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職業:魔王育成師  作者: 狭魔
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001:彼方

2014/8/22 行間調整





私の名は彼方かなた、ただの輪廻から外れた女だ。

幾たびの転生と死を超えて魂が製錬されたきった時に、世界の断りから完全に外れた超越者なるもの、らしいが興味はない。

職業は『魔王育成師』、私しかいない仕事。

本来、魔王とは自然発生する存在だった、世界に蔓延する負の最終集約点として顕現し、カウンターとして誕生する勇者によって倒される定めである。

私の行った興味本位の創造で魔王が誕生してしまった、それから私の仕事として魔王を育成することになりました。

言ってしまえばこの程度のことで魔王は生まれ、私はその育成師となったのである。






また死を迎えたと思った、これまで幾千幾万幾億と繰り返してきた行為。

死とは私のライフサイクルの一つとして固定されたものだった、だからその時の奇妙な違いに気が付いた。

世界から色が消え徐々に光焼失し無へと還っていく、これまで通りであったその中にあった歪み。

砂粒よりも極小の歪み、意識していても捉えるのにギリギリの歪み。

これまでの転生において初めて認識するモノ、今までにおいて気づくことのなかった存在。

私は無駄とは思いつつも、その歪みに意識を向ける。



意識が瞬間的に反転し世界に再び色が戻る。



「おめでとう、ついに人の枠を超えましたね」


突如として響く音を震わす声でなく、魂に直接響く声が私にかかる。

色の戻った世界は、死の直前の風景ではなく白い部屋。

白い部屋の奥、木製の椅子に座った男とも女とも判別のつかない誰かが私を見ていた。

銀色の髪に黄金の瞳、柔和な笑みを浮かべて私のことを観察しているような眺めているようなそんな視線を向ける。

中世的な容姿と纏うオーラが神聖を気配を感じる、なお全裸ではない、白いローブを着ている。


「……いや君、何でそこで全裸とか考えているのかな?」

「あなたが神という存在ならば人間の論理間や常識では計り知れないと私は考えていた、なお現在進行形でそのローブの下は何も穿いていないと私は考えている」

「ちゃんと穿いてるしブラも付けてるから、わたし裸族なんかじゃないんだから!?」


どうやら目の前の存在は女性だったらしい、最後の方は何かトラウマでも思い出したのか悲鳴に叫びだった。

それと私の声も音ではなく魂に直接響くものらしく問題なく意思の疎通ができたあたり謎だが便利だ、イチイチ何か特別な方法で意思の疎通をする必要がなく助かる。

あと私の思考勝手に読まないで欲しい、プライバシーの侵害で訴えてやる。


「はいストップ、それ以上言わなくても分かったお姉さん分かったからお願いだから訴えないでぇー」


どうやら彼女は過去に訴えられた経験があるようだ、そんな泣きながら縋り付かれると可哀想なのでプライバシーの侵害で訴えるのは止めよう。

代わりにセクハラで訴える。


「変わんないからぁちゃんと言葉で意思の疎通しようよぉー、お互いの認識の違いを言葉で埋めてコミュニケーション取ろうってぇー!」

「完全に最初に感じた神聖な気配も消失し、雰囲気ぶち壊しで泣きながらセクハラまがいに私に縋り付いてる可哀想な子なのであった、まる」

「そんなこと態々言葉にしなくていいからぁわたしだって好きでこんにゃ、ぐすっ、あんにゃいにんにゃんて、ひっく、しているわけじゃにゃいんだがらぁーー!!」


完全に泣いてしまってあやすのに随分と時間がかかり、部屋に現れた猫耳猫尻尾の少女に宥められていた。

その間私は猫耳猫尻尾少女の耳や尻尾をモフモフしたりして有意義な時間を過ごし、部屋を後にしようとして止められどこからか取り出したロープで簀巻きにされて床を転がっている。

私は何も悪いことしていない、言葉責めで銀髪の残念な女性をからかっていただけだ、あと現在進行形で監禁されている。


「取りあえず何も考えるな、これ以上主を精神的に追い込むな、ようやく引きこもりから卒業出来たんだから……」

「考えるな感じろ、つまりそういうことか理解した」

「猿轡も必要かな、それともギャグボールの方が好みかぁ」

「…………」


そろそろ真面目に聞くとする、私も初めて経験で混乱していたのかもしれない。

決して銀髪の彼女に嗜虐心が刺激されたからじゃない、私は悪くないと思うきっとたぶんおそらく。


「あむっ(怒)」


猫耳猫尻尾少女に頭を齧られたけどご褒美です、ありがとうございました。


「ぺっ」


そんな私の思考を読んだのか速攻で齧るのを止めてしまった、残念もう少しで上りつめられたのに。


「い、いい加減に話進めてもいいかな……?」

「それには私も同意します」

「あんたが原因だ!」


猫耳猫尻尾少女、略して猫少女のに隠れるように銀髪の女性が話を進めようとする。

猫少女は耳と尻尾を逆立てて私を体全体で怒りを顕わにしている、その姿もまた乙で――






「それで私はその超悦者とかになったのか?」

「違う発音同じだけど超・越・者、もしくは達成者、到達者、超越種とか他にも色々あるけど、人間の枠組みを超えた者ってこと」


懇切丁寧に説明してくれた銀髪女性、ルナと名乗っていた彼女も私と同じような超越者らしい。

私の顔に爪の後を刻んでくれた猫少女はルナの代行者、風の代行者シルフィという名であった。

まず超越者とは何か、『人間の枠組みから外れた存在、もしくは人間を超えた存在』。

至るには幾度も転生を繰り返し魂の製錬を行い、その果てに私が見つけた歪みを見つけそこ至り輪廻から外れること。

歪みとは輪廻の隙間、理の果て、円環の外に至る穴で刹那の時よりも短く気付けたとしても至るのは至難。

方法は簡単でも難易度はアンリミテッド、偶然で至る可能性は限りなくゼロだがゼロではないので極僅かに存在する。

次いで代行者とは、超越者を補佐するために超越者が創造する、使い魔や従者のような者。

私はこれを聞いた瞬間、猫耳を創造しようとしてシルフィに引っ掻かれた。


最後に超越者と至った者は一体何をするのか。


「別に何もしなくていいし、何かしたいならすればいいし」

「なん……だと」


それは所謂ニートなのではと言いかけて、改めて目の前のルナさんを見るといつの間にか目を逸らされていた。

先ほどのシルフィの話では『ようやく引きこもり卒業できた』と言っていたから――


「その話題禁止」

「思考読むの禁止」


これ以上この話題は止めて、出来る事をしてみることにする。

これ以上彼女の心のトラウマを掘り起こすとシルフィによる引っ掻き傷だらけになりかねない、猫の引っ掻き傷はヒリヒリと痛むし。


「それで、超越者ってやれることって何があるの」

「何でもやれるけど、世界の創造なり、異世界行って俺つえでも、SFでロボ乗っても、ハーレムでも、変態的なことでも、何でもできるよ」

「…………ふぅ」


餅着け、冷静にクールなるんだ、素数を数えて冷静な思考を取り戻そう、1、2、3、5、7、11……

落ち着き深く深呼をしようやく二人に視線を戻すと、苦笑いを浮かべたルナと残念なものをみるシルフィがいた。

改めて言われた内容を整理する、世界の創造、無双、SF、ハーレム、これなんてエロゲー、etc.となる。

世界の創造、言葉の通り神の業で超越者に可能なのか疑問に感じたがルナは可能だと言った。

無双、幾度も転生を繰り返してきた私にとっては一度や二度の経験ではなく今更なもの。

SF、同上。

ハーレム、同上。

これなんてエ(ry。

なるほど、やることなんて無いからルナはニートしていたんだと納得してしまった。

ルナは頷き、私達は固く手を握りあった。

お互いにやれることなんて無い、故にニート。

運命から外れ転生を繰り返し人を超え行き着いた先はやること無い超越者ニート、引きこもって堕落する気持ちがよく分かった。

苛烈に熾烈に生きて死んでその果てに得た答えがこれでは報われない、私たちは言葉もなく分かり合えた、これがきっと本当に分かり合うということなんだと理解かった。


「ネコパンチ!」


柔らかい肉球 (爪が出た状態)で私だけ殴られ(引っ掻かれ)た。

シルフィは私とルナを引き離すと小脇に抱えて脱兎の如く(猫なのに)白い部屋からいなくなってしまう。

去り際にルナの「働きたくないでござるぅ~~~~っ!」と、何とも物悲しい悲鳴が聞こえた。


「……あ、知らない天井出来なかった」


本当にどうでもいいことを考え何とはなしに部屋に残っていた椅子に座り、何が出来るんだろうととボンヤリと考える。


『新人超越者へのチュートリアルを開始します【Yes/No】』


何度も認識を改める必要が有りそうな気がし、考えるのを放棄したい気分になってきた、正に考えるな感じろ。






そうしてチュートリアルとヘルプを行って判明したこと、神は死んだ。

冗談じゃなく死んだ、過労で、冗談ではない。

超越者ルナが神の代行者として神の代わりを務めてニートしていた、主に仕事はシルフィが代行して。

そもそも神は概念存在だったが、人の創造が概念を生命の様なものに昇華し概念存在の神は概念生命と成った。

生命と成った事で存在とは異なる理と摂理によって縛られ、過労死、本当に冗談ではない。

再び概念存在に戻るも同じことの繰り返しでループし続け、概念存在→概念生命→過労死→概念存在……エンドレス。

そうして最初の神から今の神に至るまでの試行錯誤でルナと言う超越者が誕生し、神は過労死したあと復活していない。

このチュートリアルも神が超越者用に作成したもので、これを見て知ったルナは引きこもった、シルフィに丸投げして。

私も最初にルナに合わずチュートリアル(これ)を知ってしまったら引きこもっていたと思う、引きこもりの実例を見て認識したから幾分マシになったし明日から本気だそう。

そうして私は椅子に座ったまま眠りに落ちた、チュートリアル開きっぱなしのままで。



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