5/39
5
「そういえば…水野さんってチョコ好きなの?」
「え?」
「チョコレート。」
「うん。好きだけど…?」
「じゃあこれ、あげる。」
「なに?」
「チョコケーキ。さっき大橋駅で買ったから。」
「え?なんで?もらっていいの?」
『あ~…本当は僕もチョコ好きで、自分で食べたくて買ったんだけど、お見舞いにあげる。』
…とか言ったらなんか微妙だよなぁ。
「うん。お見舞いに買ったやつだし。」
そう言って、ケーキの箱を彼女に渡すと、すごくうれしそうな声が返ってきた。
「わぁ!ありがとう♪♪私、ここのチョコケーキ大好きなの。やったぁ♪」
すごい全開笑顔!!
初めて見た…。
なんか…笑うとかわいいんだな。
あ~やばい…顔がにやける…。
僕は彼女から目をそらしてわざとらしい咳払いをし、なんとか顔が緩まないように表情筋を引き締めた。
「あ~げほんごほん。じ、じゃあ。また、学校で。お大事にね。」
赤くなった顔は薄暗い部屋のおかげでバレずにすんでると思いたい!
「うん。今日は本当にありがとう。また学校でね。」
そして、僕は逃げるように彼女の家を後にした。