15
彼女は人気のない音楽室の階段を上がっていく。
僕もそのあとを追いかけた。
階段の踊り場で、思い切って僕は水野さんを呼び止めた。
「待って、水野さん!」
彼女は僕を振り返ってかすかに目を丸くした。
問うような視線がこっちに向けられる。
「…小崎くん」
なんとなく、昨日の続きのような空気が僕たちを包む。
僕は思いきって口を開いた。
「えっと、昨日はわざわざ来てくれて、どうもありがとう」
「ううん。私も一昨日きてもらったし」
そう言って、水野さんがかすかに微笑んだ。
彼女は少し下を向いているが、数段下にいる僕からは彼女の頬が少し赤く染まっているのが見えた。
これは…、少しは期待してもいいのかな?
僕は次の言葉を探した。
「あ~。音楽室にいくの?何か用事?」
「うん。消しゴムが見つからなくて、もしかしたら、三時間目の音楽の時に落としたんじゃないかと思って。」
「じゃあ、僕も探すの手伝うよ。」
「え?でも、悪いし。
一人で大丈夫だよ?」
「今何にも用事ないし、一人より二人の方が早く見つかると思うよ。」
「いいの?じゃあ…お願いします。」
彼女は遠慮がちに言いながら、照れたように笑った。
僕はさっそく彼女と一緒に音楽室に入ると、床にしゃがんで消しゴムを探し始めた。
彼女の机の周りを中心に探すが、なかなか見つからない。
広い音楽室の床を消しゴムを探してしゃがんで歩く…。
これはなかなかにつらい。
探し始めてから5分。
「……あっ!あった!」
消しゴムは彼女の席から随分遠くに転がっていったらしい。
僕は分厚い黒のカーテンの下に隠れていた消しゴムを見つけて、彼女に手渡した。
「これ?」
「そう!良かったぁ、見つかって。ありがと~!おかげで助かりました」
彼女はにっこり笑ってぺこりと頭を下げた。
その様子が小動物のようでかわいらしくて、自然と笑みがこぼれる。
「いや。どういたしまして」




