*そして
他の部屋の制圧も終えひとまずの解決を見る。
「こいつらどうするんだ?」
「警察に引き渡す」
「さすがにこれだけの証拠を出されては動かない訳にはいかんだろう」
怪訝な表情を浮かべたライカに笑みを浮かべて発した。
「引き上げる」
「おぅ!」
「またな~」
口々に別れの挨拶を交わし仲間たちはそれぞれの車に乗り込んで去っていく。
「マーフィ」
それを見送ったあと、彼を呼び寄せやや見上げた。
「罪を償う気はあるか」
その問いに無言で首を縦に振ると柔らかに微笑んでSDカードを手渡す。
「行くぞ」
「おう」
すげー面倒だったけど。しんどかったけど楽しかった……ライカは少年を見下ろして今までの事を振り返った。
「ケビン。親父さんを大事にするんだぞ」
「うん」
車に乗り込もうとしたライカを少年は呼び止める。
「ライカ!」
「!」
振り返ると少年が勢いよく抱きついてきた。
「ありがとう」
少し涙を溜めた瞳がライカを見上げ、ぐっとこらえて視線を移す。
「ベリルも」
彼は軽く手を挙げて応えた。
「!」
遠くからサイレンの音が微かに聞こえて車に乗り込み、ゆっくりと発進する。
ライカは遠ざかる2人の影を見て安心したようにシートに座り直す。
「ありがとな」
「構わんよ」
なんだかんだ言ってもベリルは頼りになる。
「金は請求するぞ」
「え? ああ、うん」
なんだか気が抜けた……ライカは外を見つめて適当に答えた。
育ての親だったセシエルの事を思い起こす。
『ベリルとセシエルの闘い方は似ている』と言った人がいた。
確かにそうかもしれない……鮮やかに流れるような動きは見る人を魅了する。だからベリルを見ているとセシエルと重なる処があるんだ。
「オヤジ……」
ライカはぼそりとつぶやいた。
それから数日後──
「なんだこりゃあぁー!?」
ライカの元に請求書が届いてそんな気分も吹っ飛んだ。請求書を握りしめ体を震わせる。
「な、な……なんで俺がベリルが呼んだ奴らの分まで支払う事になってんだよ!?」
1人1万ドルだとう!? 大して危険な仕事でも無かっただろうが!
「最後の最後まで嫌がらせかテメェー!」
ライカの叫び声は虚しく空に散っていった。
END
今作中のレートは1アメリカドル=95円。
*最後まで暑き愛くださり、ありがとうございますです。
皆様が少しでも楽しんでいただければ幸いです。