泣き虫魔王と私
思い付きで書いてしまいました。
いきなりですが私は只今、絶対絶命の危機に遭遇しています。
右を見ても左を見ても魔物の集団で一杯です………はい…絶対に逃げられません。
その魔物の集団から少し離れた木の影から、怪しい人物が私の事をニヤニヤしながら見つめています。
何かムカつきます。ハッキリ言ってムカつきます。
仕方ないので、私は手に持っている傘を武器として構えるしかありません………傘が武器になるか!!
心で叫んでいる自分に涙が出そうです。
そんな事を思っていると、木の影から私を見ている怪しい人物がそんな私を見て何か言ってます。
「………………」
何を言っているのか全然聞こえません………男ならハッキリと喋れ!
怪しい人物は、私に聞こえてないと分かったのか魔物の集団の方を見て手招きをしています。
その魔物の集団の中から、幹部らしき者が溜息をつきながら怪しい人物の元へ駆け足で走って行きます。
私はその幹部らしき男性に見憶えがありました。
この魔物達の幹部をしているヴァンパイアのロキでした………貴方も大変だねロキ。
同情の眼差でロキを見ていると、怪しい人物はロキに何やら小声で話しています。
話しが終わったのか、突然ロキが私の方を見て話してきた。
「散々、手間を掛けさせよって!観念するんだな、逃げ場は無いぞ!」
ロキはそう言い終わると、また怪しい人物はロキに手招きをして何やら小声で話しています。
私はそれを見てかなり苛々していますが、今年20歳になる私は子供みたいにキレる訳にもいかないので、我慢しています………でも、かなり爆発寸前です。
話しが終わったのか再びロキが私を見て話してきました。
「茉莉花よ……僕の何処が気に入らないんだよ!僕は小動物だから、一人にすると淋しさで死んじゃうぞ!だから、早く城に帰ろう!」
その言葉を聞き終わると、私は心で奥からフツフツと怒りが込み上げてきました………もうダメ!我慢出来ない!
「誰が小動物ですって?………そんな小動物なら、死んじゃえアデル!!大体、貴方は自分の口で伝える事も出来ないの?そんなんだから、部下からも心配されるんでしょ!ちょっとは魔王らしくなりなさい!!!」
私は思わず叫んでしまった。
私の言葉に木の影に隠れて見ていた一応魔王のアデルは今にも泣きそうな表情をしていた。
そんな状況を見ていた魔物達はオロオロして私とアデルを心配そうに見ていた。
今にも泣きそうなアデルをロキが頭を撫でて泣かない様にあやしていた。
私はそんなアデルを見て更に怒りが込み上げてきたので、ロキに怒鳴りつけました。
「ちょっと、ロキ!!!あんたがアデルを甘やかすから、ちっとも成長しないじゃない!!!」
私がロキに叫ぶと、ロキは苦笑いで私を見ながら溢れ出る汗をハンカチで拭いていた。
「で、でも、茉莉花様………流石に先程のは言い過ぎではないでしょうか……!?」
ロキは話しを終える前に茉莉花の異変に気付き、更に汗を滝の様に流し震えだした。
「貴方………いい度胸してるわね………」
こいつ等がアデルを駄目にしているのね。なら、排除しちゃえばいいんだ。
私はロキの親バカっぷりに、堪忍袋の緒が切れましたね。
キレてからの後の事は覚えてません。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
気が付くと私以外の魔物は皆気絶しており、ロキも頭から地面に突き刺さって足が痙攣している。それに地形も少し変わったかな?………うん、またやってしまった。
私はブルブルと震えて座り込んでいるアデルを見つけたので、アデルを起こすと一言言ってあげました。
「あんたも一応魔王なんだからさ、ちょっとは成長しなさい!」
コクコク!!
アデルは私の言葉に何度も何度も頷いた。
でも、こうなったアデルって仔犬みたいで何か可愛い………母性本能に訴えてきてるのかな?
「じゃ〜帰ろうか!」
私はアデルの手を握って魔王城に帰って行った。
■■■■自己紹介■■■■
おっと、私の自己紹介がまだでしたね。
私の名前は佐藤 茉莉花、今年で二十歳なります。
私は普通の大学生をしていたんだけど、この一応魔王のアデルに召喚させられて異世界に連れて来られたの………不幸だわ!
召喚されたはいいけど、帰る方法がこの泣き虫魔王のアデルを一人前の魔王にして、覚醒させないと駄目みたいなの………先が長いわ………グズん。
それから、私にはチートみたいな能力があって、普段は自分では制御出来ないんだけど、堪忍袋の緒が切れと辺り一面を破壊しちゃうみたいなの………これをやると何時も記憶が無くなるのよね………う〜ん反省。
それから、何故だか召喚されて直ぐにアデルに一目惚れされて、今の私の地位は魔王の婚約者になっています………う〜ん困った!
次にアデルの紹介をするね。
私を召喚した張本人で一応魔王なんだけど、見た目的にも頼り甲斐がないの………泣き虫で捨てられた仔犬みたいな奴なの!でも、これでも200歳らしいのよね………見た目は中学生みたいなのに、世界の七不思議?
潜在能力は図り知れないって、ロキが言っていたけど信じられない!
次にアデルの世話役と魔族の幹部をしているヴァンパイアのロキを紹介するね。
ロキは先代の魔王(アデルのお父さん)の代から仕えてきたみたいなんだけど、とにかくアデルに対して甘過ぎる!
私がアデルに対してちょっと言い過ぎと、直ぐにアデルを庇うのよね………親バカみたいな存在!
私も何度かロキにキレて多分、二十回は半殺しにしたと思うけど………覚えてない!
でも、ロキが作る手料理は絶品なのよね………悔しいけど、そこは認めてあげるわ!
とりあえず、こんな感じで気長にアデルを鍛えながら、毎日を過ごしています。
読んで頂き有難う御座いました。
ではでは。