*まあ頑張れ
「え? ブルースが運んでた物?」
3人は少年の父が務めている会社を尋ねた。大きなトラックが何台も並び積まれる荷物を待っている。
「うむ、それが何か知りたいのだが」
ガタイの良い男はベリルに怪訝な表情を浮かべた。
「ああ! 思い出した。奴が運んだのは小麦粉だったと思うぜ」
しかし彼がサイフからちらりと1ドル札を数枚見せると男は途端に饒舌になる。
「小麦粉?」
ライカが聞き返すと男はさらに続けた。
「個人向けの商品らしくてな。数は少なかったぜ。おうケビン! 親父さんは今日休みか?」
「……っ」
「ええ、ちょっと腰を痛めましてね。こないだの荷物がなんだったのか忘れたから聞きに行ってくれと友人の我々が頼まれました。しばらく仕事は休むそうです」
応えようとした少年の肩に手を置きベリルが発した。
「ああ、なんだ。そういう事か……初めからそう言ってくれよ」
控えめに差し出された手にベリルは苦笑いで札を数枚乗せる。
「小麦粉って言ってたな」
「うむ」
会社を離れレンガ敷きの補導を歩く。
「処で」
「何……?」
聞き返したライカに親指を後ろに示した。
「どうやら彼らの狙いはケビンらしい」
「!」
視線だけ入るように軽く振り返る。角の所で、こちらの動きを見つめている男が2人いた。
「本人たちに聞くのが一番だろう」
「だな」
言ったライカに“シュタ!”っと手を軽く挙げる。
「まあ頑張れ」
「……へ?」
しばらく呆然として、遠ざかっていく青年を呼び止める。
「ちょっ……!? 待てよベリル!」
「サポートくらいはしてやる。しばらく1人でやってみろ」
「おい……マジかよ」
1人でやってみろって……どうやって? 安心しきっていたライカはどうしていいか解らずにオロオロした。
「!」
ふと少年を見ると不安そうな瞳がライカを見つめていた。
だめだ、ケビンを不安にさせては……ライカは胸を張った。
「奴らを捕まえればいいんだな」
やってやるさ……ぼそりとつぶやきそのまま歩き出した。
「!」
男たちは後を追う。
スッと角を曲がった──見失うまうと男たちは駆け出す。
「うっ!?」
曲がった瞬間ライカの姿が目に飛び込み体を強ばらせた。
「このっ」
1人の男を殴ったあと、すぐにもう1人の男の腕を掴んで投げ飛ばす。
「くそっ……」
殴られて倒れ込んだ男は胸元から銃を取り出しライカに銃口を向けた。
「!?」
撃たれる!?
そう思った刹那──
「ぐっ!?」
男の銃ははじかれて虚しく地面に転がった。驚く男と同じくライカも少し驚いたがチャンスを逃してはならないとすぐに切り替えて男のあごにパンチを食らわせる。
「……?」
今のはベリル? 狙撃してくれたのか……と荒い息を整え遠くを見つめた。
「さあ、大人しく吐いてもらおうか」
男たちをベルトで縛り上げ問いかける。しかし仏頂面をライカに向けるだけだ。
「父さんを返せよ!」
「やめろケビン」
「ククク……」
「! 何がおかしい」
喉の奥から笑いをこぼした男に睨みを利かせる。
「諦めな。お前の親父はもう死んでる」
「……ってめぇ」
ライカはキレて殴りかかろうとした。
しかし──
“ゴカンッ!”
「!?」
銀色の輝きを放つアルミの一斗缶がライカの頭を直撃した。
「~~~……」
脳天直撃の衝撃に声にならずに悶絶。
数秒後……
「いっってえぇぇぇー!?」
ようやく声が出て頭を押さえた。
「い、いくら中身は入ってないとはいえ……かっ、角……カドは痛すぎる……っ」
うずくまって涙を流し、一斗缶をギロリと睨み付けて建物を見上げる。
「ベリルー! どこだごるぁっ!」
当然、返事が返ってくるハズもなく……ふるふると拳をふるわせて気を取り直した。
「くそっ、覚えてやがれ」
そうだ怒ってる場合じゃない。冷静に、冷静に……
「じゃあ何だ、親父から何かの情報が聞き出せなかったんだな。で息子が何か持ってると思ったのか?」
その言葉に男はピクリと反応した。
ドンピシャ! ライカは心の中でガッツポーズして続ける。
「子供が持てる程度のモノってことだよな」
男はますます反応を大きくした。