39 最終話
やっと思いが通じ合った僕たちは、そこで一緒にお昼を食べることにした。
僕が持っているビニール袋には、さっき買ったパンが3つと、温かいカフェオレが入っている。
パンは、卵サンドと、ウインナパンとチョコチップパン。
袋からパンを取り出して水野さんに見せると、彼女は遠慮して首を振った。
「私が食べたら、小崎くんの分がなくなっちゃうよ…」
「いいよ。どうせこんなに食べれないし、水野さんと一緒に食べたいから。どれがいい?」
本当に今は胸がいっぱいで、いつもの量は食べきれそうになかった。
「………じゃあ、これ…」
「はい」
卵サンドを渡すと、彼女はやわらかく笑った。
「ありがとう」
僕はウインナパンを食べ始める。
屋上は風があって少し寒かったが、彼女とくっついて並んで座っていると、胸の奥がほかほかして寒さはあまり気にならなかった。
むしろ、僕の左腕に水野さんの肩がちょっと触れていて、僕はそればかり気になってずっとドキドキしていた。
僕がウインナパンを食べ終わってチョコパンを1/3ほど食べた時、彼女はやっと卵サンドを食べ終えた。
僕はチョコパンを半分千切って彼女に渡す。
「…ありがとう」
水野さんは嬉しそうに笑った。
僕の大好きな笑顔だ。
とても穏やかな時間。
僕の隣に水野さんがいて、二人で仲良くお昼を食べているなんて、まるで夢のようだ。
僕たちは一つのカフェオレを一緒に飲んだ。
パンを食べ終わっても、僕たちは教室に戻らずにまだ一緒に屋上にいた。
二人で他愛ない話をしていると、突然、彼女が僕に訊いてきた。
「そういえば、今日はなんで遅刻したの?珍しいよね?」
僕はうっと言葉に詰まった。
それを聞くのか…。
なんだかちょっと意地悪をしたい気分になって僕は答えた。
「昨日、なかなか眠れなかったから。水野さんの好きな奴が誰なのか気になって……」
「!ごめんね。私が宛名書き忘れたりしたから……」
彼女は本当に申し訳なさそうな顔をして謝った。
「……ぷっ……くくっ………」
なんだか可笑しくて僕はつい笑ってしまった。
「あっ!もう。本気で謝ったのに…」
今度は子どもみたいに膨れている。
そんな顔も可愛くて、僕は彼女の頬にキスをした。
「!」
水野さんはパッと頬をおさえて、りんごみたいに真っ赤になっている。
かわいいな…。
そう思って見ていたら、彼女は恥ずかしいのか後ろを向いてしまった。
「……なんで後ろ向いてるの?」
「……………………。」
「こっち向いて?」
「…………やだ。」
「じゃあ、一人でチョコケーキ食べちゃおうかな。」
「………それ、私が作ったやつだもん。」
「うん。でも、もう僕がもらっちゃったよ。」
「…………………。」
「だから、一緒に食べよう?」
そう言うと、彼女はやっとこっちを振り向いた。
なんとも、複雑そうな顔だ。
僕は心の中でこっそり笑いながら、紙袋からチョコケーキを二つ取り出し一つを彼女の手にのせた。
「すごくおいしそうだね。食べてもいい?」
「うん。いいよ。」
仲良く一個ずつチョコケーキを食べる。
「……うん、おいしい!へ~。真ん中にチョコが入ってるんだ。」
「本当に、おいしい?」
「うん。水野さんって、お菓子作るのうまいんだね。」
「えへへ。」
彼女は照れくさそうに笑った。
「また、作ってきてくれる?」
「うん!次は何がいい?」
「そうだなぁ・・・・・」
そうして、僕たちの会話はまだまだ続いていく。
今日の天気は晴れ。
水色の空に白い雲。
冷たい北風も、僕たちの間には入り込めない。
僕は彼女と二人だけの甘~い時間を過ごした。
ミルクチョコレートよりも、もっと甘い
二人だけの、甘い甘いchocolate time―――
END
あとがき
こんな長文に最後までおつきあいくださり、本当にありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。
皆様の心にほんの少しでも何かが届いたら、とても嬉しいです。
この小崎くんと水野さんのお話は、私が初めて書いたとても思い入れのあるお話です。
皆様からの感想やおしかりの言葉を心からお待ちしています。
彼らのその後も機会があればいつかまた書きたいと思っていますので、その時はまたどうかよろしくお願い致します。
ここまで読んで下さって、本当にありがとうございました。
最後に、この小説を書くきっかけを作ってくれた妹と、アドバイスをしてくれた人たちに、心から感謝します。
ありがとう。
H22.9.29 さやぽこ
H23.5.10 修正
R24.8.21 フォレストページより転記




