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花壇手入れと訪問客

「ノエル様ー、!」

誰かに呼ばれた。この声はディント様…、?

んん、。正門からなにやら猛スピードでこちらに迫ってくる。

やっぱりディント様。と抱かれる惟燈様?!私を少し通り越したところで

そのスピードに急ブレーキがかかった。

「い、惟燈様、!ディント様、!」

「ノエル様、申し訳ありません。昼餉に遅れてまして。」

昼餉、?そう思い懐中時計をふと見る。遅れるも何も、まだ昼餉まで五分もある。

「いえ、遅れてはおりません。それと、惟燈様のことありがとうございました。」

そう言って惟燈様を抱きうける。

「それでは、。」

ディント様は軽く会釈して去って行った。

「…。惟燈様起きてください。」

「ん。」

私はいつの間にか気絶していたのだ。あのスピードは無理だ。

「起きましたか。昼餉の時間です。行きましょう。」

「うん。」

そうして昼餉には無事間に合い食べ終わった。美味しかった。。


昼餉を食べ星の刻まで自由に過ごす。星の刻、日本で言う一時。

ちなみに昼餉を食べる時間は雪の刻。十二時だね。

昔々、この国の勇者とされた十二人の苗字の頭文字が時間とされている。

一時が勇者のリーダであり一番強い人。逆に十二時は勇者の中でも特に

特別な時にしか活躍できなかった人。ちなみに一時の星の刻は

星宮家の頭文字。十二時は雪城家の頭文字。


「虎さーん、!」

「おぉ、!嬢ちゃん。ヤル気満々だな。」

この人が虎さん。ザ・日本人みたいな人だから懐かしさを感じられて好き。

白髪の下の額にねじられた紅白のはちまきを着け、紺色のはっぴを着ていて

サイドには‘庭師’と書いてある。そこまでは良い。問題は後ろ、背面だ。

‘庭師虎さん参上!御依頼は…’とデカデカと自身の住所が書かれている。

恥ずかしくないのか、?まぁ、人の服にいちゃもんつけるつもりはないんだけど。

私は薄いピンクの服にオーバーオールを着て麦藁帽子をかぶっている。

「今日はどこの花壇を手入れするの、?」

この屋敷の〈花壇〉と呼べる場所はざっと数えても300はある。

無駄に広いからな。わけわからんブランコとかもあるし。

「今日は嬢ちゃんの部屋の出窓の真下の花壇さ。」

確かに季節が終わって枯れてきた花もたくさんあったなぁ。

今日の朝見た花壇の景色を思い出しながら歩き出す。

「嬢ちゃん、。今回はどんな花を植えてぇか、?」

前回は向日葵と真珠草。前々回はチューリップとポタン。

向日葵は聞いたことがあるし見たこともある人が多いよね。多分。

真珠草はないよね。真珠草は鈴蘭に近い花。垂れ下がるように白い花が咲く。

でも大きく違うところは夜になるとその花がほんのり優しく光る。

その光っている花がまるで真珠のようだから真珠草という。

チューリップもみんなが想像している花だね。これも同じく多分。

ポタンは無いんじゃないかな。蒲公英でも牡丹でもないよ。

花自体は菊に少し似ているかな。花火のように大きく開いているから

別名〈花火草〉。真紅のはなを咲かせるのがとてもきれいな花。

花が開くときにポタンっと音が鳴るからポタンという。

「ううーん。コスモスとジザリアかな。」

「おい、嬢ちゃん。ジザリアを植えたいのか、?!」

ジザリア。別名〈死神草〉。別に毒がある訳でも死神の花でもない。

ただ、咲く花が少し死神の鎌に似ているからそう呼ばれる。

でも、とてもいい匂いの紫色の花。

覚えてないけど、誰かの匂いに似てる。あったかい気持ちになる匂い。

「植えたいの、!」

誰かは分らないけど。懐かしい。大好きな匂い。だから植えたい。

「まぁ、そこまで言うなら反対はしないぜ。」

鼻をフンと鳴らしながら呆れた顔で虎さんは私を見た。

「ありがとう、!虎さん、!」

そうして一時間かけてコスモスとジザリアを植えた。

「綺麗になったね~。」

枯れてしまい茶色になった花に代わり、新芽を輝かせる緑色の葉が

彩を与えてくれた。咲くのが待ち遠しい程に。

「あぁ、流石俺の花壇で嬢ちゃんが選んだだけの花があるな。」

虎さんは私の頭を優しく撫でてくれた。大きく、硬くなった手で。

「惟燈様、雪城家の奥方様が御見えです。」

ノエルが此処まで来てそういった、雪城家。この前紹介した十二人の勇者の一つ

雪の刻の家の奥方様。苦手なんだよな。

「わかりました、今いく。」

虎さんに一礼してその場を離れる。服も着替えなきゃな。オーバーオールなんか

着て会うなんかしたら‘恥晒し’など‘躾がなってない’など、ノエルが

無茶苦茶に言われ続けるからな。

ササッと着替えられる黄金色のゆったりとしたワンピースに着替え簡単に髪を

ポニーテールに結びなおして客間に向かう。何だか変な冷や汗が体中をめぐる

のは毎回そう。吸う空気も真夏より重く苦しく感じた。

「失礼します、。御待たしてしてごめんなさい。早紀様。」

この人が雪城早紀。雪城家の現当主の妻。四十二歳にして子供が居ない。

だからなのか今両親の居ない私たち姉妹を引き取りたいといつも言ってくる。

「いいのよ。それでお話なんだけど、やっぱり惟燈様と桔乃様を我が雪城家で

 引き取りたいのよ。赤の他人の使用人たちと暮らすより私達‘家族’と

 暮らした方が二人にとってもいいと思うのよ。」

着物に似た和服のよな服に純黒の髪を団子に結い上げている。毎回奥深い赤色

の瞳が怖い。見つめれば見つめるほど瞳の奥に吸い込まれそうになる。

「お言葉ですが早紀様。ノエルは‘家族’です。ノエルは母の姉の娘、私達の

 従姉妹です。」

正直またこの話かというぐらい聞き飽きた話。雪城家と私達が‘家族’と

言われるが私にはさっぱりわからない。

「そうなのだけどね。子供と使用人だけだと不安なのよ。」

今回は長期戦になりそうだ。

「わかりました。考えさせてください。ノエル以外の使用人にも

 相談させてください。お願いします。」

「仕方ないわね。又来るわ。」

早紀様はこれに弱い。良かったよかった。移動含め龍半か。龍半とは三十分

のことを言う。三時が龍の刻でそれに○十分の意味の半を着ける。

十分だったら星半。簡単でしょ。

「惟燈様、。」

早紀様が出て行ったあとでノエルが悲しげな顔をして客間に入ってきた。

「ノエル、!どうしたの?早紀様に何か言われたの?」

「いえ、大丈夫ですよ。それで、またあのお話ですか?」

「うん。上手く今日は追い返したけどまた来ると思うよ。」

みんな早紀様が苦手なんだよね。私達には優しいのに。

「惟燈様、少し早いですがおやつにしましょう。服も着替えてください。」

いつもは龍の刻におやつなんだけど今は菟花半の刻。これは二時四十分。

二時が菟の刻。四時が花の刻。花の刻に半をつけるからこうなる。

「おやつ、!」

おやつ。それは私が一番好きな時間。食いしん坊とか甘いもの好きとか

じゃなくて‘一人’じゃないから。三食は一人だけどいつもおやつは

誰かが居る。毎日違う。でも沢山話してくれてうれしいんだ。

「今日はアリスがご一緒したいそうです。」

「やった、!」

アリス、。いつものおやつの時間がより一層楽しくなりそうだ。


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