*天の声
「!」
そういえばベリルがケビンのペンダントに興味を持っていたな……とライカはハタと気付く。
「ケビンさっきの──」
“ガッシャアアァァーーン!!”
「……」
「……」
「……」
「……」
上から落ちてきた植木鉢に全員が沈黙した。
「マジか……」
当てる気は無かったとしても、これは怖いぞベリル……重力によって砕かれた植木鉢を見下ろす。
こいつらに情報を渡すような事をするなってことか……恐怖から逃れるように気を取り直すと、彼が植木鉢を落とした理由を考察した。
これ以上こいつらから聞き出せることは無さそうだ。
「行こう」
「え、でもこいつらは?」
「聞いても答えないさ。どうせまた追いかけてくるし」
しかし、ロープ1本で縛っているからすぐに追いかけてくるよな……と考えていると──上から手錠が4つ降ってきた。
「……」
ここまでくると一緒にいてもいいんじゃないか? と手錠を見つめる。
とりあえず手錠をかけて2人の男を置き去りにした。
「ねぇ」
「なんだ」
少年はモジモジとしながら発する。
「おしっこ」
「はぁ?」
仕方なく小さなマーケットに入ってトイレを借りる事にした。そこに、着信を伝える着メロが鳴り響く。
「はい」
<マナーモードにしておけ>
ベリルの声だ。
「すまん……で、何だよ?」
<丁度良い、そこで今から言うものを買っておけ>
「そんなものをなんで……」
<いいから買え>
電話は切られた。
「こんなもんどうすんだ?」
出来るだけ噴射力の強そうなものは……と眉をひそめてスプレー殺虫剤を手にする。
買った殺虫剤をベストのポケットにぐいと押し込めて、トイレから戻ってきた少年を連れて店をあとにした。
「疲れたよ~」
「またかよ」
誰のためにやってると思ってんだ……眉間にしわを寄せる。
俺もガキの頃ってこうだったのかな? だとしたらオヤジには悪い事したな……と過去を思い起こす。
ライカが10歳のとき捨てられていた処を拾って育てたのがハンターであったクリア・セシエルだった。
彼は旅好きとその容姿が相まって『流浪の天使』と呼ばれていた。壮絶な最期を遂げたが、そのときの事をライカは未だ鮮明に覚えている。
血まみれになりながらもその鮮やかな動きを止めなかったセシエル……その口元には悪魔の笑みを湛えていた。
最後まで彼はライカの“父”だったのだ。
「……っ」
やばっ泣きそうだ……頭を振って気を取り直す。
「そうだケビン、ペンダント見せてくれ」
「いいよ」
首からペンダントを外して手渡す。
「うん……?」
ロケットだ。中には女性の写真が入っている。
「母さん。病気で死んじゃった」
「……そうか」
陰りを見せる少年に応えさらによく見つめる。
「!」
写真の裏に何かあるようだった。慎重に写真をめくる。
「! マイクロSD?」
写真を元に戻してペンダントをケビンに返し、入っていたマイクロSDを携帯に差し込んだ。
「うーん……解像度が高すぎて携帯じゃ見れないな」