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コン コン
「水野ですけど・・・」
あれ…返事がない。
もう一度、今度はもう少し強くたたいてみる。
コン コン!
「水野ですけど……!!」
………やっぱり返事がない。
仕方なくドアをそーっとあけて中に入る。
部屋の中はしーんとしていて明るかった。
夕方の強い光を遮るために、紺色のカーテンが半分だけひかれていて、窓から差し込む光が、部屋を温めていた。
正面の壁には、漫画や雑誌が棚いっぱいにおさめられていて、仮面なんとかの人形が机の上できちんとポーズをとってならんでいる。
男の子の部屋ってもっと汚いと思ってたけど、きれいにしてるなぁ。
右側のベッドには、仰向けでぐっすりと気持ちよさそうに眠る小崎くんがいた。
クラスメートの寝顔なんて、そうそうじっくり見ることなんてない。
なんだか…かわいい寝顔。
なんとなく興味で一歩二歩と近づいたら床がぎしっと鳴った。
その音に小崎くんが目を覚ます。
でも、まだ完全に覚醒してはいないのか、ぼーっと私の顔を見ている。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「うわぁ!!!」
「きゃぁ!!!」
「え?え?なんでここに水野さんがいるの?」
キョロキョロと、あたりを確認しながら小崎くんが聞いてくる。
私はさっきの声にびっくりして、一瞬、頭が真っ白になってしまった。
「あれ?わたし、何しにきてるんだっけ……あ、そうだ!先生からプリントを渡すように頼まれて…あと、昨日のお礼を言いたくて…それで、小崎くんに風邪うつしちゃったかもって思って、それで……」
う~。
言ってて自分でも意味がわかんない。
それでも、私のつたない説明で小崎くんはわかってくれたらしい。
彼は少し微笑んで言った。
「ああ。そっか。ありがとう。別に、水野さんの風邪がうつったんじゃないし…。えっと…、知恵熱っていうか…え~っと……」
「???」
「いや、いい。気にしないで」
小崎くんは、下を向いて小さい声でそう言った。
なんだかよくわからないけど、風邪をうつしちゃったわけじゃないみたい。
ちょっとほっ。




