表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
chocolate time  作者: さや


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/39

26

「失礼します。」


小さな声で呼びかけて、保健室のドアを開けて中をのぞいた。

先生は今席をはずしているみたい。

ドアを閉めて中に入る。


外の喧騒が遠くに聞こえる。

まるで別世界の様に、保健室は誰もいなくてしーんとしていた。


部屋の中は、適度に空調が効いていて心地良く、薬品の匂いがする。

奧にはベッドが3つ並んでいて、一番奥のベッドに白いカーテンがひいてあった。


小崎くんかな?

私は少し緊張しながら、できるだけ静かに一番奥のベッドに近づいた。


「小崎くん…?大丈夫?」


小さく声をかけながら、そっとカーテンをめくってみる。


小崎くんは・・・すーすーと寝息をたてて眠っていた。


ほっと緊張が解けるのがわかる。

彼に見られると何故だかドキドキするから、眠ってて良かった…。


それでも、やっぱりちょっと胸が騒ぐ。

一昨日、彼の寝顔を見たときにはなかった気持ち。

あの時は、興味で寝顔をのぞいただけだったけど、今は…胸の奥がきゅうっとなって、落ち着かない。

私はじっと彼を見つめた。


彼はきちんと布団をかぶり、右手を胸の上に置いて、まっすぐな姿勢で眠っていた。

胸が規則正しく上下している。


私は小崎くんがぐっすり眠っているのをいいことに、彼をじっと観察してみた。


やっぱり、かわいい寝顔。

自然と頬がゆるむ。


少し日に焼けたきれいな肌。

ちょっと茶色がかった髪の毛は柔らかそうで、ところどころはねている。

さっき、私に笑いかけてくれた目は、今は閉じられている。

よく見ると、けっこうまつげ長いんだ…。

一つずつのパーツをゆっくりと観察しながら、やがて唇にたどり着いた。

やわらかそうな唇。

ほんの少し開いて、白い歯が見えている。

唇を見てるとなんだかドキドキがひどくなって、そこから視線をそらした。

私ったら、どこ見てるの…。


小崎くん寝てるし、このままそっとしといた方がいいよね。

パン置いて教室に戻ろうかな。

そう思って、枕元にパンの入った袋をそっと置く。


まだ、熱高いのかなぁ?


私は無意識に左手をのばし、彼のおでこに触れた。


…………。


まだけっこう熱いみたい。

彼の熱が手のひらから伝わってくる。


手をどけようとしたら、不意に、手首をつかまれた。

ビクッとして彼を見ると、小崎くんがじっとこっちを見ていた。



ドキドキドキと心臓が早鐘を打ち始める。


私は、やっとこの状況の不自然さに気づいた。

昨日ふった相手のおでこをさわってるなんて………。

ちょっと、おかしいよね?


「あ…………、あの、起こしちゃった?あの…ごめんね。」


なんとかごまかそうとして、無理に笑顔をつくって言った。


でも、彼はまだ私の左手をつかんだままだ。


「えっと、具合は…どう?まだ、熱があるみたいだけど…。」


「……冷たくて気持ちいい。」


「え?」


「しばらく、このままでいて…」


「あの、ちょっと待って……」


私は完全にパニックになって、手を引っ込めようとしたが、小崎くんは手を離してくれない。

それどころか、私の手を自分の方にぐっと引っ張った。


「わっ…」


はずみで彼の上に倒れ込んでしまった。

目の前に彼の顔がある。


ち、近い!!!


私はかぁ~っと耳まで赤くなって、あわてて起きあがろうとした。

でも反対に、小崎くんにぎゅっと抱きしめられる。

彼の両手が背中にまわっていて起き上がれない。

心臓が、口から飛び出しそうなほどドキドキしていた。


「あ………あの、…………離して…」


恥ずかしくて、小さく弱々しい声になる。


「もう少しだけ、このまま…」


彼の声が耳のそばで聞こえて、ぞくっとした。

それと同時に胸の奥が甘く疼く。


「…………………。」


体から自然と力が抜けていく。

私は、彼の胸にそっと頭をあずけた。

小崎くんの体は熱のせいかとても熱かった。

トクントクンと少し速い心臓の音が聞こえる。

彼の息づかいと熱い体温を直に感じて、腕の中でやさしく抱きしめられて、頭がクラクラした。



………どのくらいそうしていただろうか。たぶん時間にしたら一分くらいの短い間だと思う。


ふと、私の背中にまわっていた腕が緩んだ。


私はゆっくりと起き上がる。

離れるとき、なんだか寂しい気持ちになった。

もう少しこのままでいたい…

そんなことを思ってしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ