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おじいちゃんの宝箱

作者: 飴色茶箱

《一枚目の写真》

駄菓子屋さんにはファミコンというものが置いてある。

昔、流行った、ゲーム機らしい

おじいちゃんは定年して暫くしてから「暇つぶしだ」と言って駄菓子屋さんを始めた

駄菓子屋さんには、おじいちゃんが作ったソフトが遊べるゲーム機が6台置いてある。

なぜ6台かというと、おじいちゃんが若いころ、そのゲーム機で遊ぶソフトをプロデューサーとして作ったソフトが6本だからだ。

私はこの駄菓子屋さんが好きで、おじいちゃんがちょっと出かける時なんかは、よくお店の番をしていた

お客さんは小学生低学年の男の子が多くて、私も一緒になってよく遊んだ

その駄菓子屋さんの玄関先で撮った、おじいちゃんとの写真





おじいちゃんの四十九日法要の日、

おばあちゃんから7枚の写真とインターネットサイトのアドレスが書かれた紙

そして、9ケタの正しいアルファベットを入力しないと、開かない箱の3つを渡された


おじいちゃんが生前、この日に私に渡してくれと頼んでいたみたい

7枚の写真には番号が振られていて

写っている場所は全部バラバラ、私が3歳のころからつい最近の中学1年までの7枚

どれも私とお爺ちゃんのツーショット!!


サイトのアドレスが記されてあった紙・・

サイトにアクセスすると「思い出風景認証アプリ」というのを、スマートフォンにダウンロードすることができた


このアプリは、おじいちゃんが一人で開発したみたい

番号が振ってある写真と同じ風景を番号順にとっていくと、クリアとなる

1つ風景をクリアするごとにおじいちゃんの作ったゲームがダウンロードすることができる

これはお爺ちゃんから私への最後の挑戦状だ。

私は学校が休みの土日を使って、思い出の場所を順に回った。

写真の場所を訪れるたびに鮮明に楽しく懐かしい思い出が溢れてくる

順調に6枚の写真をクリアし残り一枚!


問題は7枚目の写真


朝食のイワシのみりん干しを食べながら私はお母さんに聞いた

「ねえ、おかあさん。この写真って、昔住んでた、団地の近くの総合公園だよね」

そういいながら、⑦と番号が振られている大きな木の前で、私とおじいちゃんがピースサインを作って写っている写真をお母さんに見せた。


「どれどれ見せて!そうねえ、間違いないよ、昔よく遊んだじゃないお祖父ちゃんと」

写真を覗きこみながら言う


「だよねぇ・・でも、ないんだよねえ」

低いトーンの声で私が言う


「ないって?なにが」


「木がないんだ。ほら!」

私が小学2年の時、おじいちゃんと私が一緒に写った写真。

そして昨日、スマホで撮った写真の画像を横に一緒に並べた。

同じ場所なのに、そこにあるはずの木が一本無くなってる。


「ほんと、確かに木が一本ないね」

頷きながらお母さんは写真を見比べた


「木が一本ないせいで、認証率が91%にしかならないんだ」


「認証させるには95%でクリアだっけ?100%じゃなくてもいいんなら、棒でも立てたらいけるんじゃない?」


この思い出風景認証アプリで番号を選択し、風景を撮るとその番号の風景と何パーセント一致しているかを判定する機能が付いている

当然6枚の写真は簡単にクリアできたんだけど・・最後の一枚で苦戦中


「そうかなあ、そんなに簡単に行くとは思えないんだけど」


私はスマートフォンを操作し、思い出風景認証アプリを起動させた


思い出風景のうち、おばあちゃんから貰った写真の、1から6まで・・

つまり6つはすでにクリアした

なので、クリア報酬のゲーム6本のダウンロードは完了している。

となれば残りは

「さあ、次はいよいよ、この箱の解除パスワードかなあ」


「どうせ、あなたが駄菓子屋で店番してた時の、お駄賃でも入ってるんでしょ」

お母さんが箱の中身を断言した口調で言った。ほとんど見当がついてるようだ


「もう、お母さん!なんで、先に答えを言っちゃうの」

私もそれは考えたけど・・ヒドイ・・お母さんの推察力は半端じゃなく大抵の事は当たる


「ちょっと振ってみたら?小銭の音がするかもよ」


「だから、開けるまでのお楽しみを先に言わないで」


「お父さんの考えそうなことだもの、分かるわよ。娘だし、その木がないのだってお父さんの計算ずくかもしれないよ、最後に沙耶のことを苛めてやろうと思ってるんじゃないの」

鼻で笑いながら私を見る。


「そうかもしれないね、お祖父ちゃんの最後の問題だね。でも楽しいよ、イメージ通り簡単にできちゃってもつまんないし」

これは負け惜しみじゃなくホントのことだ。この7枚目の問題が解けたらおじいちゃんとの遊びが永遠に終わってしまいそうで、名残惜しかった。


「でも、沙耶、ゴメンね。お父さんもお母さんも、全然手伝えなくて」

お母さんがちょっと申し訳なさそうに言った


「ううん、大丈夫だよ!お父さんもお母さんもサービス業だから仕方ないよ。土日は稼ぎ時だしね。それに今日は沙希に手伝ってもらおうと思ってるんだ」


「それにしても沙希、起きてこないね、朝ごはん冷えちゃうし起しちゃおうか」


「沙希は、おこさないと。いつまでも寝てるからね」


「沙希~日曜だからって、いつまでも寝てるんじゃないよ~お母さん、もう仕事に行くからね」

2階に向ってお母さんが大声をあげたが返事がない・・・


「もう!しょうがないね。あっもうこんな時間!!沙耶あとはお願い。じゃあ、いってくるね」お母さんが時計を見ながら言った。9時半を回っていた。

お母さんは化粧台で身支度を素早く整え、急いで上着を羽織ってバッグを手に取った


「後片付けと、洗濯物干しやっとくね」


「ありがと、頼りになるね、お姉ちゃんは」

お母さんに褒められると悪い気はしない。


「えへへ~いってらっしゃ~い、ファイトだよ~」

そう言って、お母さんを送りだした後

二階から下りてくる足音が聞こえてきた

「お姉ちゃん、おはよ~」


「おはよ~沙希、遅いぞ、お母さんもう仕事行っちゃったよ」


「朝ごはんは?~」


「お味噌汁温めて!あとイワシのみりん干しがあるよ」


「やった~イワシイワシ」

沙希はお魚が大好きだ。

外食に行ってもハンバーグとかカレーライスとか私は頼んでしまうんだけど沙希はお魚ばっかり注文する。

だからウエイトレスが運んできたとき、私と沙希のどちらが注文した分か、迷うことがよくある


「早く朝ごはん食べて!後片付けして洗濯物干したら、一緒に出かけるよ」


「えっ!どこに行くの?」急に言われたからか沙希は驚いた


「おじいちゃんからの最後の問題を解きに・・これが結構、難問なんだ。」


「ああ、あのアプリのことだね、いいな~お姉ちゃんだけ・・お祖父ちゃんと仲良しで」

少し羨ましそうに私を見た


「沙希が全然駄菓子屋に遊びに来ないからだよ、それにまだ携帯持ってないでしょ」

沙希は来年中学に上がる。両親にはそれまで我慢しなさいと言われていた


「だって、あの雰囲気あんまり好きじゃなかったんだもん、男子が一杯いるし」

沙希は男子と話すのがあまり好きではないらしい。私もそうだけど、でもあの駄菓子屋だけは特別な空間だった。


「私は、好きだったけどな・・お祖父ちゃんのお店・・で・・沙希ちょっと今日は一緒に付き合ってくれないかな?おねがい!2人いないと私の作戦が実行できないから」


「いいよ、どうせ今日は暇だし」と言って、あっさりと了承してくれた


「行くところは小さい頃、住んでた団地の近くの公園だよ」


「ああ、あのちょっと広めの公園か・・今日は天気もいいし気持ちいいだろうな~それにお姉ちゃんと、二人だけで出かけるのって久しぶりだね」


「うん」

沙希と出かけるのはホント久しぶり 

昔はよく団地近くの公園で遊んだね

最近は友達とばかり、遊んでるから・・こういう機会もめったにないね!

たまにはこういうのもいいかも



家の用事を沙希と協力して済ませた私たちは、駅に向かった

小さいころ住んでた団地は、電車に乗って2駅のところにある

電車に揺られ懐かしい風景が近づいてくるのを見ながら、その間に沙希に6つの写真はクリア済みな事、7つ目の写真は木が一本ないため認証されないことを説明をした。



「ふ~ん、認証率か・・もしかしたら、夕方とか夜とか時間によっては変わるんじゃないかな、見え方によって」小学生なのに鋭い意見!


「それは、私も思ったよ、もしかしたら時間や撮る角度によって認証率が変わってくるのかも。昨日はそう言うこと試さなかったから、やってみる価値はあるね」

とりあえず、色々試してみるしかない。

昨日は私一人しかいなかったけど、今日は沙希もいるし、何とかなりそうな気がした。


「あ~なつかしいなあ、この公園、ほらお姉ちゃん覚えてる?私、幼稚園の時、あのすべり台を滑るときに、勢いあまって顔から落ちちゃったんだよ」

赤い滑り台を指しながら沙希は言う


「覚えてるよ、あの時は沙希が気絶して、死んだんじゃないかって、私も泣いちゃったよ」


「えへへ、ごめんごめん」照れながら沙希は笑った


ホントにあの時は大変だった。

また、こうして、この公園に来ることができるなんて・・あの時は思わなかっただろうな・・


そんな事を考えていたら、なんだか変な服装の男の人たちが何人かいて何かやってる。

公園であんな服装・・何やってるんだろ


「それよりさ、お姉ちゃん!さっきから、なんだか変な人たちが、空き缶とかを拾ってるんだけど」

沙希が男の人たちを凝視して何をやっているのか確認した。沙希も気になったみたいだ・・


「そうだね・・」

あまり触れないようにしようと思っていたけど・・


なぜか、黒いスーツを着てグレーのサングラスをかけた男の人たちが

一生懸命に公園のゴミ拾いをしていた


「何かのイベントかな~コスプレ清掃大会なんちゃって」

頑張ってゴミ拾いをしているお兄さんたちを見て、沙希は面白がって言った


「よくわからないけど、そんな感じかも」

でもよく見ると、女の子が一人混じっている。

白のジャージを着てる。サラサラの長い髪で肌が白く顔が小さい。

凄く綺麗な人・・・高校生ぐらいかな・・


「沙希!あまり関わらないようにしておこう!ゴミ拾いしているから、イイ人たちなんだろうけど」


「そうだね、それより、お祖父ちゃんとのツーショット写真の場所はどこかな」


「あそこだよ」

私は沙希が小さい頃に怪我をした滑り台の裏側を指差した


「お~あそこか・・確かに木が一本なくなってるね」

沙希は7枚目の写真と今の風景を見比べた。

「あれ?お姉ちゃん!この写真、春の写真だよね。桜が咲いてるし・・今は秋、真っただ中だよ」


「知ってるよ!だから、おじいちゃんは認識率を多少の誤差があってもクリアできるようにしてるんだと思う」


「なるほど、そういうことか・・」


「そういうこと、このアプリは100%を目指す必要はないんだ。95%でクリアだから、

何か立体的なものがその場所にあれば認証率が上がるかもしれない、ねえ、沙希!私が木のところに立ってみるから、アプリで撮ってみて」


「あっ、お姉ちゃんが木の代わりになるってことか!これがお姉ちゃんの作戦?」


「作戦ってほどじゃないよ・・試しにとりあえずって感じかな」


「わかった!それじゃお姉ちゃんの携帯貸して!」

そう言って沙希は手を出した


「はい、よろしく」

私はアプリを起動させ沙希に携帯を渡した


「うまくいくといいな~それじゃあ、撮るよ~」

ワクワクしながら沙希が携帯を構えた


「はいチーズ!」


私は両手をあげて木になりきった。



「あっ!」

沙希の目が大きく見開いた

「どう?認証率は」

早く結果が知りたい


「昨日は91%だったんでしょ?92%に上がったよ。すごいすごい」


沙希はすごいと言っているが私は少し残念だった。

「1%だけか・・ちょっと撮る角度とか変えてみて」


「オッケ~」


「どう?変わった?」


「う~ん、逆に認証率は下がっちゃうよ。やっぱり写真と同じ角度からが一番いいみたいだよ」


「やっぱり?」


「じゃあ、今度はポーズを変えてみる」


「あ~また下がっちゃったよ。両手を上げているのが一番みたい」


思ったよりもこれは、難問かも知れない・・

何度かポーズを変えてやってみたけど92%以上には上がらなかった


「でも、これで認証率が変えれることがわかったんだから、あとは木の大きさに近いものを探してくればいいだけだね」沙希は楽観して言う


妹ながら的確な指摘だ・・だけど・・

「そういうことだけど、それがなかなか難しいんだよね」

周りにそういうものがあるといいんだけど


正直なところ少しがっかりした自分がいる、もしかしたらうまくいくんじゃないかという期待があったから・・でも切り替えなきゃ!!まだまだこれからだぞ!


「何か木の代わりになるものを探そう!」

私は沙希に力強くいった。それは自分を鼓舞させるためたったのかもしれない


「わかった!」沙希は頷いた


私たちは周りをキョロキョロと見渡した

しばらく公園を探索していると

先ほどすれ違ったゴミ拾いをしていた一人がこちらに近づいてくるように感じた


「お姉ちゃん・・なんか、さっきゴミ拾いしてた人の一人がこっちに近づいてくるよ」

沙希も気づいたらしい


少し怖がって私の後ろに沙希は隠れた

「大丈夫だよ・・」

私はそう言ったが唐突な出来事に、少し心臓がバクバクしている


黒のスーツにグレーのサングラスをした男の人が、沙希の行動に気づいて


「やあ~お嬢ちゃんたち、俺、全然怪しい人じゃないから。安心してよ」

と言ってきた。声だけ聴くと結構若い感じがした


「こんにちは!お嬢ちゃんたち、さっきから何やってんの?」

とサングラスととりながら私と沙希に聞いてきた。

なんだか、なるべく軽い口調で私たちの警戒を解いているような話し方に感じた


「こ、こんにちは」

ちょっと怖かったので、愛想笑いをしつつ、少しぎこちない返事をした

あれ?この男の人・・まだ10代?かな・・・

サングラスを外した顔にはまだあどけなさが残っていた。


挨拶が終わるとまた男の人はサングラスをかけ直した


「写真を撮っているんだよ」顔を見て少し安心したのか沙希が答えた。


「へぇ~変なポーズをとって?」

興味本位で聞いているみたいだ


「あれは、まあいろいろとありまして、説明すると長くなりそうなので・・」

いや本当に長くなるので聞かないほうがいいです・・


{なにかあるわけ?気になるねえ~}


「ねえ、お姉ちゃん、このお兄ちゃんに手伝ってもらったらどうかな」


「えっ」

急に沙希がお兄ちゃんと呼び、手伝ってもらうことを提案したので私は驚いた



「ほら、このお兄ちゃんに木の役をやってもらえばお姉ちゃんよりも身長が高いし認証率が上がるんじゃないかな?」

それはそうだけど・・・


「認証率?なにそれ」

何のことか分からないという顔をお兄さんはした。


「確かに・・そうかも・・でも悪いよ、急にそんなこと頼んだりしても」


「俺は、全然かまわないぜ、大したことはできないけど何かあったらいいなよ。力になるぜ」


沙希はこのお兄さんのことを気に入ったみたいだし、お願いしてみようかな

「じゃあ、あの、お兄さん、ちょっと手伝ってくれませんか?」


「もちろん!そのために声をかけたんだぜ」ニッコリとお兄さんは笑った


私はペコリと頭を下げお礼を言った。


お兄さんに思い出風景認識アプリとこれまでの経緯を説明した


「つまり、七枚中六枚目までの写真はクリアして、ジイさんの作ったゲームをダウンロードすることができた、で・・七枚目のクリア報酬はおそらく、渡された箱を開けるパスワードが表示されるんじゃないかってことか」


「そうなんです」


「おもしろそうだな、手伝うぜ。で・・話を聞く限りではその辺の木をぶった切って、そこに持ってくるのが、一番確実なんじゃねえの?」


「それはさすがに、まずいですよ」

確かにそれが一番確実だけど・・そんなことできるわけない


「あ~お巡りさんだ。」

自転車を降りたお巡りさんが沙希が指差した方向からやってきた


お巡りさんはお兄さんの前までやってきて「あの~ちょっといいかな君」


「何?俺?」お兄さんはなんで?という顔をしながら、人差指で自分を指した


「君はこの子たちとどういう関係?」

どうやら、お巡りさんはお兄さんの事を不審に思ったみたい


「あ~いや、さっき知り合ったばかりで、ちょっと困ってたんで声をかけただけだよ」

心外だなという顔つきでお兄さんは反論した。


「困ってる?いやその前に君、その恰好が怪しいよ」


「スーツにサングラスのどこがおかしいんだよ。普通だろ?」

それでゴミ拾いしてるのもちょっと普通じゃない気がしたけど・・


なんだか、またややこしくなってきたので

さっきと同じ説明をお巡りさんにもう一回した


「なるほど、事情はわかった。悪かったな、不審者と思ってしまって」

少しだけ申し訳なさそうな顔をしてお巡りさんが言ったが、その後

「でも、君の木をぶった切るっていう提案は、ダメだな」

と注意した。

「ダメなのかよ?」


「当たり前でしょ、公園だよ」沙希もお兄さんに言う


「俺が考えた以上の名案があるの?お嬢ちゃん?」


「じゃあさ、お兄さんとお巡りさんが肩車してそこに立ってみるってのはどうかな?」

沙希がお兄さんに自慢げに言う


うん、沙希にしてはいい線いってる・・

高さはほとんどクリアできるから、認証率も上がりそう!


「名案だなそれ、頭いいなお嬢ちゃん!」

そういいながらお兄さんは沙希の頭をなでた。


「えへへ」褒められた沙希はなんだか嬉しそうだ


「じゃあ、私に乗れ」

お巡りさんがしゃがんだ。


でもお兄さんはため息をつきこう言った

「えっいいよ、おまわりが上に乗れよ」


「私の方が体が大きいだろ」

お巡りさんがムッとした顔で眉をひそめた


「いや、俺の方が絶対に力があるからさ」


「なんでそんなことわかるんだ?」


「もう、どっちでもいいですよ!じゃんけんで決めてください!」

言い争いになりそうなので思わず口をはさんでしまった。


結局ジャンケンでお兄さんが勝ち、上にお巡りさんが乗ることに決まった


「よし!2連勝!今日は調子がいい!」お兄さんがそう叫んだ


「2連勝って?」私は意味が分からなかったので聞いた。


「いや、なんでもない個人的なことだよ」


「よ~し、早く撮ろ~」沙希が2人に言った


「あまり動くなよ、お巡り!」


「君こそ、ちゃんと持っててくれよ」


「それじゃ、撮りますよ~」

私は携帯を構えて写真を撮った


パシャリとカメラの効果音が響き渡る


沙希が急いで携帯を覗きこみ

「お~94%もう少し・・あとはもう少し高さがあればいけそうじゃない?」

写真と画像を見比べながら言う


「よし!お嬢ちゃん、一番上に乗れよ」


「沙希、高いけど大丈夫?私が変わるよ」


「大丈夫・・だと思う。ちゃんと持ってね。お兄さん、お巡りさん!」


「任せろ」2人は口を揃えて言った。


沙希がてっぺんに上がると流石にグラグラと揺れたがすぐに安定した

たぶん二人とも体を鍛えているんだろうな。

クラスの男子だとこんなことはできないような気がする。


「それじゃいきま~す」

もう一度、携帯を構えシャッターを切った

パシャリ!!


「どう?」沙希が真っ先に聞いてくる

「わあ~認証率95%」

私はジャンプして喜んだ

「やったあ~」沙希も肩車の状態で体を揺らした


「わ!あぶね、揺らすなよ!」

一番下のお兄さんは少し焦ったみたいだ。


スマートフォンにメッセージが表示された、それを4人で覗き込む


四宮孝作より沙耶へ


このメッセージを見てるということは七枚目の写真をクリアしたということだな

木がないのは私が抜いたからだ。

ちょっといたずらをしてしまった、すまなかった。

クリア方法は何通りかあるが、たいへんだったろう?

困難をあきらめない気持ちをいつまでも忘れずにな・・・

最後の遊びに付き合ってくれてありがとう。


最後のクリア報酬は箱の解除パスワードだ。


それと、いままでダウンロードした私が作った6つのゲーム。

たまに遊んでくれると嬉しいよ。

この7枚目の写真よりも難易度は圧倒的に高いけどな。


私は、ゲームの中でいつでも遊びに来るのを待ってるぞ




「おじいちゃん・・・クリアしたよ・・」涙が頬を滑ったのがわかった


「よかったね、お姉ちゃん」沙希も目を赤くして泣いている


「でも、おじいちゃんの最後の問題を解いちゃった・・終わってみると意外と淋しいね」


「お姉ちゃん、いつでもゲームの中で待ってるって書いてあるよ」


「うん!そうだね!おじいちゃんの本当の問題はこれからだよね!ありがと沙希!お兄ちゃんもお巡りさんも」


「どういたしまいて、でも木を抜いたらまずいっしょ?なあ、お巡り?」


「もう、時効だ」


「あんた、なかなかいい奴だな」


「私は最初から市民の味方だ、それにしてもお前のおかげだ、最初はすまなかったな!不審者と間違えて!私一人では彼女たちを手伝ってやれなかった、本当にありがとう」

お巡りさんもなんだか目に涙が溜まっている。


「おまわり!俺そういうの、がらじゃないから、やめてくれよ、でも、俺もあんたが来てくれて助かったよ」


お兄さんとお巡りさんは固く握手をした。よかったあ~


「おめでとう、よかったなお嬢ちゃん達・・あっそうだ。いいこと思い出した!」

急にお兄ちゃんは何かを思い出したように言い走りだし、私達から離れていった


「あっ、ちょっと待って」

えっ!まだ、名前も聞いてないのに・・・そんなカッコよく?去って行くなんて


最後までお読み頂き、ありがとうございました。この短編は単体でも楽しめるように作っていますが「空色プリン」という連作小説の一部です。

お時間がございましたらこちらの方もお願いいたします

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