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職業:魔王育成師  作者: 狭魔
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002:創造

2014/8/22 行間調整






目覚めるとそこは――


「知らない天井、でもない」


眠る前の景色と変化は無い、チュートリアルが開きっぱなしのままも変わらない。

やることも無さそうだし、猫耳少女を創造つくろう。


「私と同じ存在もの創造つくろうとしないでもらいたいんだけど」


いつの間にか猫少女シルフィが私の頭に齧り付いていた、尖った歯が意外と痛くて癖になりそう。

そう思考した瞬間に齧り付くのを止めて私から遠ざかるシルフィ、思いっきり汚物を見るような目で見られる。


「変態的思念垂れ流しで気色悪いぞ、何なんだその喜色さえ見える考え方は?」

「う~ん、大本の性格が転生を繰り返し製錬されたから?」

「……どうでもいいから思考垂れ流しするの止めろ、チュートリアル参照」


実は知っているが試しに思念垂れ流しのままにしていただけ、意識のON/OFFを切り替えて思念を制御できる、因みに今はOFFだからシルフィに実は知っていたことはバレていない。

シルフィは思念が聞こえなくなってほっとしたような表情をしている、私の思念は毒電波か。

そもそもシルフィは何でここにいる、ルナが丸投げした仕事を代行しているとかいないとかだったはず。


「これからあんたのものになる領域に案内するから付いてきて、ちなみにここは超越者が最初に訪れる場所でいつまでも長居はしちゃいけないルールだから」

「チュートリアル途中なんだけど?」

「そんなものいつでも確認できるから問題ない、それよりさっさと来い、あまりに時間がかかっては私の仕事に支障が出かねない」


シルフィが向かっていく壁の一角に出口らしきものが出来ていた、気付かなかっただけなのかいつの間にかぽっかりと出口が出来ていた。

椅子から立ち上がって出口の先を見ると似たような構造の部屋だった、シルフィに早く入れと急かされて部屋の中に入る。


「延々と通路を進んだり、私には理解できないような転移装置で移動するんだと思ったが拍子抜けだな」

「すでに摂理から外れた超越者あんたの来るような空間がまともなはずないでしょ、最初の部屋とこの部屋は一時的に回廊を形成しただけなんだし」


シルフィは案内は終わったと言わんばかりにじゃあねと簡潔な言葉を最後に部屋の中から消える、私たちが通った出口はどこにも見当たらない。

どうやらこの部屋が私の領域らしい、20m四方の白い部屋、内装は何も無い。


『超越者“彼方”が領域『星』の主となりました』


新しく私が領域の主となった情報がウィンドウのようなものに表示された、それと同時に私の魂がこの領域が私のものになったと認識する。

何でこんなに簡単に領域の主になれるのか疑問に感じ、検索をかけてすぐに納得した。

領域が異常に多い、いや多いなんてものじゃなく無限に存在する。

その内で主の存在する領域の数は百にも満たず、それ以外の領域は放置されている状況だった。

神はこれを1柱で管理していたと考えると過労死にも納得できる、神が管理していた時よりも増えているようだが超越者(元人間)には全てを管理するのは逆立ちしても無理である。

概念存在から概念生命となっても神は『唯一無二の至高の存在』、それを超越者(元人間)に丸投げするなんて、ルナ代行者シルフィみたいだ。

つまり今の神はニートということか、ニート仕事しろ。


『メッセージ:働かないことが仕事、今働いたら負けだと思う』

「働けニート」

『メッセージ:だが断る』


啓示はする、だが決して働く気はないと。ただのダメ人間的なメッセージなのに神聖で神々しい気配がしているなんて笑えないジョークだ。

神はほっとけば良さそうと判断、やれそうなことをやろう。

領域、視覚的に見える20m四方の空間が領域の限界ではない、領域の許容限界は一応無限。

本当に何でもできるけど結局は超越者次第、活かすも殺すも自由となっている。

私は早速この領域で創造なんてしようと思い、チュートリアル参照。


『創造:ありとあらゆるものを創造可能です』

「簡潔過ぎて何が何だか……」

『創造を行うにあたり、

 1:自己の能力の確認、

 2:創造物の姿形を投影、

 3:創造物の能力を設定、

 4:創造物の知識並びに性格を設定。

 以上が創造のプロセスです。なお創造物の姿形を投影後変更は出来ません』

「自己の能力の確認?」


何故創造するのに自己能力を確認する必要があるのか?

その答えはヘルプとして表示された。


『創造物の能力が創造主の能力を上回った場合、主従の逆転が発生する恐れ有り。

 創造物の能力は創造主の能力を上回らない設定とする、もしくは創造物に何らかの制約を設ける』

「だから能力の確認という訳か、理解」


自身の能力確認法はステータス確認と考えるだけ、ゲームのようだが簡単で分かり易い。




名前:彼方

種族:超越者

性別:女

職業:不明

能力:絶対領域

   完全記憶(魂)

   技能引継ぎ(魂)

   自己再生


HP:314,000,000

MP:190,000,000

ST:120,000,000


攻撃力:5,600,000

防御力:5,100,000

素早さ:6,700,000

精神力:7,200,000

技量 :4,400,000

幸運 :100




本当にゲームようなの表示で私のステータスが判明。

この数値が高いのか低いのか分からないし、この能力は一体何なんだろうか。

一般的な人間の平均的ステータスを参照してみる。




職業:サラリーマン

能力:なし


HP:80

MP:30

ST:50


攻撃力:40

防御力:35

素早さ:45

精神力:30

技量 :20

幸運 :40




参照する対象がサラリーマンだったが、それと比較なんて出来ないような高さだった。幸運以外。

続いてファンタジーの大道、『勇者』のステータスを発見したので確認してみる。




職業:勇者

能力:対魔(極)

   勝利の因果

   神の加護


HP:1,000

MP:600

ST:800


攻撃力:690

防御力:640

素早さ:600

精神力:850

技量 :510

幸運 :240




勇者と比較しても異常さ際立つ高さの能力、幸運は敗北した。

自身の能力の確認は出来たので改めて創造の方に戻ろう、幸運なんて無くてもいいんだ。

一度姿形を設定すると変更できないから慎重に考えることにする、安直に猫耳少女は止めよう。


まず性別は女性で、男性でもいいが最初に思い浮かんだのが女性だったから、両性でも性別無しもありだがそれはまたの機会にする。

年齢は15歳で身長150㎝、今の私の見た目をベースで創造を行っている、何事も最初が肝心なので失敗して残念な子を創造したくない。


目の前に光で編まれた輪郭が出来上がっていく、大まかな創造しかしていないので不完全な光の人型、これを完全な生命として創造すると考えるとワクワクしてしまう。

体はバランス優先、体に変な癖や特徴は一切なし、胸は小ぶりで、瞳はつり目で眉を細く、唇は小さめ、耳も普通の耳、顔の構成もバランス優先。


光が完全に人の形になり私が創造したままの女の子が出来上がる、ただし髪はまだ無く瞳は透明な硝子のよう、そこも創造していく。

瞳と髪形と+α、そこで人間にするか猫耳少女のようにするか分かれる、作り直し(リトライ)なんて出来ないので熟考したいがこのまま創造中の少女を長時間放置するのは可哀想と思い、やはり思うがままに創造つくろう。

耳のちょうど上に黒い角1対2本、腰に悪魔風の尻尾、背中に黒い翼を3対6枚、髪は黒紫のセミロング、瞳は血色で縦割れの瞳孔。


光が髪を、角を、尻尾を、翼を造り、瞳は赤く爬虫類を彷彿させる縦に割れた瞳孔となるが、未だに理性の光は灯っていない。

まだ姿形を創造しただけなので、目の前の悪魔風少女は中身の無い空っぽの器、これから中身を創造つくっていく。


だけど中身を造るその前にやらないといけないことがある、大きいお兄さん達はこのままでもいいかもしれないけど、私も本音を言えばこのままが望ましい。


でもしかし兎に角、服着せよう。

悪魔風少女、名前はこの後決める。に、メイド服を創造する。

無論、白いショーツとブラも付けて、ガーターストッキング完備、スカートは膝上20㎝。

悪魔風少女改め、悪魔風メイド少女、余計に長くて言いにくいので早く名前を決めたい。

次の能力を決めるために姿形の創造を完了し、私の能力を上回らない程度に設定をしていく。




名前:デモゴルゴン

種族:魔王

性別:女

職業:代行者

能力:絶対領域

   メイド

   代行者

   不滅(依存)


HP:3,000,000

MP:1,900,000

ST:1,200,000


攻撃力:50,000

防御力:50,000

素早さ:50,000

精神力:50,000

技量 :40,000

幸運 :80




私の能力を100分の1に落として上回らない程度の設定にする、10分の1だと少々不安があったので100分の1程度にした。

そもそも種族:魔王は悪魔風メイド少女の名前を付ける前にステータスで決まっていたから変更が出来ない、よって名前も魔王系統で考えデモゴルゴンに決定。

私の能力にもあった絶対領域なるもの、詳細はスカートの奥、禁断にして不可侵の領域が決して見えない。そんな能力、スカート着用時のみ。

意味のなさ過ぎる能力、見えそうで見えない。

メイドは主従関係の絶対制約、私が主、デモゴルゴンがメイド。その関係の逆転が発生しないための予防策。

代行者は主の仕事を代わりに行う事が出来る、ただし主の承認があった場合のみ可能とする能力。

不滅(依存)は創造主(私)が存在している間は決して滅びない反則級の能力、私にはそんな能力ないのに。

ここまでは順調に決まった、私の幸運よりもデモゴルゴンの幸運を高く出来たけど、主より優れた幸運持ち代行者などいないのだ。


ちなみに私はこの時知らなかったが、能力は日々変動する。

そのためその時確認した自身の能力は詳細な数値ではなくおおよその値で、後日デモゴルゴンの能力を確認して私より幸運が上回っていた。


「ここからが本番……」


思わず呟いて目の前のデモゴルゴンを見る。

可愛く創造したのに性格が難ありや破綻していたら可哀想なので慎重に行っていく、与える知識の範囲にしても同じである。

基本的な常識とメイドとして知識、基本的な常識は地球のものを流用する、メイドとしての知識は――


エロゲー関連を参照した、ただしエロの部分は削除。

エロは文化だよ、教えるものじゃない覚えるものなのだよ。


領域の仕事、管理については世界と生命の創造を削除、自己強化の方法に関する項目も念の為に削除しておく。

戦闘技術、武術、魔法、料理、掃除、医学と在ったのでこれも知識として使用することにした。

知識については今はこれくらいにしておく、戦うメイドさんにするつもりはないが知識として入れておく分には後で覚えるよりもいいはず。


そして、性格の設定。

姿形を創造するよりも自身の願望が完全に反映されるであろうが、退かぬ、媚びぬ、省みぬ。


主(私)のことを何よりも第一に考え、常にメイドとして主(私)を立てる、純真で可愛く、でも決して無理はしないで辛かったりしたら主(私)を頼って甘えることができる少女。


少ないようだが、あまり設定を詰め過ぎて矛盾や破綻が起きては最悪なのでここまでにしておく。

目の前に最終確認用のウィンドウが表示される。


『創造を完了しますか【Yes/No】』


私はYesを選択する前に創造したデモゴルゴンを見る。

これでYesを選択するとこの少女は生命として誕生し、Noを選択するとどうなるのかは確認していなかったが選択はしないので考えるだけ無駄だ。


最終確認のYesを選択する。


『領域『星』のリソース1%使用し『魔王』デモゴルゴンを創造します』


ピクリと微かに動き、瞳に理性の光が灯る、徐々に焦点が目の前に立つ私に合わさっていく。

犬のように左右に振られる尻尾、無表情だった顔は満面の笑みに変わり見ている私まで嬉しくなってしまう。

私も嬉しい、初めての創造でちゃんと生命いのちあるものが創造つくることができ、苦労が報われた。

生まれたてで覚束ない足取りで私に向かって歩いてくるのを自然と手を広げて待ち構えてしまっていた、無意識でやっていたが自分と同じくらいの背格好の子にするものじゃない。

なのでお互いに抱き付くような格好になった、最後の一歩で躓いて倒れこむように抱き付いたのはテンプレ的お約束なのかもしれない。

力いっぱい抱き付いて尻尾はフリフリ、翼はパタパタ、顔もグリグリとされて私に抱き付くデモゴルゴンは本当に犬のようでついつい頭を撫でてしまった。


「ふふふ、ねえデモゴルゴン、私が誰か分かる?」


一応確認する意味も込めて抱き付いたままのデモゴルゴンに聞いてみると、一旦私から離れ優雅にスカートの端を持ち一礼する。

生まれたてでも様になっている礼と先ほどまでのギャップに少し驚く、魔王だけど犬属性のメイドなどと私は設定した覚えはないけど。


「私の創造主で超越者の彼方お母様です!」

「……ん?」

「お母様~♪」


再び抱き付いてくるデモゴルゴン、私はその間言葉の意味を理解するのに多大な時間を要しされるがままだった。

魔王で犬属性メイドじゃなく、魔王で娘メイドなどと私は設定した覚えはない。

もしや、『決して無理はしないで辛かったりしたら主(私)を頼って甘えることができる』がそれに該当するのかもしれないと結論し、考えるのを止めた。


私は超越者で魔王の母親となった。



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