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小崎くんが帰ってしまった後、私はまだしばらくぼーっとそこに立ちつくしていた。
まださっき抱きしめられた感触が残ってる…。
思い出して、胸が切なく疼いた。
さっきの、すごくドキドキした………。
恥ずかしくて走って逃げたのに、追いかけてくるなんて………。
そして、また手を掴まれた。
それから優しく抱きしめられて…。
保健室とさっきと、あんなことが一日に二回もおこるなんて……。
心臓が壊れちゃうんじゃないかと思うほど、今日はドキドキしてばっかりだ。
立ったまま回想にふけっていると、道行く人がみんな私を見ていくのに気づいた。
恥ずかしくて、慌てて近くの公園に移動し石のベンチに腰を下ろす。
でも結局、言えなかったぁ…。
小崎くんから『期待しそうになる』と言われた時、好きです って言おうと思ったのに………。
だけど、あんな急に、いきなり言えという方が無理な話か。
というより、彼に面と向かって告白なんて、そんなこと私にはとても出来そうにない。
はぁ。
小崎くん、まだ私が小崎くんのこと好きでも何ともないと思ってるよね…。
断ったばっかりだもんね…。
うぅ…。
なかなかうまくいかないなぁ。
どうしたら気持ちを伝えられるんだろう…。
深くため息をついて地面を見つめていると、ふといい考えが浮かんだ。
そうだ!
手紙で気持ちを伝えればいいんだ…!
渡すだけなら、私にもなんとかできるかもしれない。
小崎くんに私の気持ちを伝えたい………!
私は駅の文具屋で淡いピンクのレターセットを買った。
家に帰って自分の部屋に入ると、さっそく机の上にレターセットを出して並べる。
目を閉じて彼のことを思い浮かべると、朝見た笑顔が浮かんできた。
ドキドキして、胸が苦しくなる。
淡いピンク色の便箋が、今の私の気持ちにとてもよく合っていた。
私は勇気を振り絞って、お気に入りの水玉のボールペンを握りしめた。
彼を思って、一文字一文字、気持ちを込めて書く。
あなたが好きです。
水野 明
たったそれだけのシンプルな文なのに、書くのにとても時間がかかった。
それを丁寧に半分に折って、ピンク色の封筒にそっとしまう。
どうか、小崎くんに伝わりますように………。
願いを込めて手紙をそっと胸に押し当てた。
明日は土曜日。
次に彼に会えるのは3日後だ。
月曜日は、朝一番に小崎くんの下駄箱に入れに行こう…。




