。
ご意見ご感想頂けたら幸いです。
誤字脱字ありましたらお教え下さい。
「彼方です、作者は私に出番をくれないようです」
「作者です、未熟です勘弁してさぁ」
「レイテルp……レイチェル・アルテリアと申します、以後よろしくお願い致します。初登場で生い立ちと時間経過の割愛なんて大役をほぼ放り投げでやりましたが私の所為ではありませんであしからず」
「やはり作者が悪い、ちゃんとプロット通りやって欲しいものだ」
「私の所為ですか……次回頑張るぉ」