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「?なーに?」
「…………いや。……あーげほんごほん…」
小崎くんはわざとらしい咳払いをした。
「???あ、もしかして口にチョコがついてる?」
私はパッと口元を手で隠す。
「いや!違う、そうじゃなくて、かわいくてつい……あ、やば……」
小崎くんは、しまったという顔をして目をそらした。
「え?か、かわ……かわいい?」
「えっと…その………。」
「…………………」
「…………………」
小崎くん、真っ赤な顔してる…。
かわいいって……私のこと?
それって、どういう、意味……?
う~。
…なんか、はずかし………
二人とも真っ赤な顔でうつむいていると、小崎くんが急に話題を変えてきた。
「そうだ。プリント!持ってきてくれたんだよね?」
「あ、うん、そう!そうだった!えっと……はい、これ」
プリントを渡そうとした拍子に、手と手がコツンとあたった。
「ひゃぁ!」
びっくりして手からプリントがこぼれ落ちる。
う~~~意識しちゃってダメダメだぁ~。
私は急いでプリントを拾い集めると、机の上に置いた。
「ご、ごめんね!ここに置くね。じゃあ、お、お大事にねっ。」
「あ、水野さん………」
なにか声をかけられたけど聞こえないふりで、そのまま早足で階段を降り、挨拶を言って小崎くんの家を出た。
玄関のドアを閉めたところでちょっと落ち着いて深呼吸を繰り返す。
すーはー。 すーはー。
さっきからずっと、心臓がドキドキいってうるさい。
顔も……熱い。
ふと見上げると、半分だけカーテンの閉まった部屋の窓から小崎くんがこっちを見ていて目が合った。
「水野さん!今日…ありがとう。」
彼は窓から身を乗り出すようにしてやさしい顔で言った。
「……うん。」
私はこくりとうなずいて小さく笑い返す。
「また、明日ね」
手を振って別れた。
小崎くんの家が見えなくなったところで、さっきの出来事を思い出してみた。
さっきの、なんだったんだろう?
聞き間違いじゃあないよね?
小崎くんが、私を……?いや、まさか。
私はその考えを笑って打ち消した。
そんなことを考えた自分が恥ずかしくなる。
でも、男の子から『かわいい』なんて言われたのは初めて。
私は赤い顔を隠すように、うつむいてゆっくり歩きながら家に帰った。
小崎くん……




