表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/19

第1章 白い雪の儚い願い 五

「はぁ……まったく、あれじゃ私が悪いみたいじゃない……」

散々な目にあった理香は、ぶすっとした顔で庭に面した廊下を歩いていた。その足取りはスタスタと言うよりも、ズンズンと言ったほうがいいほど強ものだった。

あれから三十分ほど経っていた。理香はずっと文句を言い続けていた。

「絶対私は悪くないんだから……ん?」

ふと庭を見た理香は、忌まわしい天敵を見つけた。

忌まわしき天敵、それはもちろん―――美羽である。

訝しげに眉を寄せながら、窓からこの雪降る寒空の下、庭園を眺めている白髪の少女を睨んだ。

「なにやってんの……あいつ?」

窓に張り付き、ぴくりともしない美羽を目を細めて観察した。はっきり言って、今の理香は傍から見れば妖しいことこの上無かった。

「お姉ちゃん、何してるの?」

と、遠慮がちに声がかけられた。

「っ!? ……なんだ、理紗か」

「なんだ、はないでしょ。なんだは」

呆れながら声の主―――理紗が半眼で睨んだ。理紗は箒を両手で持っている。おそらく掃除に行く途中なのだろう。

「まさか、あの白狐の部屋の掃除?」

「そうだよ、これから住むんだし部屋は綺麗にしとかないと、と思って。お姉ちゃんは何してたの?」

「ベ、別に何でもないわよっ!!」

理香はそう叫び――態度は脂汗をかきながら――廊下を、ズンズン足音を立てて歩いていった。

「まったく、素直じゃないんだから」

理沙はまたも呆れながら、去っていった理香を見遣る。そして、理香がいた窓に近づき、外にいる美羽を見詰めた。

「あれは素直とかの問題かなぁ」

キィという木の軋む音と共に声がした。

「遥君……いたんですか」

「まあ、自分の部屋だからいてもおかしくないと思うけどね」

そういって声の主―――遥は今し方出てきた扉を示した。遥はどこか気怠げに肩を落としたまま、理紗の隣に並び、窓の外を見た。

「遥さんはわかってですねぇ」

「ん? どうして?」

「もう駄目ですね、お姉ちゃんは本当は優しいんですよ? ただ、それを面に出すのが苦手なだけ」

姉である理香を本当にわかっているであろう理紗が言うのだ、間違いはないはずである。

「そうかなぁ」

遥は信じていないようであった。

ぶうっと頬を膨らませ拗ねる理紗。きっと遥を睨み、窓の外を指差した。

「あ~信じてない!! ほら見てください!」

理紗が指差した先―――そこには美羽に近づいている理香の姿があった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ