私って凶暴?
書いていて楽しかったので、一話だけ書きました。
私が異世界に召喚されてから、もう半年が過ぎて、この世界の生活には慣れてきたけど、でもどうしても慣れない事が一つだけあるのよね〜。
それは、太陽が顔を出さないこの魔界では、穀物が栽培出来ないのでどうしても、食事は肉が中心となってしまうのだ。
健康な二十歳の女子にはかなり、キツイ事なのだ………お肌が荒れるよ!
この魔界では草木は生えているのだが、どうしても食用では無いのだ。
魔界の草木は瘴気を吸って育つ為に、毒草となってしまうのだ。
そんな知識をアデルの側近のロキから、教えて貰ったのも何だが遠い記憶みたいに思える………あの頃の私はどうしても野菜が食べたかったので、何回かお城から逃走して人間界に行こうとして、ロキ達に追われていたわね。その度にロキ達を血祭りにしていたわね………懐かしいわ!
私がそんな事を思い出しながら、城の最上階の部屋の窓から外を見ていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「は〜い?空いているわよ!」
私が返事をすると、ドアが少しだけ開くとその隙間から中学生みたいな男の子が顔を覗かせた。
私はその男の子が直ぐにアデルだと分かったので、少し怒り口調で話し掛けた。
「アデル!何時も言っているてしょ!部屋に入る時は"失礼します"って言わないとダメだって!!」
アデルは私の言葉にビクッとして、瞳をウルウルさせながら、泣きそうになっていた。
そんなアデルに後から来た側近のロキがアデルの頭を優しく撫ぜていた。
私は少し呆れながら、やって来たか親バカが思った。
私はロキの親バカっぷりに、頭にきてロキに一言言ってやった。
「ちょっと、ロキ!あんたは何時も何時もアデルを甘やかして、アデルが一人前の魔王にならなくて良いの?」
私がロキに対してそう言うと、ロキは顔を強張らせながら愛用の黄色いハンカチを出すと滲み出る汗を必死に拭いていた。
何時も思うのだが、ロキのそのハンカチは汗臭く無いのだろうか?何時も私と話す度に汗をたくさん流しては拭いての作業を繰り返している………う〜ん、今後、ロキには近寄りたくないな!
私がそんな事を思っていると、ロキが恐る恐る私に話し掛けてきた。
「ま、茉莉花様、そんなに急いでアデル様を一人前にしなくても良いのでは無いかと思うのですよ………ほら、成長にも個人差がありますから………」
ロキはそう言うと、私の顔色を伺っていた。
私はロキの言葉に一瞬堪忍袋の緒が切れそうになった。そして私は一瞬だけ記憶が飛んだ。
気が付くとアデルがブルブルと震えて座り込んでいた。
ロキは頭から城の壁に突き刺さって、何時もの様に足をピンと伸ばして痙攣していた。
そんなロキを見て、私は毎度綺麗な刺さり方をするもんだと感心していた。
そして私は怯えているアデルの手を握ると、アデルを起こして部屋を出て行こうとした。
部屋を出て行く時に、多分聞いてはいないだろうと思われるロキに向かって喋った。
「成長に個人差があるって言ったわよねロキ!あんたは200年の間、何をしていたのよ?」
私はフンッと鼻を鳴らすと、アデルを連れて部屋を出て行った。
アデルは壁に突き刺さっているロキの横を通る時に何か呟いた。
私はアデルの半径2メートル内なら、アデルの言葉を聞き取る事が出来る様になった。
最初は直ぐ傍にいても何を言っているのか分からなかったが、慣れっていうのは恐ろしいものである。
アデルは、ロキに向かってこんな事を言ったのだ。
「ごめんね僕のせいで、迷わず成仏してねロキ!」
私はあえて何も聞かなかった事にして、アデルの手を引きながら、廊下を歩いていると曲がり角の先から話し声が聞こえてきた。
私は人の話しを盗み聞きする趣味は無いので、気にせずそのまま歩こうとしたら、突然私の名前が話しに出たので、思わずその場に立ち止まってしまった。
私が気配を消して曲がり角に近づくと、見張りのゴブリンとオークの二匹が立ち話しをしていた。
この二匹は一体、何を話しているのだろうと耳を傾けると、こんな会話が聞こえてきた。
「おい!さっきの音聞いたかよ?」
「ああ、聞いたぜ!また、ロキ様が茉莉花様に半殺しにされたんだろうな!」
「多分な!でも、茉莉花様って本当に人間なのかよ?アデル様を怯えさせて、魔族でも最強クラスのロキ様を一撃で倒すんだぜ!」
「そうだな!あの方は全ての存在を超越した存在だろうな!」
「やっぱり、お前もそう思っていたんだ!」
「ああ、あの方の強さを見れば誰だってそう思うさ!」
「なぁ〜俺思うんだけど、茉莉花様がその気になったら、魔界だけじゃ無く人間界や天界も征服出来るんじゃね〜かな?」
「多分、出来るだろうな………でも、茉莉花様はそんな事には興味はなさそうだしな!でもさ、前から思っていたんだが魔王様は茉莉花様の何処が好きになったのかな?確かに茉莉花様は凄い美人だけど、中身が残念なんだよな〜!」
「お、おい!馬鹿な事を言うなよ!もし茉莉花様が聞いていたら、俺達殺されるぞ!」
私は二匹の会話を二度と忘れぬ様に頭の中に記憶すると、知らぬ間に笑っていた。
私の笑った顔を見たアデルは、今にも泣きそうなぐらい震えていた。
私は、アデルも怯える笑顔の表情で二匹の前に姿を表すと、先程まで楽しそうに話していた二匹の表情は凍りついた。
「あんた達………楽しそうな話しをしていたわね………」
私がそう言うと、二匹はガタガタと震え出してその場に土下座した。
「ま、ま、ま、茉莉花様!どうかお許し下さい!!!」
「も、も、も、申し訳御座いませんでした!!!」
二匹は必死に私に謝ってきたが、私は既に記憶を無くしていた。
アデルは一方的な虐殺を、ガタガタと震えながら、早く終わる事を願いながら待っていた。
とりあえず、ここまでで辞めときます。
読んで頂き有難う御座いました。