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―――そして放課後。
僕は、先生から預かった水野さんの家への地図とプリントを持ち、学校から一駅分の距離を歩いて、大橋駅西口までやってきた。
せっかく駅まで来たんだし、先にチョコケーキ買ってから行こうかな。
「ありがとうございました~。」
僕はチョコケーキを二つ買って、白い小さな箱を片手に足どりも軽く、駅から5分という彼女の家を目指した。
「……やっとついた。ここ、だよな。」
先生、駅から近いって言ってたのに、15分くらい歩いたぞ。
全然遠いじゃん。
もう、さっさと渡して早く帰ろう。
チョコケーキが待ってるし!
咳を一つして、ドアの横のチャイムを押す。
ピンポーン
少しして、20代くらいの女の人がドアから顔を覗かせた。
「はい。」
「あの、僕、水野さんと同じクラスの小崎っていいます。先生からプリントを渡すように頼まれて…」
「ああ、わざわざどうもありがとねぇ。明は部屋にいるから、上がって~。」
「え?いや、僕はここで…」
まさか家に上がるなんて予想もしていなかったので、僕は断って帰ろうとした。
…が、結局お姉さんの押しの強さにまけて、上がっていくことになった。
お姉さんの後について廊下を歩き、突き当たりの部屋につく。
トントン
「明~。学校のお友達がきてくれたけど。小崎くんって子。」
「え!?な…なんで?」
部屋の中から驚いているような(あたりまえだ)小さな声が聞こえてくる。
「プリント持って来てくれたんだって。」
「ああ。…………どうぞ。」
やや間があって、中から小さな声が聞こえてきた。
僕はそっとドアを開いて部屋の中に足を踏み入れた。