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ジャージのままで寝ていた僕は、更衣室で制服に着替えて教室に戻った。
まだ授業開始までは少し時間があったので、窓際の加藤の席へ行く。
「お、小崎。もういいのか?」
「おぉ。悪かったな。わざわざ、パン持ってきてくれたんだろ?」
「は?俺パンとか持って行ってないけど。昼休みに様子見には行ったけど。おまえ寝てるし、すぐ帰ったわ。」
「あれ?じゃあ、誰が………」
その時ふと、さっきのパンを思い出した。
チョコパン…………!
僕の頭に水野さんの顔が浮かぶ。
そんなまさか。
彼女が僕に会いにわざわざ保健室まで来るわけがない。
だいたい昨日ふられてるんだし。
…だけど、どうしても彼女以外に思いつかない。
それに水野さんなら、僕が熱をだしたと聞いたら、自分のせいだと責任を感じてわざわざ保健室まで来そうな気がした。
でも、もし本当に彼女だったら、さっきのは本当に夢か…?
夢にしてはすごくリアルだった。
あれが現実だったら………。
……確かめるのも恐ろしい。
だけど、気になって仕方ない。
一体どこまでが現実でどこからが夢なんだ…?
頭を抱えて考え込んでいると、5時間目が始まるチャイムがなった。
僕は保健室で見た夢の内容を思い出しながら、席に着く。
授業中もずっと、夢のことを考えていた。
……それにしても、あれが現実だったら、僕はかなり大胆なことをしてる。
水野さんを…抱きしめたのか…?
熱があったとはいえ、普段の僕ではありえない大胆さだ。
あ~!なんで覚えてないんだ。
もったいない…!
授業の間、もんもんと考えた末、ようやく、僕は水野さんに訊いてみるしかないと気づいた。
でも、『僕なにかした?』とはっきり本人に訊くのもどうかと思ったので、それとなく探りをいれてみることにした。




