*作戦
「これからお前たちを解放するが……」
「……」
後の言葉を固唾を呑んで待つ。
「現状維持で頼む」
「……え?」
「こちらにも都合というものがあるのでね。お前たちには監視を続けてもらいたい」
爽やかな笑顔で告げられた。
「そっ、そんな事するハズが……っ」
「もちろんお前たちを監視しているがね。変な動きを見せたらどうなるかは解るはずだ」
言葉を切って発しニヤリと笑みを浮かべる。
「!?」
ひっひえぇぇぇ~!? 男たちは恐怖で歯を鳴らした。
「はぁ~……」
長生きすると人は意地悪くなるんだろうか……面白がっている彼に頭を抱える。
男たちを解放したあと、隣を歩くベリルを見やった。
いや、違うな。ベリルの性格が悪いんだ。きっとそうだ……思えば今までも色々と意地悪をされてきた。数知れない嫌がらせを思い出してふつふつと怒りが湧いてくる。
あの一斗缶は極めつけだった。一瞬、意識が遠のいたぜ……しかしどうやったってベリルには適わない。
死なないという以前にベリルは師匠であるからだ。
育ての親であるセシエルが死んだ2年後にベリルと出会い一度は別れたものの。ベリルと再会して彼の側で1年を過ごしたあと他の傭兵たちの技を学び、いまこうして独り立ち出来た。
セシエルとベリルは強い絆で結ばれた盟友だったのだ──
「ライカ」
「!?」
呼ばれてハッとする。
「今は物思いにふけっている場合ではない」
「わ、わかってるよ……」
言い当てられたようで少し戸惑い気味に発する。
「彼らに何か連絡があったようだ」
「!」
監視させられている男たちに目を移すと、彼らが無線に聞き入っていた。しばらくして男たちがおずおずと歩いてくる。
「内容は」
腕を組んで話を待つベリルに少し視線を泳がせて発する。
「ガキの父親と情報を交換だ」
「! 父さん?」
喜びで前に出ようとする少年を制止した。
「いいだろう。場所は」
「この先の廃工場に1時間後」
レストランで時間を潰している間、そわそわして落ち着かない。
「父さん」
ケビンは嬉しくて待ちきれなかった。
「手順は怠るな」
「大丈夫だって」
ベリルが念を押すように発すると少年は笑顔で応え何も入っていないコップのストローをしきりにすする。
ウエイトレスを呼んで新しいジュースとコーヒーを注文した。
「なあ……」
「なんだ」
「なんでこんな回りくどい方法取るんだ? ボスのトコ行って、脅しかければいいじゃないか」
怪訝な面持ちで問いかけるライカに彼は運ばれてきたコーヒーを傾けて口を開く。
「父親を助けるまではお前の仕事だ。その先は私の仕事なのだよ」
「え?」
「そろそろ時間だ」
ベリルはそう言って立ち上がる。
「あ……っ」
どういう意味なんだ?
3人は指定された廃工場を訪れた──中に入ると数人の人影が見える。
「! 父さん!」
「ケビン!」
顔を腫らした男が叫ぶと他の男が強く揺らして制止した。10mほど離れた場所で立ち止まる。
「持ってきたんだろうな!」
「それが何なのか解らないのでね。探せずにいるんだ」
ベリルが肩をすくめて発するとしばらく沈黙し、おもむろに……
「マイクロSDだ。ガキが何かに入れてるハズだ」
「! マイクロSDか。ケビン何か持ってるかね?」
「え……知らないよ」
白々しいやりとりにライカは眉をひそめた。





