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起立―――礼。
「おはようございます。」
翌朝、学校へ行ってみると、小崎くんは……いなかった。
「今日は小崎が欠席だ。熱が出たらしいな。水野~。お前、風邪うつしたんじゃないかぁ?ははは・・・(笑)」
先生の冗談(?)に、みんなクスクス笑っている。
はずかしい…。
「今日はお前がプリント届けてやれよ。」
「・・・はい。」
でも、本当に冗談じゃないかも。
熱かぁ。
やっぱり、私が風邪うつしちゃったのかなぁ?
どうしよう?
なにかお見舞い持って行くべきだよね。
あ、そうだ!
いい考えがひらめいて、私は一人にっこりして教科書を開いた。
放課後、私は大橋駅からほんの2分くらいの、小崎くんの家へやってきた。
東口を出てまっすぐ行ったら左というすごくアバウトな先生の教え方が不安だったけど、ちゃんとついて良かった。
お土産は買ったし。よし!
ドアの前で気合を入れてから、インターホンを押す。
ピーンポーン
「はい。」
インターホンからは女の人の声が聞こえてきた。
お母さんかな?
「あの・・・わたし、小崎くんのクラスの、水野といいますが・・・。」
「ああ。ちょっと待ってね。」
ドアを開けて出てきたのは、お母さんかな?40代くらいの気さくな感じの女の人だった。
「あの、先生から授業のプリントを預かってきたんですが・・・」
「あらまあ、ありがとう。亮平なら2階よ。階段を上がって、すぐ右の部屋だから。どうぞ、上がって。」
「はい・・・おじゃまします。」
私はぺこりと一礼すると、靴をそろえておじゃました。
階段を上がると、すぐ右側のドアの前で立ち止まる。
ここ、だよね?
深呼吸を一つしてから、ドアを小さくたたいてみた。